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秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 1
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さて、これでどうにか半々か。
そう呟いたのは誰でもない、魔都グレインスケーフに座する魔王フェイブスタークその人だった。
その眼前には、同じく魔王に名を列するエリスが一人、例のザイール大公から仕入れた魔導兵器を披露していた。
「雷帝の園と紅蓮の王。対竜族への人類の決戦兵器‥‥‥か。
すでに製法すら失われたと思っておったがの?」
「あのねえ、フェイブスターク。
まあ、様をつけるべきなんだろうけど。
地下世界じゃあ、あのフェイブスタークが新たに戦を始めるらしいぞ。
なんてもっぱらの噂なんですけど?
うちはあの蓋の真下にあるから協力するけど。
アリス・ターナーの最果ての地を守る青の魔人様はあまりいい顔をしてなかったわよ?」
こんな物騒なもの、地上から投げ込まれた日には、うちの国は壊滅してしまうわよ、まったく。
エリスはそうぼやいていた。
「で、こんなものどうする気なの?
まさかあの帝都と竜王の城に転送するとか考えてないわよねえ?
海底のリアルエルム様も、あの邪神を抑えるのに精一杯だって話だし。
暗黒神ゲフェトは大陸の移動を止めるためにはるかな地下から上がることはできず。
もう、誰もいないじゃない‥‥‥あんな、強大な力を振るう神を止めれる存在なんて、ね?」
「おいおい、そんなことをすれば世界の魔族が一瞬にして、竜と人、その他の種族から狙われるではないか?
いまだに帝国は人類世界の盟主。
そして、反乱分子とはいえ竜王はまだその地位に健在とある。
まあ、母上と父上は争いを望んではおらんようだがな‥‥‥」
母上と父上、ねえ?
そんな存在、あなたにとってははるかな年下の存在じゃない。
エリスは呆れてしまった。
「氷の女王と魔神を父母と慕うのはいいけど。
なら、なぜその名前を名乗っているの、フェイブスターク様?
その名は、数万年まえに異界より来た三人の魔族。
ルシールにエミュネスタ、その父親たる神でもある魔族の王の‥‥‥名前じゃない」
「ほう?
知っておるのか?」
「知っているも何も‥‥‥あなたの娘が。
ルシールは千年前にはるかな過去から転生し、愛した男と共に死んでいったわよ。
大事な仲間を巻き添えにしてね‥‥‥。
あの二人がまだ生きていれば、いまの竜神だって倒せたのに。
あなたは何をしていたのよ?」
「そうか、ルシールがの‥‥‥。
あれもここに戻っていたか。
我も同じよ。
目覚めるまでに時間がな。
あの『万騎の王』の。最高神の結界のおかげで目覚めるのに時間がかかったわ」
あなたも転生組なんだ‥‥‥?
エリスはまた知らなくてもいい事実に触れてしまった。
そんな顔になる。
「で、これだけど?
信管が抜かれているというか、中にないわよ?
多分、あの二人。
ハーミアと侍女の胎内にあったものも、起爆命令を発したところで爆発しなかったんじゃない?
そこで意識だけはまともに起きている、間抜けな竜族がどうがんばってもね?」
エリスはスィールズを見て愚かねこの男は、そう嘲笑する。
己の妻ですら兵器にするなんて。
「生かしている理由がわからないわよ、フェイブスターク?
まさか、竜族の勇者なんて理由で再生させてるんじゃないわよね?」
まさか?
魔王フェイブスタークは居並ぶ家臣や我が子らの前で不敵に微笑んだ。
「これは見せしめ、よ。
魔王エリス殿。
スィールズにルゲル。
あの場での死闘に見せかけた愚かな戦いなどなんと見苦しかったことか。
再生した後は、魔界にでも送るとしよう。
そなたの下ででも、教育してもらうかの‥‥‥」
あなた、そこまで命持つの、フェイブ?
