殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、大公閣下と共謀する件 5

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「御主人様はまだ気づいてはいないのだろうな。
 先々代様と魔王陛下の間で上手く踊らされているとは‥‥‥なあ?」

 グランの問いかけにレベッカは多分ね、と相槌をうつ。
 それ以上に、あなたも相当の策士と言うか‥‥‥とぼやいていた。

「自分の主を駒にする宰相もひどいもんだわ、ねえ、グラン?
 今回は上手くハーミアが騙されてくれたけど。
 どこかでしくじれば、どうするつもりだったの?」

「どこかで?
 その時は、死ねばいいではないか。
 そのつもりで行ったのだろう、魔都まで」

 結婚式を挙げる前に、ついてきたのはそういう理由じゃないのか?
 グランは未来の妻に問いかける。
 レベッカは呆れた人、と将来の不安を感じる始末だ。

「まあ、それでも先々代様は大層、お怒りだったわね。
 竜族には八種族、それぞれに長老がいて八竜会議で竜王が決まるのよ。
 数世紀前にアールディア様が竜王様に成られてからは放任していたようだけど。
 そろそろ、我慢の限界だったんじゃない?」

 いまの長老のうち、先々代様を含む数匹は竜神様の以前の系統だし――
 そう続く言葉にグランは首をかしげる。

「なあ、良く分からないのだが。
 竜神様は、神ではないのか?
 それ以前の系統とはどういう意味だ?」

 グランは困惑して未来の妻に問いかけた。
 レベッカはそんな事も知らないの?
 仕方のない人ね、そんな顔をして竜族の系譜を語り出した。

「うーん、そうねえ?
 神様よ?
 天界におられるわ。
 でも、降臨されたのは数百年前。
 降臨というよりは、消滅していたのが復活されたというべきかな?
 だから、現竜王様と先々代様たちの千年以上生きている竜はそこで別れるの。
 竜と、古竜にね。
 まあ、古竜の方々も嫌気がさしてきたんじゃない?
 竜神様にべったりの竜王様と、妻を取り戻したい竜神様のわがままに」

「妻を取り戻すとは言うが、大地母神様は天界にいるだろう?」

 あなた本当に理解していないのね。
 レベッカは呆れたように言う。

「魔神様が蓋になってあの鉱山にいるのよ?
 大地母神様の肉体だって、この地上にある可能性、考えないの?」

「つまり、それがあるのが――」

 そう、レベッカはうなづいた。

「あの帝都の城の最奥にある、大地母神の神殿の真下。
 そこにあるはずなのよ。
 魔王様の娘様と同じようにクリスタルに肉体を封じられた、大地母神様がね」

 帝国最大の秘密。
 そして、人類国家群の盟主たる帝国がなぜその地位にいれるのか‥‥‥

「その封印の恩恵を与えられたのか、それとも、奪ったのか。
 それによって、帝国の未来は大きく変わるだろうな――」

 知られざる過去を知るのは、魔王や古竜、そして神々のみ。
 人類は世界の敵か、それとも――
 グランは人間として、悩まし気に頭を振った。
 できるなら、与えられた方だと信じたかったからだ。
 彼は同じ同族として、過去にあったかもしれない、人間の狂気を信じたくはなかった。

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