殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 8

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「八竜の古竜を相手に回すつもりか?
 それこそ、世界を二分する戦いになるわ。
 そんな時に、あのいつか帰還すると言われている(神殺しカイネ神)でも戻ってみろ。
 あの神は地下の魔族には寛容かもしれんが、地上の魔族についてはどうだろうな?
 おまけにかつて、己が消滅させた魔神に竜神までもが復活している。
 喜んでその二神を滅ぼしにかかるだろうよ‥‥‥」

「恐ろしいことですな。
 確かに伝承によれば、単なる人間の聖女だったカイネが、神格を得て最高神たちの助力・更には‥‥‥。
 地球?
 で、ございましたか?
 あの異世界の刺客と共謀し、魔神・竜神を討伐したとか」

「少しだけ違うがな。
 竜神は地球から逃亡した犯罪者。
 魔神はその竜神と祖先を同じくする存在。
 二つの神が協力して破滅をこの世界に引き寄せようとしたのを、カイネ神が止めた。
 それだけのことよ。
 この魔都の地下に、その入り口に当たるものがある」

 まあ、もっとも‥‥‥その入り口が開くことがないように様々な世界の最高神が封印をかけている。
 それを解ける者はいないだろう。
 それが、魔王フェイブスタークの見解だった。
 いま問題なのは、そんな入り口云々ではない。
 かつての旧友、竜王の暴走を止め、帝国と和解し、竜神を安寧の眠りにつかせること。
 それだけだ。
 そして、

「どこまでのご協力を頂けるのかな?
 十二英雄の方々には?」

 その言葉に先にいるのは魔女シェナと勇者オーウェン。
 彼等はやれやれといった顔をしていた。

「歴史から姿を消してのんびりと暮らしていたら、かつての仲間の問題だというから出てきただけなんだよ。
 それに十二英雄なんてもういないんだよ。
 いるのは、わたしとオーウェンだけ。
 他の仲間は過去に戻りいまは死んだ者、妖精界で王となり動けない者。
 影の六王もそうなんだよ。
 エリスとアシュリーは夫婦で、あの蓋の地下に国があるから助けに来ているだけ。
 ルシールは滅び、エレノアは死を選び、紋章眼の賢者は青い月に昇って神となり。
 誰も他にはいないんだよ。
 過去の遺物は現代に出てくるべきではないんだよ、フェイブスターク」

 オーウェンは寡黙だ。
 シェナがそのほとんどを代弁している。
 そして魔王は一つの疑問を持つ。

「影の六王と言うが、あとの一人はどこの誰なのだ、バジェスの姫?」

「それは、言えないな。
 魔王殿。
 あれはいていないもの、どの世界、どの時間にも存在するもの。
 形を持たないもの。
 言い表しようがないんだ」

「つまり、時間の風を操る一族か‥‥‥。
 時間と空間を自在に操る、まさしく万能の存在。
 あれらの気まぐれには困ったものだ。
 まあよい。
 お前たち、全員下がるがいい。
 ハーミア殿の宰相殿。
 残って頂けるかな?」

 え?
 レベッカやその周囲にいた、侍女たちがグランを見た。
 名指しで残れとはなにを意味するのか。
 思わず、この魔都で挙式を挙げたばかりの新妻が、彼の腕を引く。
 だが、グランは問題ない。
 そう言ってその場に残った。

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