殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 7

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 フェイブスタークと魔女の会話はその場にいた全員に伝わっていた。
 誰もがそのようなことよりも、次代の魔王は誰なのか。
 その点に関心を示していた。
 目の前にはクリスタルに封じられた魔王の長女エミスティアと、再生の終了を間近に控えたルゲルがいる。
 魔女はエミスティアの結界と解けるといい、その力をもってるすればルゲルの再生も加速できるかもしれない。
 そんな、期待感をその場にいる臣下や魔王の親族に与えていたからだ。
 何よりも、千年も昔に活躍した十二英雄だの、影の六王だの‥‥‥。
 そんな伝説の存在が目の前にいることに、彼等は興奮を覚えていた。
 
「陛下、それでは国外。
 他の大陸にある属領に関しましてはどのように?」

 皮肉にも、その場にいる一同のなかで情勢を見極め、静かに判断をできているのは魔王の親族ではない。
 右大臣・左大臣だったことに、魔王は諦めに似た焦燥感を覚えていた。
 自分のかつての能力。
 この世界、エル・オルビスにいる誰よりも偉大だった神の力を受け継ぐ者は出てこず彼という柱を失えば地上の魔族の団結は瓦解するだろう。

「さて、あの子がどこまで成長するかだが‥‥‥」

「は?
 あの子?
 エミスティアの結界の件でございますか?」

 右大臣が不思議な顔をする。
 ああ、いやなんでもない。
 地下へと逃がしたシェイブ夫妻。
 彼等にだけ次期魔王と伝え、エリスの元へと逃がしたが果たして相応しい能力。
 もしくは才覚を発揮するかは謎だった。

「最果ての地を過ぎ、母上の元へ。
 さらに最奥の暗黒神ゲフェトの元へ行けば‥‥‥地上の力からの解放はされるはず。
 あのハーミア殿の暴威、そしてそれを打ち消した我が一撃から――」

 最初に立ったのはあの子だけではなかった‥‥‥?
 ふと、魔王の視線は居並ぶ臣下の列の一番後ろ。
 そこに立つ、ハーミアの部下たちに行く。その中にいるあの宰相、グランと言ったか。
 あれもまた、シェイブと変わらないタイミングで立ち上がったはず。
 あの時は芯の強い者だという印象だったが、いまとなっては何か引っかかる。
 二年前の侵攻の時もそうだ。
 ルゲルとスィールズは前より通じ合っていた。
 竜王の腹心の部下を演じながら、スィールズは虚竜レグルスとの連絡役として魔族・竜族双方の二重スパイを演じていたのだ。
 それが、あの紅蓮の王により焼かれ、いまここにいる。
 本当に敵はー‥‥‥誰だ?

「右大臣、国外。
 特に海外に関しては同盟国と共に歩むように。
 この魔都はこの大陸の竜族との決戦の地になるかもしれん。
 だが、その余波を及ぼすわけにはいかん。
 魔都の住人たちも随時、転移魔法・転送魔法により脱出を急がせよ。
 お前たちもな‥‥‥」

「陛下!?
 それではまるで陛下、御自身だけが残られる。
 そのように――」

「そのようにではなく、そうする。
 ルゲルもスィールズも、そこにいるバジェスの姫と――」

 魔王は目立たないように魔女の後ろに佇む、金髪の若い人間の男性を見た。

「勇者オーウェン殿に頼み、地下の魔王エリスの国にて保護してもらう。
 移動できない者、我が親族は地下へと移動するがいい。
 魔神殿の結界がある限り、安全に過ごせるだろう」

「陛下、彼等の助勢はもう頼めないと、そう仰せですか?
 十二英雄に、影の六王。
 それだけの加勢があれば竜族との決戦とて‥‥‥」

 左大臣は負けることなく戦えるはずだ。
 軍務をつかさどる彼の見解はある意味正しかった。
 ただ――

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