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秘密の聖女様、人類国家群の盟主の座を分捕る件 4
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「行かないの?」
先にやってきた穴の奥へと消えた勇者や部下たちを見送り、エリスはハーミアにそう問いかける。
女帝としての地位を取るか、妻としての役割を果たすか。
あなたはどうするの?
そう、問いかけていた。
「うーん‥‥‥。
エリス、預けておくわ。
旦那様、まだもう少しはあの筒の中で寝ていなきゃいけないようだし。
いまここを離れたら、そのことを知られたら本当に、離縁されてしまうもの――」
己で始めたものは己で始末を。
ふうん、そう。
エリスはそう言い、翼を軽く震わせる。
「なにこれ?
鱗粉??
夢でも見せようと?」
「まさかー‥‥‥。
新しい世代への贈り物よ。
古き者たちは新しき者たちに何かを残し、静かに去るのみ、かな?」
じゃあね、地上世界を手にした女帝様。
元気でやりなさいよ。
魔王としてエリスは、
「我が地下の一国の王として、あなた様との長き友情を願いたいわ。
ラスディア帝国エミリオ皇帝陛下。
ではー‥‥‥悠久の平和を願って」
静かにそう言い残して、まるで幻影が溶け行くように景色と混じり合い消えてしまった。
皇帝陛下。
なぜ、わたしだけを呼んだのだ‥‥‥?
一人、合点がいかない若き皇帝は、妻? それとも、支配者?
そのどちらかであるはずのハーミアを見、叔父のザイール大公を見た。
「エミリオ皇帝陛下。
その座に就かれたことを‥‥‥このザイール、何よりも心の喜びとさせて頂きます。
さてー‥‥‥」
大公が見るのはまだ燃え盛る炎の大壁。
そして、その向こうに凛として威厳を保つ、旧皇帝と成りはてた時代の遺物。
実兄を、まるで見えるかのように睨みつけていた。
「大公様、ここは――」
「いいえ!!
なりませぬ‥‥‥女王陛下。
ここは旧帝室の争いの場。
あなた様は、その上から見下ろすそのようでなければなりませぬ!
‥‥‥愚かな老人にもなれない兄弟喧嘩。
その結末をどうか見届けて頂きたい」
いつかは戻るその場所のために。
この争いにこれ以上、踏み込んではいけませんぞ。
さて、この大火をどうしたものか‥‥‥大公は控える部下たちにあの通路を伝い、静かに魔界に逃れよ。
そう指示を出していた。
大火の壁を前に二人の王がやれやれ、と。
そんな風情を楽しんでいた。
一人は竜王。
一人は前皇帝。
いや、まだ現皇帝かもしれない。
彼等は、
「して、やられましたかな‥‥‥。
だが、これで良いかもしれんし、幕引きだけは大事となりますな――」
前皇帝は愛剣を部下に持ってこさせると、久方ぶりにそれを抜いた。
あの戦場で弟とともに勝ち取ったいまのこの地位。
息子を信じて託し過ぎたかもしれん。
彼はどこかでそれを悔いていた。
「いや、これもある意味、時代の潮流でしょう。
我が名を使い、あのハーミアに指示を出すとは。
竜神様も呆れたものだ」
古き二神の思惑に見事に踊らされて、竜王はため息をついていた。
自分は器ではないと思われたのか、それとも、別の何かを期待されてこの場にいるのか。
「友は天空に。
主たちはいと高い王に、と。
そう望まれてもなあ。
フェイブスタークよ、お前は父上・母上と慕う魔神様や氷の女王様にお会いできたがー‥‥‥」
俺は同じく父母と慕って来た竜神に大地母神に。
そのどちらにも会えずじまいだ。
一度だけでも会いたかったものよ。
そう、心で嘆息し竜王は信頼を置く三人の配下へと伝言を残した。
「良いか、スィールズの生存が確認出来た今、あれが戻り次第。
そう、お前たちが支えになり竜族をまとめよ。
新たなる王はあれに任せる――」
「陛下!?
まだ、何をされるとー‥‥‥」
側近の一人がこれもすべて帝国と竜族の問題。
陛下お一人が何かを被る事はないはず。
そう、悲し気に呟いていた。
「あれが、天空におるのでな。
八竜会議も一竜は抜け、その力を失うだろう。
これからは魔族と仲良くやるといいー‥‥‥カイネ・チェネブに竜神は滅ぼされたが、我らが神は異邦からの来訪者。
それまで庇護して下さったのは魔神様だ。
その恩を返さねばならん」
元皇帝は怪訝な顔つきになる。
それはまるで、魔神と竜神に成り代わり、あの古代神と‥‥‥?
