殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

文字の大きさ
53 / 79

秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 3

しおりを挟む
「ただあれなのよねえ‥‥‥」

 なんとなく心に引っ掛かるものをエリスは感じていた。
 息子のルゲル大将軍とスィールズ前クルード公爵が復活すれば、いまのフェブスタークはかなうだろうか?
 それが出来ないときの用心にあの、大量の紅蓮の王を欲しがった?
 何かが違う気がする。

「あの魔王、何か隠してるな。
 虚竜のじいさんも含めて、だ。
 だいたい、おかしくないか?
 海底深くへ沈んだ天空大陸を浮かべるための基礎が、なんであんな場所にあるんだ?
 地上のさ」

「画策したんでしょうよ、魔王まで転生組なんて。
 あの火山の噴火までは読めなかったみたいだけど‥‥‥」

 ああ、娘がいると言っていたな。
 あっちはあいつらに任せているけど。
 果たして大丈夫なのか?
 アシュリーはそちらに一抹の不安を抱えていた。
 あの仲間たちはいかんせん強すぎて何もかもが規格外で。
 やり過ぎるからだ‥‥‥


 この会話の数日後だ。
 帝国の主たる皇帝に、せっかく占拠したクルード公爵領内にあるロッセル鉱山が――
 不意の敵により再度、取り戻された。
 その報が伝えられたのは。
 何より一大事なのは‥‥‥

「あの女すら奪われたと!?
 一体、誰が――あの地には竜族の精鋭すらいたと言うのに!!」

 驚くのも無理はない。
 帝国の精鋭部隊たる近衛騎士に、魔導騎士団。
 そして、竜族の竜王の配下さえもそこにいたというのに‥‥‥

「はっ、大変申し訳ございません、陛下‥‥‥。
 あの場に現れたのはたった二名。
 しかも、年若い魔女と‥‥‥金髪の剣士だけでございました」

「たった二名とな!?
 魔女とはなぜわかる!!??」

「あれは、あの技は‥‥‥はるかな太古に失われた重力を操る魔族の力。
 バゼスの魔族に相違ございません‥‥‥最後のバゼスの魔女はたった一人。
 あの伝説の、竜神様や魔神様、そして大地母神様のお子様だった三神を滅ぼしたーあの十二英雄。
 そのお一人かと‥‥‥」

 帝都に逃げ帰ってしまった魔導騎士団の長はそう報告する。
 彼はさすがに、その道に歴史に詳しかった。

「ならば、金髪の男とは‥‥‥勇者オーウェンか。
 先程の帝都におる我が弟に仕向けた者たちも討たれたと聞く。
 赤毛の男と紫の髪をした女に、な‥‥‥」

「陛下‥‥‥これは由々しき事態。
 十二英雄はそのあと、長であったラードリーの異世界への帰参により解散したと聞きますが。
 その友であった六影の王も‥‥‥その生き残りが」

「加担している、そういうことか。
 魔族と竜族、そして人間の問題に。
 過去の亡霊どもがー!!!」

 皇帝は忌々しいとその手にした杖で床を打ち付けた。
 その隣に同席していた、人の形を取る竜王もまた怒りを隠し切れないでいた。

「はるかな太古の神々の御希望を、たかだか千年、二千年の力ある者どもが邪魔をするとは‥‥‥!!
 無能のスィールズは二年前に姿を消すわまったく。
 我らは部下に恵まれておらんようですな、皇帝陛下?」

 その問いに皇帝はニヤリといやらし気な笑みを浮かべた。

「良く言われますな、竜王殿。
 あの場に、紅蓮の王を放てとこの帝国に命じたのはあなた様ではありませんか」

「さて、どうだったかな?
 忠実に見せかけて、謀反を企む輩など‥‥‥我が配下には必要ないでな、皇帝殿」

 不敵に微笑む二人の王。
 その様を見て、何よりも不安と焦燥に駆られているのは誰でもない。
 ザイール大公に賭けのカタに全てを譲り渡し、今回の揉め事を表面化させた張本人。
 エミリオ皇太子殿下だった。

しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...