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秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 14
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地中をムカデが這い、その上に乗るハーミアは悲鳴をあげそうになりながらしがみついていた。
地中?
いやいや、そんな可愛い表現は似つかわしくない。
そこはマグマの中だ。
神の獣のこの黄金のムカデ。
こいつの周囲を覆う透明な膜のおかげで、ハーミアは灼熱地獄に焼かれることも無く無事だった。
しかし、少しでも手を伸ばし、頭を上げればそこは膜の境界線。
「最悪よ!!!???
なによ、この赤のはー‥‥‥まるであの世に行ったみたい?
違うわ‥‥‥、あの時と同じ。
サーラに叩きつけて小山を爆散させた時の岩が溶けたのと同じ‥‥‥」
後ろか前に誰かがいたら、なんてひどい扱いを侍女にするのだろう。
そう、悲しそうに言ったものだろう。
しかし、ハーミアにはそんな気はなく、サーラ程度、少々、魔法をぶつけたところでどうせあのウロコが痛む程度。あんな極楽とんぼ、たまには痛い目にあえばいいのよ。
なんて、とんでもないことを考える始末。
そしてムカデは、音よりも早く地中を移動していく。
まるで、マグマの中を這うジェットコースターだ。
ハーミアは悲鳴を上げながら、その終着点まで生きた心地がしなかった。
「おー来た来た。
なんだあ?
へばってないか、彼女‥‥‥」
エリスの城の地下。
帝都の地下のそのまた地下。
そこには、大きな地下水脈の川がある。
マグマの中を進んできた黄金のムカデは、その身を水で冷やしながら身振るいをしてハーミアを港のような波止場が設営されているそこに振り落としていた。
「あらら‥‥‥。
目を回してるわね、竜族のクセにだらしないの。
お前、御苦労だったわね。
もう戻っていいわよ」
アシュリーはやれやれ、大丈夫か?
そう言い、抱き上げたハーミアを見てエリスは嘆息する。
ムカデは、エリスに撫でられると嬉しそうに身震いをして地中深く、その身を沈めていった。
「どうするよ、エリス?
上の大公様、いま誰だっけ、見てるの?」
「いまはオーウェンでしょ?
あの人、やり過ぎるから困るのよねえ‥‥‥」
いや、それは俺たちも同じだって。
この時代の最強クラスは俺たちの力の足元にも及ばないのが多い。
やり過ぎになるのも仕方ないけどな‥‥‥
そうアシュリーは心で思い、ハーミアの寝姿にどこか見覚えがある気がしていた。
「レグルスのじいさんの血筋、か。
帝国の血も混じってるのかな?」
「なに?
どうかしたの?」
部下たちにハーミアを寝かせる部屋を用意するように申し付けて、エリスはその顔を覗き込んだ。
あれ?
どこかで見た顔‥‥‥
「まるであれね、レイに似ているわねー」
「お前もそう思うか?」
うん、思う。
そうエリスは言い、まさかね?
ハーミアの髪を一本抜いて魔王の名に相応しく、ある魔法を起動させた。
エリスは夢魔の系譜。
それははるかな過去にさかのぼれば、フェイブスタークの血脈であり、ハーミアの中に流れる血の系譜を覗き見ることもできる。
夢の世界は時間に縛られない世界。
過去も未来も‥‥‥少しばかりならば知ることができる。
「あらら。
面白い血筋ね、この子。
レグルスはきづいてるのかしら。
懐かしいわ‥‥‥帝国の始まりにも関係しているなんて、ね」
これはあれよ、と。
エリスは夫であるアシュリーだけにそっと秘密を伝えた。
懐かしい、かつての仲間。
影の六王の‥‥‥と。
「で、どうする?
このまま地下にいるにも時間がなあ。
このまま行ってしまうか?」
アシュリーが見る先には、エリスがさんざんこきつかってコボルトたちに昼夜を問わず、突貫工事で開けさせた通路があった。
その先にあるのは、帝都の皇城の最奥。
そして、その最下層にある、大地母神の神殿の――
「大公閣下も途中で落ち合うって言ってるし。
あの暗殺者たちは先に展開してるみたいよ?」
展開している?
一体どこに?
彼等は人間だぞ!?
皇城の中にはまだ、竜族だの帝国軍の精鋭が皇帝一家と竜王を守護しているはずだ。
並みの暗殺者集団では返り討ちにあうのは目に見えていた。
「いや、それは得策じゃないだろ?
むざむざ、殺しに行かすようなもんじゃないか‥‥‥」
「あら、そうでもないわよ?
神殿関係者なんて、守るわけないでしょ。
いま、狙われているのは皇帝とその家族と‥‥‥竜王なんだから。
その間を越えなきゃ、奥には入れないって思ってるわよ、連中」
「あーお前。
使い魔飛ばしていろいろ調べてたな!?」
「当たり前でしょ?
わざわざ竜王なんかとまともにやり合ったら、帝都なんて崩壊するわよ?
彼等には、さっさと誘拐してもらうのよ。
で、後は――」
あの大公閣下の出番。
このハーミアはどうするのかしらね?
出て来ても、出番ないようだけど。
エリスはそう思いながら、はるか地上の更に上に視線をやる。
見えないそこには――
「フェイブスタークも飛ぶころかしらね?
いかに元転生前は魔神だったからっていまはこの惑星の種族。
大丈夫かなあー‥‥‥」
さて、なあ?
アシュリーは、ハーミアを寝かすよりもこのまま行こうとエリスと共に穴へと足を踏み入れる。
重力を操る最後の魔族の生き残り。
ラードリーがもし、死んでいたらシェナもそろそろ、逝きたいだろうなあ。
あっちで会えたらいいんだが。
アシュリーはそう心で思い、あゆみを進めて行った。
地中?
