殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?

星ふくろう

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秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 9

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「魔王陛下、この身は亡命した身にて大した何かを持ちません。 
 すでにクルード辺境国は帝国と竜族により没し、その国は失われました。
 今更、何を御望みで?」

 壇上に魔王、自分のすぐ隣には魔女と金髪の勇者。
 その後ろにはかつての主と、魔王の息子。
 そして、クリスタルに閉じ込められた魔王の姫が一人。
 人間一人が存在するには、あまりにも不似合いな光景だった。

「クルード辺境国はまた戻るぞ、宰相殿。
 そこなる十二英雄のうちの二名が、帝国兵・竜族ともに駆逐してくれたからな。
 ハーミア殿を呼び寄せるがいい。
 いや、聞きたいのはそこではない。
 いつから、その身に宿っているのだ?
 のう、前クルード公爵スィールズ殿?」

 部下の人間の脳ならば、乗っ取るのは竜族にならば容易いこと。
 いまの今まで、騙されていたわ。
 そう、フェイブスタークはニヤリと意地悪く微笑んでみせた。

「いつから‥‥‥?」

 グランはあまり面白くはないのですがね。
 そう言い、魔王を見上げた。

「そうさな、あの時。
 ハーミア殿が渾身の一撃を放った時‥‥‥不用意に立ち上がるべきではなかったな?
 それほどに嫁が大事か、スィールズ?
 あのようなものを仕込んでおきながらな‥‥‥。
 侍女の起爆装置を人知れず、抜いていたのも――お主の仕業であろう?」

「さすがは陛下‥‥‥。
 いつからと言われれば、もうかれこれあの時からですな。
 我が悪友、ルゲルと演じていたあの時。
 しばし、目測を見誤っておりました。
 まさか、竜王陛下にまで、我らが目論見が露見していたとは‥‥‥」

 二年も前からか。
 用意周到なものよ、嫁可愛さか、それとも。
 魔王は考えを巡らせる。
 ハーミアが全体の鍵ではない。
 可能性はあれだ。

「なあ、スィールズ殿。
 なぜ、帝国皇帝の弟を、あの大公を守らねばならん?
 債権云々で、わざわざ対竜族用の雷帝の園まで起動して彼は我が身を守っている。
 魔王エリスとアシュリー殿も護衛に回るほどだ。
 あの大公殿、何を握っているのだ?」

 グラン、もとい、彼の精神の一部に共生しているスィールズは戸惑い、悩み。
 そして、ある事を打ち明けた。

「魔王陛下。
 二年前に我らが演技たる戦いに紅蓮の王を投じたのは竜王陛下の命令かと。
 それに伴い、帝国側が魔導騎士団にでも転移魔法で投じたのでしょう。
 ただ、その製法・その他の詳細資料は帝国の図書館のはるか地下に禁書として眠っていた。
 ザイール大公殿はそのすべてを、帝国側が差し押さえるまえに奪取されたのですよ。
 その為の‥‥‥」

「暗殺者の大量投入、ひいては竜族の精鋭までもがそれを奪い返さんとしている。
 そういうことか‥‥‥。
 ところで、我が娘、エミスティアの結界については何か知っているのかな?
 己の愛妻にあのようなものを仕込む卑怯者を、我は引き裂きいてやりたくて仕方がないのだがな?
 この夫の仮面をかぶった外道めが‥‥‥」

 魔王は静かに静かに。
 虚竜レグルス以上の怒りをその心内に秘めて、そうグランもといスィールズに吐き捨てるように言った。
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