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第三章 開戦の幕開け
第五十三話 ユニスの決断
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ユニス視点)
アベンスを出港してから翌日の朝。
寝れない一夜を過ごしながら、わたしは多くのことを思い悩みました。
南方貴族の母親を持ち、その血が混じったことで帝国の貴族社会から敬遠されてきたこと。
長い年月をかけて積もり沈んでいた心が晴れることがなく、ついつい内向的な性格になったこと。
それらすべてを吹き飛ばす、太陽のような殿下に出会ったこと。
そして、一過性の大きな幸せは更なる不幸を呼び込む可能性があること。
「お父様は火急の要件だとこの手紙を送ってくれたけど。
この二週間足らずで、帝国の平原にある銀鎖の闇の動向まで本当に商人の噂だけで伝わるものかしら‥‥‥?」
大きく気になったのはシルド様のことです。
三角洲の問題があるとはいえ、それは銀鎖の闇の騎士団団長が寄進した。
それだけの情報で済むはず。
それをこうして大きく伝える必要性があるのか、その点でした。
「帝国内に内通者がいる。
もしくは、シェス大河流域の大公領を対岸の王国側が、監視する態勢を強化している。
その意味で言えばーー」
時刻は陽が上がってまだ間もない頃。
この船はいまどこに位置しているのか。
わたしはすぐに自室を出ると、入り口横で待機していた警護の騎士を呼びました。
「おはよう、ご苦労様。
ねえ、いまこの船はどの辺りを下っているのかしら?」
「姫様、こんなにお早くーーそんな御姿で。
船の位置ですか?
それは、わたくしでは‥‥‥」
ああ、確かに。
わたしは夜着の上にガウンを羽織っただけでした。
これは、少し恥ずかしいものもありますが‥‥‥
「いいの。では、分かる者をすぐに呼んで貰えないかしら。
いますぐに」
「はい、ただいま。
ですが、何か問題でも‥‥‥??」
騎士はこの穏やかな雰囲気でなにをそんなに慌てているのか。
そんな目でわたしを見ます。彼はまだ何も知らない。
それは無理もありません。
「いいの、アンリエッタと、分かる者‥‥‥いいえ、船長を呼んで頂戴」
しばらくして身支度を整えたわたしの部屋に、先ほどの騎士と船長、アンリエッタと侍女長。
その四名が集まりました。
船長は夜番からの報告を受けたあとの雑務をしていたようで、少し眠そうな顔でわたしを見ていました。
「大公公女様。
なにか、お気に召さない点でもありましたでしょうか?
船が大きく揺れたり、御気分が優れない等?
もしそうでしたら、医者ではありませんが心得がある者を載せてはいますがーー??」
わたしが何か不満を感じて叱るために呼びつけたのかもしれない。
船長はそんな不安そうな顔で集まった者たちを振り返ります。
でも、わたしはそうではない、そう首を振りました。
壁にかけられているシェス大河の大まかな海図と地図を併用した図を指差しまし問いかけます。
「船長、朝早くご苦労様。
ごめんなさい、急ぎの要件なの。
いまどの辺りにこの船はいますか?」
「へ?
ええ、いまでしたら、公女様の御領地まであと四時間ほどの距離。
この、ここ辺りですね」
そう船長が指差したのは、運河が大きく迂回するように王国側の領土が突き出ている辺り。
エニシス半島と書かれたその文字がわたしの目を引きました。
「半島ということは、この大河はそれほどに大きいの?」
「まあ、普通の狭い海峡と変わりませんね。
ロゼやレブナスなんかの内湾港に入る海峡とほぼ似たほどの幅はありますよ?」
ロゼやレブナス?
それは帝国の頭部から南部域にかけての城塞都市の名前。
「船長、なぜ外洋の港への入港する海峡との距離と変わらないと?」
この船は大河の内湾部を行き交う商船のはず。それより先の海へと出る機会があるのか?