いやいや、そんな可愛い表現は似つかわしくない。
そこはマグマの中だ。
神の獣のこの黄金のムカデ。
こいつの周囲を覆う透明な膜のおかげで、ハーミアは灼熱地獄に焼かれることも無く無事だった。
しかし、少しでも手を伸ばし、頭を上げればそこは膜の境界線。
「最悪よ!!!???
なによ、この赤のはー‥‥‥まるであの世に行ったみたい?
違うわ‥‥‥、あの時と同じ。
サーラに叩きつけて小山を爆散させた時の岩が溶けたのと同じ‥‥‥」
後ろか前に誰かがいたら、なんてひどい扱いを侍女にするのだろう。
そう、悲しそうに言ったものだろう。
しかし、ハーミアにはそんな気はなく、サーラ程度、少々、魔法をぶつけたところでどうせあのウロコが痛む程度。あんな極楽とんぼ、たまには痛い目にあえばいいのよ。
なんて、とんでもないことを考える始末。
そしてムカデは、音よりも早く地中を移動していく。
まるで、マグマの中を這うジェットコースターだ。
ハーミアは悲鳴を上げながら、その終着点まで生きた心地がしなかった。
「おー来た来た。
なんだあ?
へばってないか、彼女‥‥‥」
エリスの城の地下。
帝都の地下のそのまた地下。
そこには、大きな地下水脈の川がある。
マグマの中を進んできた黄金のムカデは、その身を水で冷やしながら身振るいをしてハーミアを港のような波止場が設営されているそこに振り落としていた。
「あらら‥‥‥。
目を回してるわね、竜族のクセにだらしないの。
お前、御苦労だったわね。
もう戻っていいわよ」
アシュリーはやれやれ、大丈夫か?
そう言い、抱き上げたハーミアを見てエリスは嘆息する。
ムカデは、エリスに撫でられると嬉しそうに身震いをして地中深く、その身を沈めていった。
「どうするよ、エリス?
上の大公様、いま誰だっけ、見てるの?」
「いまはオーウェンでしょ?
あの人、やり過ぎるから困るのよねえ‥‥‥」
いや、それは俺たちも同じだって。
この時代の最強クラスは俺たちの力の足元にも及ばないのが多い。
やり過ぎになるのも仕方ないけどな‥‥‥
そうアシュリーは心で思い、ハーミアの寝姿にどこか見覚えがある気がしていた。
「レグルスのじいさんの血筋、か。
帝国の血も混じってるのかな?」
「なに?
どうかしたの?」
部下たちにハーミアを寝かせる部屋を用意するように申し付けて、エリスはその顔を覗き込んだ。
あれ?
どこかで見た顔‥‥‥
「まるであれね、レイに似ているわねー」
「お前もそう思うか?」
うん、思う。
そうエリスは言い、まさかね?
ハーミアの髪を一本抜いて魔王の名に相応しく、ある魔法を起動させた。
エリスは夢魔の系譜。
それははるかな過去にさかのぼれば、フェイブスタークの血脈であり、ハーミアの中に流れる血の系譜を覗き見ることもできる。
夢の世界は時間に縛られない世界。
過去も未来も‥‥‥少しばかりならば知ることができる。
「あらら。
面白い血筋ね、この子。
レグルスはきづいてるのかしら。
懐かしいわ‥‥‥帝国の始まりにも関係しているなんて、ね」
これはあれよ、と。
エリスは夫であるアシュリーだけにそっと秘密を伝えた。
懐かしい、かつての仲間。
影の六王の‥‥‥と。
「で、どうする?
このまま地下にいるにも時間がなあ。
このまま行ってしまうか?」
アシュリーが見る先には、エリスがさんざんこきつかってコボルトたちに昼夜を問わず、突貫工事で開けさせた通路があった。
その先にあるのは、帝都の皇城の最奥。
そして、その最下層にある、大地母神の神殿の――
「大公閣下も途中で落ち合うって言ってるし。
あの暗殺者たちは先に展開してるみたいよ?」
展開している?
一体どこに?
彼等は人間だぞ!?
皇城の中にはまだ、竜族だの帝国軍の精鋭が皇帝一家と竜王を守護しているはずだ。
並みの暗殺者集団では返り討ちにあうのは目に見えていた。
「いや、それは得策じゃないだろ?
むざむざ、殺しに行かすようなもんじゃないか‥‥‥」
「あら、そうでもないわよ?
神殿関係者なんて、守るわけないでしょ。
いま、狙われているのは皇帝とその家族と‥‥‥竜王なんだから。
その間を越えなきゃ、奥には入れないって思ってるわよ、連中」
「あーお前。
使い魔飛ばしていろいろ調べてたな!?」
「当たり前でしょ?
わざわざ竜王なんかとまともにやり合ったら、帝都なんて崩壊するわよ?
彼等には、さっさと誘拐してもらうのよ。
で、後は――」
あの大公閣下の出番。
このハーミアはどうするのかしらね?
出て来ても、出番ないようだけど。
エリスはそう思いながら、はるか地上の更に上に視線をやる。
見えないそこには――
「フェイブスタークも飛ぶころかしらね?
いかに元転生前は魔神だったからっていまはこの惑星の種族。
大丈夫かなあー‥‥‥」
さて、なあ?
アシュリーは、ハーミアを寝かすよりもこのまま行こうとエリスと共に穴へと足を踏み入れる。
重力を操る最後の魔族の生き残り。
ラードリーがもし、死んでいたらシェナもそろそろ、逝きたいだろうなあ。
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