殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、大公閣下と共謀する件 6

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「ねえ、グラン。
 そう考えても始まらないわよ。
 そろそろ、先々代様がハーミアたちを捉えて転送に相次ぐ転送で南極の大地に呼び寄せているはず。
 目を回してなきゃいいんだけどね。
 わたしたちは行きましょ?
 どうせ、城に戻っても意味がないわよ。
 もう、裏切り者だもの」

 まあ、それはそうなんだがー‥‥‥。
 グランは御者に魔都へと戻れ、そう呼びかける。
 
「なあ、レベッカ。
 御主人様も胎内にもたれていた、あれな。
 あれを仕込んだのは‥‥‥スィールズ様なのは間違いないのか?」

 信じたくないことを口にするようで、はばかれてしまう。
 自分が仕えた主がその妻に兵器を仕込むなど‥‥‥

「そうだと理解していたから、ハーミアはあの時、魔王様の前で力を解放したんじゃない。
 夫もろとも、家臣すら巻き込んで竜族と人類の為になろうなんて、馬鹿な考えで‥‥‥」

 あの一撃でもし、夫が。
 スィールズが目覚めていれば、ハーミアの胎内の爆弾を起爆させていたかもしれない。
 もしくは、彼は妻を人質代わりに――魔王を殺そうとするだろう。
 竜王の腹心の部下。
 ハーミア自身は夫を愛してはいるようだが、夫からすればそれはどうなのか。
 グランとレベッカを含むサーラ以外の侍女たちは――
 先々代からハーミアの胎内にある爆弾とそれを仕込んだのが誰か。
 それを聞いた時に、密やかに涙したものだ。
 スィールズはハーミアを愛してはいただろうが、あくまでものとして。
 人間の貴族社会でも当たり前のように、道具としてしか見ていなかったのだから。

「まあ、あいにくと、スィールズ様に届く前に魔王様が消し飛ばしてくれたから――」

「そうだな、レベッカ。
 わたしとお前はこうして、生きてるわけだが‥‥‥。
 人類の為、なんかではないような気がするがな?
 自分だけかと思いきや、サーラの胎内にまであると気づいたのはさすが、御主人様だが」

「さすがってねえ、あなた。
 それを隠してたの、グランじゃないの。
 教えても良かったんじゃない?」

「御主人様にか?
 そんなことを教えた時点で、竜王様の城に乗り込んでいくのは目に見えていただろう?
 しかし‥‥‥竜王様もむごい真似をなさる。
 それは、スィールズ様も同様か‥‥‥」

「それでも、サーラに竜王様からの命令が届かないように遮蔽していたのはハーミアだからね。
 魔王陛下もあの二つが同時に爆発すれば、無事ではなかったはずよ?
 どうやって恩返ししたものかなー、ハーミアに。
 この顔の傷跡はきちんとお返しするけど‥‥‥」

 鏡を見ながらぶっそうなことを言うレベッカをなだめ、グランは侍女たちと共に魔都へと向かう。
 この救いようのない巨大過ぎる力に対抗できる数少ない存在。
 魔王に助力を求めに――


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