殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、魔王と共謀する件 7

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 やれやれ。
 なぜ、護衛を最低限しかつけずにしかも遠回りに魔都の中を見せたのに何も気づいて貰えていないとは。
 困ったものだ。
 魔王は嘆息する。
 あのスィールズの妻だというから期待していたのに。
 やはり、十代前半。
 見えるものには限りがあるのか‥‥‥

「なあ、宰相殿。
 そなたは見ていたはずだ。
 それほどの察しの良さがあるならな。
 なぜ、主に教えなかった?
 この魔都の仕組み、行き交う人々は普通に生活をしていたはずだ。
 神殿すらも見えるように案内させたというのに‥‥‥」

 こんな、己の力を解放するような無茶をさせる臣下がどこにいるか。
 魔王はグランに少しばかり苛立ちを感じているようだった。
 グランは知れたこと、と反論する。

「主が気づくべきことを臣下が気づいた所で、何が変わりましょう、魔王様。
 いまつい先ほどの、敵ではない。
 そのお言葉があるまで、誰もが魔族は世界の敵だ。
 そういう認識を捨てれずにいたのです。
 そちらこそ、我が亡き主の骸を使っての遊び。
 少々、余興が過ぎるのではありませんか?」

 余興?
 え‥‥‥?
 あのスィールズ様は生きているのではないの?
 ねえ、グラン。
 その言葉は本当なの――?
 ハーミアは真実がわからず、さらに感情の荒波の中で揉まれていく。
 怒りも悲しみも何もかもが、彼女の夫への愛を試していた。
 そして、その一言に怒りを示したのは――魔王本人だった。

「余興、とな?
 そのようなことの為に、あれほどの魔力を常時消費する再生漕など用意すると思っているのか!?
 あの再生に必要な力はすべて、我の命から――」

 ここまで言わされて、魔王は、はっと気づいた。
 グランがニヤリと、これまで劣勢だった自らが攻勢に立った時のような笑みを浮かべたことに。

「まったく‥‥‥なんたる臣下だ。
 主を出汁にして、その上、我の怒りまで利用するとは‥‥‥とんでもない男だな、そなた。
 どうだ、主を変える気はないか?」

「いえいえ、魔王様。
 少なくとも、我が主。
 辺境国国王ハーミア様はわたくしの数百倍は智謀に長けた方。
 全ては、我等の策略通り‥‥‥そう言わせて頂きたいですな」

 ふん、小賢しいやつだ。
 あくまで自分の主を上に立てようとする。
 良い家臣だ。
 我が魔族にはどれほどのものがいるものか。
 魔王の思うのは、シェイブが最初に立ち上がったことだ。
 あの、兄や姉たちに対して取るに足らない魔力しか持たない末子が、最初だとは‥‥‥
 魔族の未来は暗いかもしれん。
 あの夫婦が、良き指導者になってくれるまで――

「我の寿命は続くのかのう‥‥‥」

 誰にも聞こえないように、魔王は胸中でそっと悲し気に呟いた。
 もうあまり時間がない。
 この息子たちに後を任せるのが良いのか、エミスティアを呼び覚まし跡を継がせるのがいいのか。
 何より、数百年。
 会えなかった娘の顔を、その笑顔やあの可愛らしい記憶が――
 魔王には何よりも大事だった。

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