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第二章 王国の闇と真の悪
第四十話 盲目の王子
しおりを挟む「理解できんな。
そのように有能なれば、もっとまともに計画を進めれたと思うがね、エルムンド侯」
ことの成行きを黙って見守っていた、大司教が口を挟んだ。
「候のいまの言動は、爵位だけでは済まない可能性もあるというのに。
なぜ、そこまで肩入れをするのか。
まあ、武人の考えることはわしらにはわからぬ世界ですな、王子」
どうしますか?
そう大司教が王子をチラリと見る。
だが、王子のその顔には不思議と怒りも苛立ちも見えなかった。
ーーこの御方の考えることも、うまく裁かねばならんな。
法王猊下のために。
大司教はそれを目にして心で呟く。
王子はいまはまだ、使える優位な駒ではあるがこれからどうなるか。
そこをチェス盤のゲームのように、勝ち進めていけるのが大司教は楽しかった。
「ふ、ん。
まあ、いい。
エルムンド侯そこまで、戦友を思う気持ちに免じて今回は許そう。
シルド、さっさと消えるがいい」
そう命じられ、シルドはミレイアを抱きかかえると魔法により別の馬車へと転移した。
「では、わたしも公爵とはいえ、王族ではない身分。
失礼致します」
そう言うと、エルムンド侯もまた転移魔法で姿を消す。
「やれやれ。
帝国には二頭の白と黒の鷹がいる。
王国にはなんだ?
バカの魔導の腕だけは天才的なバカ子爵と、友情にだけは熱い武人のコンビか?
わたしも有能な部下が欲しいものだーー」
窓を少し開けて外気を入れながら、王子は残念そうに呟いた。
「いるか、シルド?」
先に転移魔法で同じ馬車に移ったはずのシルドとミレイア。
しかし、その姿は見えなかった。
疑問に感じて声にだして問いかけると、荷台の方から声がした。
馬車は4名が乗れる小さな箱型のものだ。
その奥に旅行時などの私物をしまいこむ荷台がそのま車内から出し入れできる造りになっている。
そこから、返事は帰ってきた。
「まて、エルムンド侯。
いまは、まずい」
まずい?
なにがまずいのだ?
そう思いながら座席に腰をおろし、どこからか酒瓶を取り出す栓を開け、そのまま喉に流し込む。
シルドと物言えない彼の妻との会話が流れてきた。
「どうだ、奥よ。
そうか、身体はふけるのだな。
ああ、声が出せないというのは不便なものだな。
ほら、この皿なら湯ためるには深さも申し分ない。
馬車で道が荒れるが、こぼしても気にするな。
まずは身体を清めてくれーー」
そんな内容の会話がだった。
「なんだ、シルド。
奥、と呼ぶとはな。
その表現は、古い風習じゃないか。
奥方様の略称だったか?
変な奴だな。あれだけ粗雑に扱いながら、今になってその待遇。
お前にとってその元伯爵令嬢‥‥‥元奴隷だった女は、そんなに大事か?」
返事の変わりに何か小物がエルムンド侯目掛けて、投げつけられた。
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