それが気になりました。
「ああ、この船といいますか。
この大河は底が深いですから。
外洋までそのまま交易にでることもしばしばあります。
ですので、そういった土地勘と言いますか。
まあ、海図を見ても分かりますけど‥‥‥??」
「では、このエニシス半島には王国側の城塞都市や、海軍、水軍の駐留もありえますか?」
「もちろんです、公女様。
エニシス半島には、この先端の、この大きく突き出た部分に少ないですが。
アバルン城塞都市があり、水軍が駐屯していますよ?」
もうすぐそこを通過する?
その際に検閲は??
いえ、それよりもーー
「この海峡というかその部分は中立地帯ですか?
それとも、王国側のなにか監査などありますか?」
なんでそんなことを気にするのか?
不思議そうな船長はそれでも端的に答えてくれました。
「あります。
ここはその先にあるこの、入江状の部分で帝国側も検閲をしますので。
どこの国も船も、それを受けることになりますね。
まあ、例外としては特務船くらいですかねえ?」
特務船?
それはどんなもの? いまある材料の切り札となる?
「それは、どういう内容の時に運航されますか、船長?」
「運航ですか?
そうですね、法王猊下が乗船されている時、公用商人といって帝国も王国も枢軸側も。
そのどれもが、検閲なしで運行する商船ですが‥‥‥それが何か?」
「その船はもちろん、外洋にもいきますか?」
「そりゃあもちろん。この船だって、喫水を見て頂ければわかりますが外洋船ですから。
たまに、そういった任務を頂くこともありますよ?」
少しだけ、希望が見えてきた気がしました。
「では、その公用商人の見分けはどのようにして付けますか?
検閲が無いなら、目視による確認のはず」
「ああ、それでしたら。
例えば、ハーベスト大公様がその権利をお持ちでしたらその公旗と。
船長の私。あとは依頼主の委任された一族のどなたかが共に甲板に立ち、それを確認する。
そう言った段取りです」
ああ、もちろん、ハーベスト大公家は内湾に領地がありますから、その権利は持たれてませんが。
その船長の一言が救いとなりました。
「では、船長。
南部貴族のベシケア大公家なら、それはどうですか?」
「ベシケア様?
それでしたら、レブナスがその向こう側。南方大陸に近い位置にありますから。
もちろん、お持ちですよ?」
問題はここからです。
大公家の旗は四種類。これは帝国内に大公家が四家あるからです。
その旗は白地に黄色の枠を染め、内側に各四隅から真中までの赤い斜線が入ったものが公的に使われます。
この船に、それがあるかどうか‥‥‥。
「船長、どの大公家の旗でも構いません。
いまこの船にはありますか?」
これには船長はにこやかに答えて下さいました。
「もちろんです。
いま掲げているのが、ハーベスト大公家の公家の旗ですよ。
この船はいま、ハーベスト大公家の御用船ですから」
ありがとう、船長。
その一言がわたしは欲しかったのです。
アルフレッドと護衛の騎士にわたしが伝えます。
「船長、お願いがあります。
我が大公家に貸しをつくる気はありませんか?」
貸し? 変な提案をするお姫様だ。
そんな顔をする船長ですが、あちらから提案されてきました。
「このシェス大河での、運用旗。つまり、ハーベスト大公家のお城があるあの都市から昨夜出たアベンス。
その間の王国側の検閲を受けずに通れるようにハーベスト大公様が新たに我が商店に公用商人の。
認可を下さるなら、お受けしますよ、公女殿下」
さすがは商人。抜け目のない提案です。
でも、それは即断はできない案件。返事はどうするか。
迷いましたが、ある事実を基にして決断を下しました。
「わかりました。現在は大公家公女ですが、皇太子殿下との婚約は正式に決まっております。
婚儀が正式になった際には、認可を出しましょう。それではどうですか?」
これは船長も即断は難しい様子。でも、婚儀が決まっていることは帝国中に知れ渡っています。
「いいでしょう。
それで手を打ちます。で、何をすればいいですか?
