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秘密の聖女様、ブチ切れて皇太子殿下をぶん殴る件 15
しおりを挟む「‥‥‥あの、どなたでしょうか‥‥‥???」
ハーミアが第一声に発したのは、その言葉だった。
どこかで見かけた印象があるのだが、どうにも思い出せない。
ツルツルに反り上げた頭は彼によく似ているけど、その鍛え上げた肉体に溢れるほどの精気。
何より、その身にまとう魔導の薄い防御壁を操るそんな高等魔導士。
ハーミアの記憶にある誰にも該当しなかった。
「お久しぶりでございます、クルード女公爵様。
あの時は大変な失礼と、この身を救って頂き‥‥‥このザイール。
感謝に堪えません」
「はあ???
ザイール大公様‥‥‥????
あの、息子様にでも代替わりをなされた‥‥‥のでしょうか!?」
そう。
ハーミアの記憶にあるザイール大公はデップリと腹の出た座ればその上に顎が乗るようなデブ。
しかも、ブタ大公なんて呼ばれるような巨漢で、おまけにヤクザ大公なんて言われるくらい。
態度も悪ければ、おおよそ貴族らしからぬ行動と言動で有名だった。
一度きり。
あのエミリオ皇太子が婚約破棄を伝えた際に会った時も、ああこんな大公の側室なんて。
まっぴらごめんだわ、そう思った記憶しかない。
それが――
「は?
代替わりはしておりません。
あの日より、そう。
わしは生まれ変わるように、多くの家臣に恵まれ、また古代の魔導書を読み漁るにつれて足らぬ部分を補うことを覚え、こうして肉体を鍛え‥‥‥。
女公爵様の与えて下さいました御恩に報いるために。
こうして、日々、研鑽をつんでまいりました‥‥‥」
「研鑽!?
でも、あれからたった一月‥‥‥」
「はっ。
男子たるもの、一月もあれば心身、その根底から己を変えることなど。
その性根が座れば容易いもの。
おかげさまで、こうして、ご覧ください。
過去の魔導士がセンスがなかったというべきか。
個人の体格に合わせた、雷帝の園を移動できながらしかも、防御に、その上、攻撃にと。
そこいらの魔導騎士団はおろか‥‥‥。
これは試させて頂いたのですが、勇者オーウェン様」
ザイール大公が呼ぶと、地下通路に彼を護衛していた十二英雄の一人が大勢の家臣団。
いや、ザイール一家の中から歩み出てきた。
もはや、組や暗殺組織と言っても過言ではないその家臣団もまた。
移動用の雷帝の園をその身にまとっていた。
「実はオーウェン様の渾身の一撃ですら。
数度までは防げるのです。
これも、魔王エリス様があの鉱山から取り寄せて下さいましたブラウディア鉱石のお陰。
これで‥‥‥十二英雄の方々、影の六王の方々の手を煩わせることなく。
帝国は帝国内部の者だけでカタをつけることが可能となりました」
そう自慢げに話すザイール大公と、自信をもった彼の部下たち。
もしかして、わたしは要らないんじゃないかしら?
ハーミアはふと、そう思ってしまう。
しかし、その場には――
「そちらが十二英雄と影の六王の方々‥‥‥祖父の、レグルスの話では魔女様がおられると‥‥‥」
ハーミアは自分を運んでくれたアシュリーにエリス、そして、オーウェンを顧みる。
あと一人、魔女シェナがいるはずだが――
「ああ、シェナは魔王を打ち上げに行っているよ」
アシュリーが何気ない言葉で言い、打ち上げ?
パーティーか何かをいましているの?
そう、ハーミアは誤解してしまう。
「打ち上げっていうのはね、目を回していたお嬢さん。
レグルスは本当に、何も話してないのね‥‥‥」
エリスが呆れたように言い、簡単に説明した。
「魔王フェイブスタークは、この星の始まりではないけど。
まあ、数万年前に異世界からやってきた魔神なのよ。
その転生したのが、いまの彼。
その頃の能力を得るとすれば、この地上からはるかな上。
あの青い月って言っても見えないけど。
そこくらいにまではいかないとだめなのよ。
惑星の縛りがあるから。
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死ななきゃいいんだけど、フェイブスターク」
素っ気なくそう言い、さあ、じゃあ行きましょうか。
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そして、そこには――
「やっぱりいたわね、竜王アールディア。
でしゃばりなとこだけは、一人前。
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まあ、いいわ。
場を変えればいいだけのこと。
若僧のくせに生意気なのよ‥‥‥」
エリスは魔王に相応しく、その拳を握りしめて高らかに宣言した。
「さあ、始めるわよ!!
天界対魔界。
最後の戦いをね――!!!!」
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