そんな風に聞こえてならなかったからだ。
竜王アールディアは、古い友人である元皇帝に笑いかける。
どうやら、そのようなことを八竜会議は御望みのようですな、と。
ただ一点。
気にかかることがあった。
「二年前のあの魔族の大侵攻の折り。
なぜ、我が部下のスィールズの決闘にあのような無粋な兵器を投げ込まれた?
いや、わたしが依頼したのは『信管』を抜いたモノ、だったはず。
あの二人の戦いは放っておいても互角に終わり、魔王はあの鉱山を占領し――」
「帝国を含む人類と竜族はそれを契機に怒涛の進撃を開始するはず。
でしたな。
だが、帝国はその依頼通りに行ったはず。
何より、あのような古代の遺物。
稼働させる方法は理解していても、その製法まではなかなか‥‥‥」
これも古代の二神とやらの干渉か‥‥‥
前皇帝と竜王はそこから狂わされてきたのか、我らは。
そう気づき、恥じてもいた。
いや、全てはあの時だ。
火山の噴火にかこつけて、帝国は竜族と共謀してあの地を占領した。
竜王は友の為に魔都を築く基礎を共同で行ったが、それは秘密裏に動く同族の影を隠す為でもあった。
全ては竜神の復活からー‥‥‥。
「親友を裏切った罪は償わねばならんようですな、互いに‥‥‥」
大火の壁は主がその場を去ったのちに役目を果たしたとばかりに静かに消えて行く。
「こちらは家族を裏切りました。
共に似たようなもの。
お前たち、下がるがいいー‥‥‥」
前皇帝はそう部下に告げた。
それは竜王も同じく。
そして、竜王ははるかな天空を臨み見る。
「気を付けてな、旧友殿。
わしもけじめをつけることにしましょう‥‥‥帝国の争いは中に収めねばんならん。
いくぞ、ザイール!!」
ただ一人。
供も連れずに前皇帝はその剣一振りを頼りに歩き出す。
その様は、若き頃のまだ帝位になく、一族からも忌み嫌われてすら頂点を目指していた頃に似ていた。
ただ一つ違うこと。
それは、常に彼を支えてくれた弟が、いまは敵として待ち受けていることだった。
「死なれるなよ‥‥‥」
竜王もまた、エリスと同じようにしてその姿を消していく。
ハーミアに一言だけ、次代の竜王はスィールズだ。
そう言葉を残して――
先にやってきた穴の奥へと消えた勇者や部下たちを見送り、エリスはハーミアにそう問いかける。
女帝としての地位を取るか、妻としての役割を果たすか。
あなたはどうするの?
そう、問いかけていた。
「うーん‥‥‥。
エリス、預けておくわ。
旦那様、まだもう少しはあの筒の中で寝ていなきゃいけないようだし。
いまここを離れたら、そのことを知られたら本当に、離縁されてしまうもの――」
己で始めたものは己で始末を。
ふうん、そう。
エリスはそう言い、翼を軽く震わせる。
「なにこれ?
鱗粉??
夢でも見せようと?」
「まさかー‥‥‥。
新しい世代への贈り物よ。
古き者たちは新しき者たちに何かを残し、静かに去るのみ、かな?」
じゃあね、地上世界を手にした女帝様。
元気でやりなさいよ。
魔王としてエリスは、
「我が地下の一国の王として、あなた様との長き友情を願いたいわ。
ラスディア帝国エミリオ皇帝陛下。
ではー‥‥‥悠久の平和を願って」
静かにそう言い残して、まるで幻影が溶け行くように景色と混じり合い消えてしまった。
皇帝陛下。
なぜ、わたしだけを呼んだのだ‥‥‥?
一人、合点がいかない若き皇帝は、妻? それとも、支配者?
そのどちらかであるはずのハーミアを見、叔父のザイール大公を見た。
「エミリオ皇帝陛下。
その座に就かれたことを‥‥‥このザイール、何よりも心の喜びとさせて頂きます。
さてー‥‥‥」
大公が見るのはまだ燃え盛る炎の大壁。
そして、その向こうに凛として威厳を保つ、旧皇帝と成りはてた時代の遺物。
実兄を、まるで見えるかのように睨みつけていた。
「大公様、ここは――」
「いいえ!!
なりませぬ‥‥‥女王陛下。
ここは旧帝室の争いの場。
あなた様は、その上から見下ろすそのようでなければなりませぬ!