これが最後の挨拶になるかもしれないわね。
エリスはなんとなく、そう予感していた。
そして、彼の氏族、血族にはまだ王にふさわしい存在が誕生していないことも‥‥‥エリスは気付いていた。
そう呟いたのは誰でもない、魔都グレインスケーフに座する魔王フェイブスタークその人だった。
その眼前には、同じく魔王に名を列するエリスが一人、例のザイール大公から仕入れた魔導兵器を披露していた。
「雷帝の園と紅蓮の王。対竜族への人類の決戦兵器‥‥‥か。
すでに製法すら失われたと思っておったがの?」
「あのねえ、フェイブスターク。
まあ、様をつけるべきなんだろうけど。
地下世界じゃあ、あのフェイブスタークが新たに戦を始めるらしいぞ。
なんてもっぱらの噂なんですけど?
うちはあの蓋の真下にあるから協力するけど。
アリス・ターナーの最果ての地を守る青の魔人様はあまりいい顔をしてなかったわよ?」
こんな物騒なもの、地上から投げ込まれた日には、うちの国は壊滅してしまうわよ、まったく。
エリスはそうぼやいていた。
「で、こんなものどうする気なの?
まさかあの帝都と竜王の城に転送するとか考えてないわよねえ?
海底のリアルエルム様も、あの邪神を抑えるのに精一杯だって話だし。
暗黒神ゲフェトは大陸の移動を止めるためにはるかな地下から上がることはできず。
もう、誰もいないじゃない‥‥‥あんな、強大な力を振るう神を止めれる存在なんて、ね?」
「おいおい、そんなことをすれば世界の魔族が一瞬にして、竜と人、その他の種族から狙われるではないか?
いまだに帝国は人類世界の盟主。
そして、反乱分子とはいえ竜王はまだその地位に健在とある。
まあ、母上と父上は争いを望んではおらんようだがな‥‥‥」
母上と父上、ねえ?
そんな存在、あなたにとってははるかな年下の存在じゃない。
エリスは呆れてしまった。
「氷の女王と魔神を父母と慕うのはいいけど。
なら、なぜその名前を名乗っているの、フェイブスターク様?
その名は、数万年まえに異界より来た三人の魔族。
ルシールにエミュネスタ、その父親たる神でもある魔族の王の‥‥‥名前じゃない」
「ほう?
知っておるのか?」
「知っているも何も‥‥‥あなたの娘が。
ルシールは千年前にはるかな過去から転生し、愛した男と共に死んでいったわよ。
大事な仲間を巻き添えにしてね‥‥‥。
あの二人がまだ生きていれば、いまの竜神だって倒せたのに。
あなたは何をしていたのよ?」
「そうか、ルシールがの‥‥‥。
あれもここに戻っていたか。
我も同じよ。
目覚めるまでに時間がな。
あの『万騎の王』の。最高神の結界のおかげで目覚めるのに時間がかかったわ」
あなたも転生組なんだ‥‥‥?
エリスはまた知らなくてもいい事実に触れてしまった。
そんな顔になる。
「で、これだけど?
信管が抜かれているというか、中にないわよ?
多分、あの二人。
ハーミアと侍女の胎内にあったものも、起爆命令を発したところで爆発しなかったんじゃない?
そこで意識だけはまともに起きている、間抜けな竜族がどうがんばってもね?」
エリスはスィールズを見て愚かねこの男は、そう嘲笑する。
己の妻ですら兵器にするなんて。
「生かしている理由がわからないわよ、フェイブスターク?
まさか、竜族の勇者なんて理由で再生させてるんじゃないわよね?」
まさか?
魔王フェイブスタークは居並ぶ家臣や我が子らの前で不敵に微笑んだ。
「これは見せしめ、よ。
魔王エリス殿。
スィールズにルゲル。
あの場での死闘に見せかけた愚かな戦いなどなんと見苦しかったことか。
再生した後は、魔界にでも送るとしよう。
そなたの下ででも、教育してもらうかの‥‥‥」
あなた、そこまで命持つの、フェイブ?
これが最後の挨拶になるかもしれないわね。
エリスはなんとなく、そう予感していた。
そして、彼の氏族、血族にはまだ王にふさわしい存在が誕生していないことも‥‥‥エリスは気付いていた。
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