突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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終章 終焉への幕開け

第七十三話 皇后陛下の深慮

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 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「さて、逃げたとみせかけれたかな?」
 そっと扉の奥で帝国宰相は室内を覗き込みようにして様子を伺っている。
「あのねーまたこの通路使って帰るなら、意味ないんじゃない、この行動?」
 ライナが呆れて言うが、それはない。そう宰相は言い切る。
「あの御方はただでさえ、人一倍怖がりなのだ。
 こんな歩いて帰れる距離なら安全策を取るに決まっている」
「へえーーそんなまで分かっていながら逃げ出すなんて。
 男って本当‥‥‥バカばかりだわ。
 シェイルズのばか」
 この跳ねっ帰りの虎娘がここまで寂しそうな顔をするとは、宰相は意外だった。
「なら、ユニスに感謝しておけばいいではないか?
 どうせ、六年間もほって置かれたのではなくて、逃げるように壁を作っていたのだろう?
 その壁を早く這いあがって来いと、毎年、高さをあげていたのではないのか?」
 うっー‥‥‥そう呻いてライナは黙り込む。
 どうやら図星だったらしい。
「いい男になってほしい気はわかるがな。
 相手に期待だけをかけると捨てられるぞ、馬でも犬でもそうだろ、ライナ?
 愛情を与えようとは思わないのか?」
 いつからこんな顔をするようになったのか、この娘は。
 まるで行き場を無くした猫のようではないか。
 ユンベルトはそう思ってしまう。
「この好機を逃したら、二度と黒を手に出来ないかもしれんな?」
「そんなっ、ちゃんと戻ってきたらーー」
 ほら、そこだ、ライナよ。
 ニーエと息子のことは?
 この五年間の問題の一旦は、お前にも責任があると言えばあるのだぞ?
 理解しているのか、そんな目で宰相はライナを見ていた。
 部屋の中からは皇后に、行方不明だ。
 そう伝える皇帝の声が聞こえる。
 皇后はさすがに女性だ。
 あっさりとしたものだった。
「では、グレン、シェイルズ、ユニスともに死亡と言うことでさっさとニーエを側室になさい。
 エリオスがいれば帝室は無事。ついでにライナもその傍に置けばいいでしょう。
 ラズの血がそのまま入ります。
 ユンベルトが王国の王室と仲良くするなら、ここは帝室もそうするべきでしょう?
 東に北はすでにエシャーナ公の縁戚。そしてレブナス高家とも。
 今後はハーベスト大公家と帝室の敵対にならないようにするべきでは?」
 あんなこと言われてますよ?
 とライナが指で皇后を示す。
 ユンベルトの首筋には大量の汗が噴き出ていた。
「あのなあ、ユンベルトが手を下すならとうの昔にやっているだろう?
 あの枢軸側からの逃亡の時だってお前もいたではないか?
 ユンベルトの才覚に救われたのはどこの誰だ?」
 ユンベルトの才覚?
 この宰相はどれほどの才能があるのだろう? ライナが少しだけ興味が沸いてきた。
「あの才覚と言われましても、まさかファイガ山脈の横断などと。
 初代様が南方からあの枢軸の央国まで交易していたなんて伝承を信じてその道を歩くべきだと。
 あの寒い四日間はもう二度と経験したくありません。
 着いたらレブナン高家の庭先だなんて、誰が信じますか!?」
「そうだな、あの時はそれでもファイガ山脈のはるか反対側だ。
 徒歩でいける距離だとすると三か月はかかるだろう、それを三日半。
 あの道の門を守ってくれた仲間には悪いことをした‥‥‥」
「そうですよ、陛下。
 初代様がこの帝都を建設されたのが今より数百年前。
 どうやってあのような道を作られたのかーー」
「違う、作ったのではない。
 もう張り巡らされていたのだ。伝承の端々にもあるではないか。
 聖者が多くの大陸から大陸へと数時間や数日でたどり着いた、と。
 あれはそういう、いまにはない時代の遺物だろう。そうユンベルトは考えて多くを調べさせてきたのだ。
 さきほど通過してきた通路は、初代様がどうにかして真似たものだろう。
 だから、ユンベルトは使うな、そう言うのだ。いつ崩落するか分からんからな。
 ああ、いや違う、そなたを危険に巻き込む気は‥‥‥」
 見えないところでは皇后が何かを皇帝にしたらしい。
 必死になにかをしている皇帝の声が聞こえる。
「止めなくていいのですか、宰相閣下?」
 宰相は知らん顔をしている。いま出て行けばどうなるかをよく理解しているからだ。
「こら、噛むな、お前はいつも不機嫌になると!!?」
 などと皇帝の悲鳴が聞こえて来た。
「おい、そこの二人。
 そろそろ良いだろう、助けろ!!」
 その一言で室内は静まり返った。
「あーあ‥‥‥バレてるじゃないですか」
 ライナの嫌味を尻目にユンベルトはその場に押し出された。
「陛下、もう少し我慢を。どうせ、噛まれてもひどいけがにはならないのですから」
 皇帝を襲っていた皇后は自分は知らないというように皇帝の横に座り直していた。
「これもなあ、慣れれたらいいんだが‥‥‥。
 で、ライナとニーエだが。その話はなしだ。
 エリオスに関してもな。側室も迎える気はない。悪かった、お前だけだ、本当に‥‥‥」
 どれだけ当てになりますかね、そう皇后は嫌味を返すと宰相に目をやる。
「では、ユンベルトはその道を理解しているそういうお話ですか、陛下?」
 左腕の噛み跡を服で隠すようにして、皇帝は妻を抱きしめた。
「それだけではない、もう探しに向かった頃だ。
 あれは、そなたよりも芯が強い」
 あれ?
 ライナと皇后は顔を見合わせる。
「まさか、あの女大公を!?」
「女一人で行かせるなんて!!
 なんて非道な、それでも皇帝ですか?」
 あの通路でも二百は移動できたのだからそれほどの人数を、そう皇后は言うが皇帝に手で遮られた。
「しかし、陛下ーー我が子を‥‥‥」
 やはり母親は子供が一番なのだな、皇帝はそれを再認識して微笑んだ。
「白に黒、それにな、銀も行っている。片方だけだがな。
 なあ、お前はおかしいと思わないか? あれだけ第四王子に専横されていた王国がこうもあっさりと。
 廃嫡にまで追い込み、第四王子は船上で反逆者として王命で討たれたそうだ。
 あのシルドと誰だ??」
「エルムンド侯でございます、陛下。
 国王様はどうやら、心を操られていた様子。
 大司教閣下がムゲール国王が心を取り戻した同時期に、何者かに討たれたのがきっかけかもしれませんな」
 まったく、そう言うと皇帝はソファーに背を預けて皇帝であることを示す冠をそっと脱いだ。
「これに一国がかかっている。王国もそうだった。
 これは、持つべき人員と領土は少ないが、あのユニスにも与えていた。
 シルドはそれを蹴ったそうだ。頂かなくとも、自力でその場に行きます、とな。
 ほぼ、グレンと同じ年か‥‥‥グレンはこれから良き友に恵まれるのかもしれない。
 わしの時のような、親類縁者で血肉争うのはもうこりごりだ。あれには従兄弟すらいないのだぞ?」
 兄や姉、弟や妹。叔父に甥、など。
 その多くを殺しはしなかったが、地方に封じたり結婚をさせないように軟禁したり、と。
 皇帝には皇帝なりの悩みがあったらしい。
「おい、ライナ」
 ユンベルトの後ろでこちらの様子見を伺っているライナを彼は呼び出す。
「え、あたし??
 はい、陛下‥‥‥シェイルズは譲りませんよ。
 絶対に」
「見ろ、絶対にと来た。これで側室にした際には寝首を掻かれるだけではない。
 ユニスやグレンへの恨みで中から崩壊だ。分かったか?」
 皇后は残念ねえ、とそんな声を漏らす。
 ライナも聞きたいことがあるのか、声を上げた。
「ですが、陛下。
 ニーエとエリオスはどうなさるおつもりですか?」
「さて、な。
 今回の武功は運もあっただろうが、ほぼ、ユニスの大功だ。
 それを譲られて喜んで乗るかなあ、わしの息子は。エリオスは言っていた。
 ユニスが最後までお前とニーエを守ると誓いながら、グレンを好きかとそう聞いたらしい」
 それは初耳だと、ライナが言葉を失う。
 かわりに皇后は質問をした。
「それでなんと?」
 皇帝とユンベルトは互いにとても寂しそうな顔をした。
「エリオスは、こう聞いたそうだ。
 わたしは父上をもう死んだものだと思う事にします。
 その代わりに母上とライナの無事を約束してくれるなら、第五の大公になります、とな」
「陛下、それは質問の答えに‥‥‥」
「まだ続きがある。せっかくなのはそなたの悪い癖だ。
 ユニスにまだグレンを愛していますか、そう聞いた。
 言えません、そう言われたが涙を流していた、とな」
「そんなーだって、あたしたちを道具にしたんじゃ?
 あれだけ権力が好きそうに見せていて、最後はあのバカ、あ、いえ‥‥‥すいません。
 グレンに全部、渡すためだったと?
 なんでそんな回りくどいこと」
「そうですよ、陛下。
 それならば、あのような悪者にならずともこうしたいとそう願い出れば」
 まだわからんのか、と皇帝はため息をついた。

「願い出てだれが半島攻略なんぞに許可を出す?
 この枢軸だの王国だのと揉めている時に新たな火種をつけるような真似をーー」
 ユンベルトは注釈を入れるようにして会話を進めて行く。
「ユニスは王国が南や北の大陸と外洋域での交易を重視すると読んでいました。
 逆に枢軸はシェス大河の運行権を独占する。その為に、三角洲をまずは寄進させ、次に‥‥‥」
 皇帝は妻とライナからの視線になにか恐怖を感じながら話を進めた。
「あのエニシス半島は王国と枢軸で共同運用するそういう狙いだったのだろうな。
 だから、はるか上流域のミスリルの堆積した部分を枢軸は開拓を始めた。
 その要所はいまはガラ空き。だが誰も手出しができん。
 ところが、帝国内で軍事勢力を変えることなく十万もの兵力をかき集めた女大公によりあっけなく陥落。
 最後においしいところを王国か枢軸どちらかが貰おうとしていたが、どちらもそれはこの冬の明け。
 春先以降だと悠長に構えていたところを、な」
 とんでもないところを分捕った者だ。
 そう皇帝は疲れ果てたようにして言葉を継いだ。
「王国としてはこれを奪還するよりも、王族から帝国の四大貴族の一つに自国の王族を入れたほうがいい。
 そこでシルドが離縁した妻から呼ばれて再度来る、と。
 帝国からしたら女に呼ばれて元夫が来るのだ。王国からすれば、さぞ、面白いだろうな。
 なあ、ユンベルト?」
 そろそろ会話を変われ、ご婦人方の最後の怒りの受け皿は任した。
 そんな感じに宰相に最終バトンが渡される。
 これは綺麗にまとめないと、とんでもない怒りを食らう、ユンベルトはあれから汗が止まらない。
 こんな二頭の虎の前に放り出すなんて、そう思い皇帝をにらみつけるが彼は知らない顔を決め込んでいた。
「つまり、ハーベスト大公家は美味しいところを頂いた訳ではなくーー
 逆に銀鎖の天才という劇薬を王国から処方されたことになりますな。
 それに対してのブルングド大公にシェイルズを任せることで、エシャーナ公とブルングド大公。
 両家に監視される訳ですから」
 え、でも待って。なんかおかしくない?
 そうライナが声を上げた。
「変ですよね、エシャーナ公はまあ養子を迎えたらいい。
 エリオスはシェイルズの養子であたしがーー正妻になれれば‥‥‥いいか、な。
 ユンベルト叔父様の大公家にはシルド殿が入り。
 で、ユニス様と殿下は?
 ニーエは?」
 またそんな爆弾を投げ込まないでくれ。
 宰相は言葉に詰まってしまう。
「ユニスは全てを殿下に渡して消えるでしょうな。
 ニーエはどうなのですか、陛下?」
 なに、わしか!?
 最後はいつもそうだ。ぼやきながら早く、そう皇后にせっつかれて皇帝は話を詰めた。
「ニーエには本音で知りたいと何度か尋ねてな。
 息子のことは帝位継承権問題に関わらなくてもいいようにする、という確約をしたらようやく話してくれた。
 それはライナ、お前の方が詳しいだろう?
 グレンは戻り次第、皇帝の席に座らせる気はない。
 あと十年はエシャーナ公の下で修業させるつもりだ」
 それを言われてライナはうーん、と悩みだす。
「おい、何を悩んでいる?」
「いえ‥‥‥ニーエはあの子の本音はイズバイアよりも子供だし。
 子供が安心できるなら、もうどこにも嫁には行きたくない。
 だった‥‥‥でしたから。
 もう、心が擦り減ってます。実家に戻っても、死を命じた父上とはいたくないだろうし」
 まあ、そうだろうな、その場にいた残り三人は同意する。
「なら、エシャーナ公の側で心でも癒したらどうだ?」
「はい???
 側室に上がれ、と?」
「違う、それなら‥‥‥ユニスとグレンの三人で心を癒したらどうだ、と」
「陛下、それが一番つらいの理解してないですねー。
 黙って引き込んでいたらいきなり連れ出されて、子供共々、政治の道具にされてようやく安心した。
 その相手のグレンは自分には見向きもしない上に、その元婚約者になさけをかけられてるんですよ?
 ニーエもああ見えて今は大人しいですけど。
 イズバイアと一緒に嵐の海に先に飛び込んだの、あっちですからね?
 あたしより性格きついあの子が、陛下からそんな温情与えられた日には自害しますよ?
 女にも誇りがありますから」
 また‥‥‥そんなに混ぜ返すか、こいつは。
 もうなら女が決めろ、わしは知らん!
 皇帝は皇后にお前が決めろ、そう合図する。
 それならば、と皇后が決めていたかのように発言した。
「では、ニーエには自分で選ばせましょう。
 グレンを取るならば、ユニスと話し合いでも決闘でもさせなさい。
 グレンが決めるのならばそうさせなさい。
 どうあっても、帝国は一切の罰を与えません。
 まあ、その前にユニスが自害しそうな気はしますが‥‥‥陛下?
 止めないのですか? 惜しい逸材ですよ?
 側室に入れても良いと思いますが?」
 こんな発言は宰相もここ数十年耳にしたことがないと驚いていた。
「だめだ。
 息子に恨まれるなら、本人同士で決めさせる。
 グレンの後始末を親がするのもここまでだ。
 で、あの三人は見つかりそうなのか?」
 最後は自分に戻ってくるのか。宰相はやはり汗が止まらなかった。

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