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秘密の聖女様、人類国家群の盟主の座を分捕る件 3

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「十二英雄に六王。
 おまけに大公閣下に、地上世界の魔族をまとめる魔王陛下と同盟を交わしたこのクルード辺境女公爵が立ち会い人。
 これ以上の面子が、この世界のどこにいると?」

 自分はあなたの配下ですよ、殿下?
 ハーミアは、ニヤリと笑いかけてやる。
 この戦争、夫であるスィールズの存命がわかればもうそれで良かったのだ。
 後は正しき皇帝を立て、その下ですべてを立て直す。
 その為の、彼の皇帝への即位式。
 炎の向こうで竜王が現皇帝を諫め、もうこの戦争は終わろうと話しているのが聞こえてくる。
 この話し合いをしている最中に、さすが勇者。
 手早くも、聖剣と少女をその手にして戻って来た。

「いかがでしょうか、殿下?
 いいえ、陛下。
 人類国家の盟主として、終戦を宣言、なさいませんか?」

「だが‥‥‥先程の返事はまだー‥‥‥。
 そなたには恩義しかないではないか‥‥‥」

「どうされますの?
 終戦を宣言なさいますの?
 上では魔王陛下に八竜会議、その他の国家群が。
 下では、青の魔人様に、氷の女王とともに眠る魔神様とそれに従う魔族の要。
 二十四柱の魔王の方々が聞き耳たてられておられますわよ?
 ほら、そこにもお一人」

 そう言い、ハーミアはエリスを指差す。
 魔王!?
 エミリオは驚嘆し、エリスはどうでもいいわよそんな肩書。
 そうぼやいている。

「さ、殿下。 
 いいえ、ラスディア帝国皇帝エミリオ陛下。
 どうかご採択を‥‥‥」

 さすが八竜会議。
 すでにこの聖剣には、あの古代の二神の意識は存在しない。
 どこにやったものやら‥‥‥ハーミアは呆れながらエミリオにそれを両手で捧げて奉じた。
 これこそが、皇帝の皇帝たる証。
 そう、言わんばかりに。

「わかったー‥‥‥。
 クルード辺境女公爵殿。
 感謝する――」

 エミリオは自分では器ではない、そう呟き、

「この場にて天界・魔界の連綿たる争いを終わりとする。
 どうか、この意を――各世界の主導者たちが受け入れんことを‥‥‥祈る」

 それしかないのか、エミリオ!!
 ザイール大公はもっと威厳を持たんかい、そう叫ぼうとするが。

「ダメだよオジ様。
 ボクたちがいるじゃない。
 彼はもう、子供じゃないでしょ?」

 うしろを見れば彼を慕う二百人以上の家族がいる。
 ああ、そうだな‥‥‥大公は引き際も大切だな。
 そう呟きいて、甥の晴れがましい姿を見守ることにした。
 そして、ハーミアは‥‥‥

「我が新しき主に、終生の忠誠を‥‥‥エミリオ皇帝陛下」

 まとっている衣装の裾を少しだけ持ちあげて、淑女の挨拶を。
 第一の臣下としての忠誠を立てていた。
 だが、あの怒りはまさおさまってはいなかった。
 そう、あの‥‥‥借金のカタにされた怒りだけは‥‥‥

「ああ、ありがとう、ハーミア殿。
 それで、その、な。
 返事なのだがー‥‥‥カーラには去られてしまい。
 私は‥‥‥妻を求めるべきではないと思う。
 この代が終われば、一族から正しき跡継ぎを育てようと――」

 そうですか。
 ハーミアの笑顔に、エミリオは何は恐ろしい寒気を覚えていた。
 その返事はまさか――

「では、陛下。
 皇后として、その求婚をこのハーミアがお受け致しますわ」

 にっこりと最大級の嫌味を込めた笑顔で言う彼女の意図が分からず、エミリオは身を引いてしまう。
 それをがっし!
 と胸元を掴んでハーミアは熱いキスを奪ってやった。

「いいですか、陛下。
 妻とはいえ、我が夫はスィールズ一人。
 皇后という席は、妻ではなく。
 あなたさまの監視役。
 あの恨みと怒り、このハーミア忘れておりませんから」

「‥‥‥つまり、私はあなたに支配されるということなのだな?」

「ええ、もちろん。
 でも、望むならー‥‥‥カーラ程度の側室は認めて差し上げますわ。
 この身を抱くことは許しませんけど」

 それは殺されそうだからやめておくよ、女公爵、いや皇后殿‥‥‥
 力なく笑い、エミリオは終生の支配者に逆らえないこととなった。

「最後に笑う女皇帝?
 女帝ハーミア、か。
 ああ、そう言い忘れたわ。
 帝国の始祖はね、六王の一人。
 紋章眼のラーズなの。
 彼がエレノアを青の聖騎士、いいえ、竜神と共に守護して来たのね‥‥‥」

 いきなりのエリスの暴露とその意図は分からない皇帝夫妻?
 もとい、女帝ハーミアとその下僕その一、は不思議そうな顔をする。

「ラーズの妻だったレイの子供はー‥‥‥」

 はるかな天空を見上げ、その見えないところにいる魔王フェイブスタークをエリスは見ていた。
 レイは子連れでラーズと結婚した。
 その子の父親は誰か。
 
「もういいわ、過去の話ばかり。
 行きなさいよ、ほら。
 待ってるんでしょ、仲間が??」

「そう、ね。
 帰るわよ、アシュリー。
 あ、そうだ。
 ハーミア、あんた。
 夫はどうするのよ、あそこにおいて置く気なの?」

「あ‥‥‥!?」

 そうだ、こっちのことばかりに気を取られていてそのことを忘れていた。
 そして、部下の宰相グランの中にスィールズの意識があることを、ハーミアも誰も知らなかった‥‥‥

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