‥‥‥愚かな老人にもなれない兄弟喧嘩。
その結末をどうか見届けて頂きたい」
いつかは戻るその場所のために。
この争いにこれ以上、踏み込んではいけませんぞ。
さて、この大火をどうしたものか‥‥‥大公は控える部下たちにあの通路を伝い、静かに魔界に逃れよ。
そう指示を出していた。
大火の壁を前に二人の王がやれやれ、と。
そんな風情を楽しんでいた。
一人は竜王。
一人は前皇帝。
いや、まだ現皇帝かもしれない。
彼等は、
「して、やられましたかな‥‥‥。
だが、これで良いかもしれんし、幕引きだけは大事となりますな――」
前皇帝は愛剣を部下に持ってこさせると、久方ぶりにそれを抜いた。
あの戦場で弟とともに勝ち取ったいまのこの地位。
息子を信じて託し過ぎたかもしれん。
彼はどこかでそれを悔いていた。
「いや、これもある意味、時代の潮流でしょう。
我が名を使い、あのハーミアに指示を出すとは。
竜神様も呆れたものだ」
古き二神の思惑に見事に踊らされて、竜王はため息をついていた。
自分は器ではないと思われたのか、それとも、別の何かを期待されてこの場にいるのか。
「友は天空に。
主たちはいと高い王に、と。
そう望まれてもなあ。
フェイブスタークよ、お前は父上・母上と慕う魔神様や氷の女王様にお会いできたがー‥‥‥」
俺は同じく父母と慕って来た竜神に大地母神に。
そのどちらにも会えずじまいだ。
一度だけでも会いたかったものよ。
そう、心で嘆息し竜王は信頼を置く三人の配下へと伝言を残した。
「良いか、スィールズの生存が確認出来た今、あれが戻り次第。
そう、お前たちが支えになり竜族をまとめよ。
新たなる王はあれに任せる――」
「陛下!?
まだ、何をされるとー‥‥‥」
側近の一人がこれもすべて帝国と竜族の問題。
陛下お一人が何かを被る事はないはず。
そう、悲し気に呟いていた。
「あれが、天空におるのでな。
八竜会議も一竜は抜け、その力を失うだろう。
これからは魔族と仲良くやるといいー‥‥‥カイネ・チェネブに竜神は滅ぼされたが、我らが神は異邦からの来訪者。
それまで庇護して下さったのは魔神様だ。
その恩を返さねばならん」
元皇帝は怪訝な顔つきになる。
それはまるで、魔神と竜神に成り代わり、あの古代神と‥‥‥?
そんな風に聞こえてならなかったからだ。
竜王アールディアは、古い友人である元皇帝に笑いかける。
どうやら、そのようなことを八竜会議は御望みのようですな、と。
ただ一点。
気にかかることがあった。
「二年前のあの魔族の大侵攻の折り。
なぜ、我が部下のスィールズの決闘にあのような無粋な兵器を投げ込まれた?
いや、わたしが依頼したのは『信管』を抜いたモノ、だったはず。
あの二人の戦いは放っておいても互角に終わり、魔王はあの鉱山を占領し――」
「帝国を含む人類と竜族はそれを契機に怒涛の進撃を開始するはず。
でしたな。
だが、帝国はその依頼通りに行ったはず。
何より、あのような古代の遺物。
稼働させる方法は理解していても、その製法まではなかなか‥‥‥」
これも古代の二神とやらの干渉か‥‥‥
前皇帝と竜王はそこから狂わされてきたのか、我らは。
そう気づき、恥じてもいた。
いや、全てはあの時だ。
火山の噴火にかこつけて、帝国は竜族と共謀してあの地を占領した。
竜王は友の為に魔都を築く基礎を共同で行ったが、それは秘密裏に動く同族の影を隠す為でもあった。
全ては竜神の復活からー‥‥‥。
「親友を裏切った罪は償わねばならんようですな、互いに‥‥‥」
大火の壁は主がその場を去ったのちに役目を果たしたとばかりに静かに消えて行く。
「こちらは家族を裏切りました。
共に似たようなもの。
お前たち、下がるがいいー‥‥‥」
前皇帝はそう部下に告げた。
それは竜王も同じく。
そして、竜王ははるかな天空を臨み見る。
「気を付けてな、旧友殿。
わしもけじめをつけることにしましょう‥‥‥帝国の争いは中に収めねばんならん。
いくぞ、ザイール!!」
ただ一人。
供も連れずに前皇帝はその剣一振りを頼りに歩き出す。
その様は、若き頃のまだ帝位になく、一族からも忌み嫌われてすら頂点を目指していた頃に似ていた。
ただ一つ違うこと。
それは、常に彼を支えてくれた弟が、いまは敵として待ち受けていることだった。
「死なれるなよ‥‥‥」
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