37 / 150
第二章 王国の闇と真の悪
第三十六話 魔女の命名
しおりを挟む「だが、大司教殿。
それではシルドが既に知っていて、帝国を騙したことになる。
それでは辻褄が合わなくなる‥‥‥それは、だめだ。
それならば、王都からあのハーベスト大公城へと移動するのにかかった一週間。
移動期間中に、銀鎖の影騎士団、団長が自らが‥‥‥」
そう王子は床にかしづくシルドを面白そうに見ながら言葉を続けた。
「あの島に持っていた騎士団の管轄する領地。
それをすべて寄進したことにした方がいいだろう。
団長の決断ならば、第三師団長の意思など無意味だ」
これを聞いて大司教と大臣は満足そうな顔をする。
顔が険しくなるのはシルドとエルムンド侯のみだ。
そしてもう一人。
この会話を聞いていた、元エイシャに王子の視線が注がれる。
「で、アンバス子爵。
この奴隷女の始末はどうつけるつもりだ?
まさか、正室に、などど言わないよな?」
王子は面白そうに元エイシャの横腹を蹴り、そのまま頭を靴底で踏みつける。
「あうっ!!??」
元エイシャが悲鳴を上げた。
シルドはそれではユニスたちとの約束を守れなくなると思い、異議と唱えようとした。
「しかしー王子」
「しかし、なんだ?
アンバス子爵」
シルド、いや、アンバス子爵の異議が王子は気に入らなかったらしい。
元エイシャの頭を更に力を入れて踏みにじった。
その暴力を受けている本人はもう声を上げる気力すらない。
ここで、黙っていたエルムンド侯が声を上げた。
「王子。
シルドへのご配慮、このエルムンド、同じ騎士団の同士として感謝いたします。
ただ、奴隷女は多くを知り過ぎました。
しかし、もし帝国皇太子夫妻が我が国を訪れた際に、その姿がないとなれば。
これは多くの疑念を招きます。
あの島のことといい、事を始めるのはまだ先のはず。
いまは生かしておくべきかと」
大司教と王子、そして大臣は互いを見た。
さて、どうする?
そんな三者は何かを話し合い、ある決断を下す。
「ではまず、その奴隷女か。
呼び名をやろう、元エイシャだったな。
月の女神の名か‥‥‥ならば、ミレイアとでも名乗れ」
と、大司教は思案して名前を奴隷女に与える。
これには王子はニヤニヤと笑い、大臣がその名前の意味を口にした。
「ミレイア。
聖者サユキと敵対した、魔族の女帝の名ですな。
いや、これは一興。
呪われた名がこのーー
姉の婚約者を奪おうとした娘には、御似合いというもの」
だが、足りんな。
王子はそう言うと、短剣を鞘ごと、腰から引き抜いた。
それをアンバス子爵に与える。
「王子、これはーー?」
アンバス子爵にはその意図がわからない。
冷酷な神聖ムゲール王国の王子は笑いながら命じた。
「アンバス子爵。
その短剣で、このミレイアの舌を切り落とせ。
血がでると面倒だからな。
魔導で刀身だけ熱すればよかろう。
エルムンド侯ーー」
頭を踏みつけられて逃げれないミレイアに、エルムンド侯は何かの魔導をかける。
それは拘束の魔法。
そして、ミレイアは大きく口を開かされた。
「さあ、早くやらんか。
子爵位すらも失いたいのか、シルド?」
王子のその言葉に背を押されるように。
シルドはミレイアの舌の根元から、ゆっくりと刃の先を押し込みその全てを切り取った。
ミレイアは声にならない絶叫を放つがそれは音にならない。
エルムンド侯は、彼女の口から出る声すら封じる魔法をかけていた。
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました
冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。
一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。
もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。
ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。
しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。
エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。
そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。
「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。
エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。
ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。
※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる