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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第三十八話 城塞都市アーハンルドの闇 7
しおりを挟むしかし、とシルドは言葉を紡いでいく。
子爵のはべらせている女性陣に視線をやり、
「その美しさもこの美しさも。
見る者によっては同じ以上の価値を持つもの。
つまり――」
子爵はやれやれ、喰えぬ御方だ。
そう笑顔になる。
「こちらにも興味はお持ちだと?
閣下も多趣味ですなー‥‥‥」
「いやいや、違うよ子爵殿。
俺はそちらの御婦人方の怒りを買いそうな事を言ったがー‥‥‥。
美しさには比較できるものがない。
そう言いたいだけさ、ああ、酒はないかな?
この程度の‥‥‥茶も悪くはないが、なあ?」
シルドはこれでも、王国貴族でいた際にはー‥‥‥。
あの、いまではグレン一筋のユニスですら外見を美しいと評した美丈夫だ。
彼に熱いまなざしを送られて、彼女たちは満足そうな顔をしていた。
「酒よりも良い美酒にもありつけますがね‥‥‥閣下?」
嫉妬と怒りで不機嫌になっていた愛人たちが、一様に笑顔に戻っていた。
子爵はその光景に自分以上の女たらしだな、この若僧は‥‥‥
そんな評価をシルドに付け始めていた。
「ふん?
良い美酒?
それは何かな?
この――」
ほら、おいで。
そう言い、シルドは膝上にアルメンヌを抱き上げた。
「我が妾に等しいような、外の美しさを誇るものがある。
そのような意味にも取れる気がするが?」
わざとらしく、恥じらい顔を背けるアルメンヌの仕草を楽しむように。
シルドはアルメンヌの服をそっと持ちあげて行く。
そのやり方に、アルアドル卿はやり過ぎだと怒りを覚え、なぜかその怒りはイルバン卿も同様に――
アルム卿には見えた。
若者たちにはなかなか、そそる光景かもな?
アルム卿はシルドの恥知らずな行為にこの御方も命知らずだ、そう思う。
エイシャの件もそうだがー‥‥‥やり過ぎれば、この館で全てが終わる可能性がある。
この部屋の裏側にある、大勢の奇妙な雰囲気をアルム卿もシルドも感じ取っていた。
「ええ、大公閣下。
まあ、刺青に足らず、その身分もー‥‥‥いやしい者たちから買い上げるには安いですよ。
良き美酒とも成りうる」
おい、と子爵は後ろに控える数人に合図をする。
何かを見せてやれ。
そう言っているようにもシルドには取れた。
さて、何が出てくるのか‥‥‥?
「ほう‥‥‥いやしい身分か。
この城塞都市アーハンルドにはそのようなものが、まだ多いということかな?
子爵殿」
奴隷かそれとも、周辺の農地の農奴からでも連れてきた者たちか、それとも――
そして、出てきた彼女たちをみた時、
「‥‥‥おい」
シルドが漏らしたその小さな悲鳴に近い問いかけを、アルメンヌの耳は聞き漏らさなかった。
子爵にも少しばかりは聞こえたのだろう。
彼は、どうやら大公閣下も初見ですかな?
まあ、珍しいですからな‥‥‥そう小さく呟いていた。
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