突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第四十話 城塞都市アーハンルドの闇 9

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「ふん‥‥‥。
 見たことがないわけではないが、珍しいな。
 青い尾に耳、青い髪、か。
 瞳が金色に近い茶褐色。
 まあ、高く売れる商材だろう。
 何歳だ?」
 シルドは、鎖を引いてアルメンヌの眼前に引き寄せたその獣人の少女に問いかける。
 演技か本心か。 
 その瞳の中に自分たちの境遇に対する憐みなど微塵も感じさせないこの人間の男を見て――
 獣人の少女は悲し気に、瞳を曇らせた。
「あ‥‥‥じゅ――」
 その問いに答えようと口を開くと同時に、シルドは少女の小ぶりな顔を下から掴んだ。
「閉じるなよ?
 舌がそのままなのは頂けんな、子爵。
 言葉が交わせるならどこから漏れ出るか分からん。
 切り取り、己に食させるべきだろう?」
 冷徹なその一言は、子爵以下、その場にいた婦人たちの顏をこわばらせた。
 それはシルド側も同じく。
 アルメンヌとアルム卿がただ、黙ってその行為を見守っていた。
「なっ、いや大公閣下。
 それをすれば、奉仕などー‥‥‥」
 奉仕?
 なにを奉仕させるつもりだ?
 シルドは鎖を放し、アルメンヌを抱き上げたまま、獣人の少女の口腔内に指先を入れ、舌をつかむ。
「ひっ‥‥‥!?」
「いいから、黙れ?
 いいな?」
 悲鳴を上げそれでもうなづく相手に舌を出せと命じて彼はそれを、子爵に見せる。
「おい、子爵。
 このザラついたもので、なにを奉仕すると?
 見たところ、獣人族に多い、蒼狼の娘かと思ったが‥‥‥その傍流?
 純粋な獣人ではないな?
 人間と交わった亜人になり、その母体に見放されたか。
 それとも、その国を人間側が滅ぼしたか。
 いや、違うか‥‥‥」
 シルドの知る限り、例え傍流となっても血族は血族だ。
 その国が人間族との戦いの矛先を交えれば、南方大陸で大きな戦争の火種になるはず。
「主人の一族が、子供を売りにだしたのか、子爵?
 南方でも新興国の勃興は多いと聞く。
 戦争の資金集めに、戦力とならない女子供の傍流から売りに出しているかそれともー‥‥‥?」
 まあ、この城塞都市アーハンルドは大公領の主都に近い城塞都市。
 最前線ではなく、中継防衛拠点のここにこんな品物が流れ着くことが不可解だ。
「さすがは大公閣下‥‥‥。
 お見事な慧眼でございますな――。
 いかにも、その戦火の中で養いきれなくなった末端の部族の――娘たちです。
 十八以上になりますと成人して躾に困りますからな。
 十二~十四の幼い者を集めております。
 ただし、外見はその通り‥‥‥」
「ああ、確かにな。
 幼いとは言え、人間で言えば成熟している女性とも見えなくはない。
 多いのか?」
「は‥‥‥?」
「だから、扱う量は多いのか、そう聞いている。
 こんな土地に、それほど多くを密輸はできないだろう?
 外洋向け商船の船倉下に、いかに水を出し入れする空間があるとはいえ、だ?
 なあ、子爵?」

 ユニスが初めて船長と出会った時に、実家からの輿入れ品を隠した話がいまになって生きて来るとは。
 物事はどう回るのかわからんものだ。
 シルドは心でそう呟いていた。
「もういいぞ。
 ここに来い」
 左にアルメンヌ、右に獣人の少女。
 両膝上に抱きあげて、シルドは満円の笑みを浮かべる。
 その手が腰から上に上がる素振りを見せると、獣人の少女は恥ずかしさに顔を背けていた。
「いいな、抱き心地は悪くはない。
 だが、舌は要らんな。
 で、数は?
 子爵、それほどの頭数をここで飼うわけにもいくまい?」
 せいぜい、よくて数十?
 しかし、子爵の返事はその予想を上回るものだった。

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