公女殿下」
「はい、では時間がありません。
まず、騎士の方たちは総出で、わたしの実家からの荷物を大河へと捨てて下さい。
わたしの南方の衣装以外を。船長は旗をベシケア大公家の状態に逆さに向けて下さい」
「で、ですが、姫様。
それではご実家からのお荷物がーー」
これには侍女長が悲鳴に近い声を上げます。
でも、わたしはそれを制止しました。
「いいの、時間がありません。
全ての荷を。
できますか、船長?」
そう言ったら、船長は意地悪そうな顔をしました。
「公女殿下。こういった船にはですね、水を船底に入れて、ある程度の喫水を保つための部屋があるんですよ。
もちろん、ここは運河。海のような荒れ方はしませんから、いまは綺麗なもんです。
そこに、ね?」
と、笑いかけると船員たちを起こしにかかる船長。
そして男性陣はわたしの荷物をすべて船底へと。入りきらない物は中身だけを抜いてばらしてくれた様子。
あとから組み立てれるかは心配ですが。
「で、公女殿下。
その南方貴族のご衣裳はどちらで?」
船の先頭に立ちながら問いかけてくる船長。
あの晩餐会の夜に着た正式な公用着で、私はその場に立っていました。
「お母様が南方貴族の出自なのです。
これは形見の品。大事なものだから捨てたくなかったの」
「よくお似合いですよ、公女殿下。
ほら、王国側も文句のつけようがないみたいですね。
あなたはーーとても機転が利いていらっしゃる。
これからも御贔屓に願いたいものです」
そう、言いとても丁寧な会釈をしてくれた船長。そう言えば、まだ名前を知りませんでした。
「わたしですか?
アーベル商会のエド・アーベルと申します、あーその‥‥‥」
「ユニスです。
ユニス・ニアム・ハーベスト」
そう言うと船長はにこやかに笑い、この珍事を楽しんでくれた様子。
「では、ユニス公女殿下。
今後とも、どうぞ、御贔屓に」
この、エド・アーベル船長には今後も何度か助けてもらう縁がこの時から始まりました。
そして、ハーベスト大公家へ。
わたしは無事に帰参を果たすことが、できました。
あの手紙が事態をどう変えるのか。
その不安を胸に、義父上へと手紙を渡した時。
すべての歯車が揃ったように回り出した。そんな気がしたのです‥‥‥。
(ユニス視点)
アベンスを出港してから翌日の朝。
寝れない一夜を過ごしながら、わたしは多くのことを思い悩みました。
南方貴族の母親を持ち、その血が混じったことで帝国の貴族社会から敬遠されてきたこと。
長い年月をかけて積もり沈んでいた心が晴れることがなく、ついつい内向的な性格になったこと。
それらすべてを吹き飛ばす、太陽のような殿下に出会ったこと。
そして、一過性の大きな幸せは更なる不幸を呼び込む可能性があること。
「お父様は火急の要件だとこの手紙を送ってくれたけど。
この二週間足らずで、帝国の平原にある銀鎖の闇の動向まで本当に商人の噂だけで伝わるものかしら‥‥‥?」
大きく気になったのはシルド様のことです。
三角洲の問題があるとはいえ、それは銀鎖の闇の騎士団団長が寄進した。
それだけの情報で済むはず。
それをこうして大きく伝える必要性があるのか、その点でした。
「帝国内に内通者がいる。
もしくは、シェス大河流域の大公領を対岸の王国側が、監視する態勢を強化している。
その意味で言えばーー」
時刻は陽が上がってまだ間もない頃。
この船はいまどこに位置しているのか。
わたしはすぐに自室を出ると、入り口横で待機していた警護の騎士を呼びました。
「おはよう、ご苦労様。
ねえ、いまこの船はどの辺りを下っているのかしら?」
「姫様、こんなにお早くーーそんな御姿で。
船の位置ですか?
それは、わたくしでは‥‥‥」
ああ、確かに。
わたしは夜着の上にガウンを羽織っただけでした。
これは、少し恥ずかしいものもありますが‥‥‥
「いいの。では、分かる者をすぐに呼んで貰えないかしら。
いますぐに」
「はい、ただいま。
ですが、何か問題でも‥‥‥??」
騎士はこの穏やかな雰囲気でなにをそんなに慌てているのか。
そんな目でわたしを見ます。彼はまだ何も知らない。
それは無理もありません。
「いいの、アンリエッタと、分かる者‥‥‥いいえ、船長を呼んで頂戴」
しばらくして身支度を整えたわたしの部屋に、先ほどの騎士と船長、アンリエッタと侍女長。
その四名が集まりました。
船長は夜番からの報告を受けたあとの雑務をしていたようで、少し眠そうな顔でわたしを見ていました。
「大公公女様。
なにか、お気に召さない点でもありましたでしょうか?
船が大きく揺れたり、御気分が優れない等?
もしそうでしたら、医者ではありませんが心得がある者を載せてはいますがーー??」
わたしが何か不満を感じて叱るために呼びつけたのかもしれない。
船長はそんな不安そうな顔で集まった者たちを振り返ります。
でも、わたしはそうではない、そう首を振りました。
壁にかけられているシェス大河の大まかな海図と地図を併用した図を指差しまし問いかけます。
「船長、朝早くご苦労様。
ごめんなさい、急ぎの要件なの。
いまどの辺りにこの船はいますか?」
「へ?
ええ、いまでしたら、公女様の御領地まであと四時間ほどの距離。
この、ここ辺りですね」
そう船長が指差したのは、運河が大きく迂回するように王国側の領土が突き出ている辺り。
エニシス半島と書かれたその文字がわたしの目を引きました。
「半島ということは、この大河はそれほどに大きいの?」
「まあ、普通の狭い海峡と変わりませんね。
ロゼやレブナスなんかの内湾港に入る海峡とほぼ似たほどの幅はありますよ?」
ロゼやレブナス?
それは帝国の頭部から南部域にかけての城塞都市の名前。
「船長、なぜ外洋の港への入港する海峡との距離と変わらないと?」
この船は大河の内湾部を行き交う商船のはず。それより先の海へと出る機会があるのか?
それが気になりました。
「ああ、この船といいますか。
この大河は底が深いですから。
外洋までそのまま交易にでることもしばしばあります。
ですので、そういった土地勘と言いますか。
まあ、海図を見ても分かりますけど‥‥‥??」
「では、このエニシス半島には王国側の城塞都市や、海軍、水軍の駐留もありえますか?」
「もちろんです、公女様。
エニシス半島には、この先端の、この大きく突き出た部分に少ないですが。
アバルン城塞都市があり、水軍が駐屯していますよ?」
もうすぐそこを通過する?
その際に検閲は??
いえ、それよりもーー
「この海峡というかその部分は中立地帯ですか?
それとも、王国側のなにか監査などありますか?」
なんでそんなことを気にするのか?
不思議そうな船長はそれでも端的に答えてくれました。
「あります。
ここはその先にあるこの、入江状の部分で帝国側も検閲をしますので。
どこの国も船も、それを受けることになりますね。
まあ、例外としては特務船くらいですかねえ?」
特務船?
それはどんなもの? いまある材料の切り札となる?
「それは、どういう内容の時に運航されますか、船長?」
「運航ですか?
そうですね、法王猊下が乗船されている時、公用商人といって帝国も王国も枢軸側も。
そのどれもが、検閲なしで運行する商船ですが‥‥‥それが何か?」
「その船はもちろん、外洋にもいきますか?」
「そりゃあもちろん。この船だって、喫水を見て頂ければわかりますが外洋船ですから。
たまに、そういった任務を頂くこともありますよ?」
少しだけ、希望が見えてきた気がしました。
「では、その公用商人の見分けはどのようにして付けますか?
検閲が無いなら、目視による確認のはず」
「ああ、それでしたら。
例えば、ハーベスト大公様がその権利をお持ちでしたらその公旗と。
船長の私。あとは依頼主の委任された一族のどなたかが共に甲板に立ち、それを確認する。
そう言った段取りです」
ああ、もちろん、ハーベスト大公家は内湾に領地がありますから、その権利は持たれてませんが。
その船長の一言が救いとなりました。
「では、船長。
南部貴族のベシケア大公家なら、それはどうですか?」
「ベシケア様?
それでしたら、レブナスがその向こう側。南方大陸に近い位置にありますから。
もちろん、お持ちですよ?」
問題はここからです。
大公家の旗は四種類。これは帝国内に大公家が四家あるからです。
その旗は白地に黄色の枠を染め、内側に各四隅から真中までの赤い斜線が入ったものが公的に使われます。
この船に、それがあるかどうか‥‥‥。
「船長、どの大公家の旗でも構いません。
いまこの船にはありますか?」
これには船長はにこやかに答えて下さいました。
「もちろんです。
いま掲げているのが、ハーベスト大公家の公家の旗ですよ。
この船はいま、ハーベスト大公家の御用船ですから」
ありがとう、船長。
その一言がわたしは欲しかったのです。
アルフレッドと護衛の騎士にわたしが伝えます。
「船長、お願いがあります。
我が大公家に貸しをつくる気はありませんか?」
貸し? 変な提案をするお姫様だ。
そんな顔をする船長ですが、あちらから提案されてきました。
「このシェス大河での、運用旗。つまり、ハーベスト大公家のお城があるあの都市から昨夜出たアベンス。
その間の王国側の検閲を受けずに通れるようにハーベスト大公様が新たに我が商店に公用商人の。
認可を下さるなら、お受けしますよ、公女殿下」
さすがは商人。抜け目のない提案です。
でも、それは即断はできない案件。返事はどうするか。
迷いましたが、ある事実を基にして決断を下しました。
「わかりました。現在は大公家公女ですが、皇太子殿下との婚約は正式に決まっております。
婚儀が正式になった際には、認可を出しましょう。それではどうですか?」
これは船長も即断は難しい様子。でも、婚儀が決まっていることは帝国中に知れ渡っています。
「いいでしょう。
それで手を打ちます。で、何をすればいいですか?
公女殿下」
「はい、では時間がありません。
まず、騎士の方たちは総出で、わたしの実家からの荷物を大河へと捨てて下さい。
わたしの南方の衣装以外を。船長は旗をベシケア大公家の状態に逆さに向けて下さい」
「で、ですが、姫様。
それではご実家からのお荷物がーー」
これには侍女長が悲鳴に近い声を上げます。
でも、わたしはそれを制止しました。
「いいの、時間がありません。
全ての荷を。
できますか、船長?」
そう言ったら、船長は意地悪そうな顔をしました。
「公女殿下。こういった船にはですね、水を船底に入れて、ある程度の喫水を保つための部屋があるんですよ。
もちろん、ここは運河。海のような荒れ方はしませんから、いまは綺麗なもんです。
そこに、ね?」
と、笑いかけると船員たちを起こしにかかる船長。
そして男性陣はわたしの荷物をすべて船底へと。入りきらない物は中身だけを抜いてばらしてくれた様子。
あとから組み立てれるかは心配ですが。
「で、公女殿下。
その南方貴族のご衣裳はどちらで?」
船の先頭に立ちながら問いかけてくる船長。
あの晩餐会の夜に着た正式な公用着で、私はその場に立っていました。
「お母様が南方貴族の出自なのです。
これは形見の品。大事なものだから捨てたくなかったの」
「よくお似合いですよ、公女殿下。
ほら、王国側も文句のつけようがないみたいですね。
あなたはーーとても機転が利いていらっしゃる。
これからも御贔屓に願いたいものです」
そう、言いとても丁寧な会釈をしてくれた船長。そう言えば、まだ名前を知りませんでした。
「わたしですか?
アーベル商会のエド・アーベルと申します、あーその‥‥‥」
「ユニスです。
ユニス・ニアム・ハーベスト」
そう言うと船長はにこやかに笑い、この珍事を楽しんでくれた様子。
「では、ユニス公女殿下。
今後とも、どうぞ、御贔屓に」
この、エド・アーベル船長には今後も何度か助けてもらう縁がこの時から始まりました。
そして、ハーベスト大公家へ。
わたしは無事に帰参を果たすことが、できました。
あの手紙が事態をどう変えるのか。
その不安を胸に、義父上へと手紙を渡した時。
すべての歯車が揃ったように回り出した。そんな気がしたのです‥‥‥。
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