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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第四十三話 城塞都市アーハンルドの闇 12
しおりを挟む「気味が悪いわね‥‥‥」
アルメンヌは馬車から降りたあと、宿屋の自室に三人の獣人の少女を連れ込んだシルドの部屋を見あげて、一階の食堂で夕飯を食していた。
アルアドル卿がその隣に座り、左側にはアルム卿が。
両脇から彼女を守護するように座り、イルバン卿はテーブルの隅に居心地悪そうに座り食事をしていた。
「まったくですね、藪をつついてとんでもない蛇がでた気分です‥‥‥」
アルアドル卿はシルドに役立たず、そう子爵家で言われたことがまだショックらしい。
胸元が大きく開き、自分の左側には豊満な胸と艶やかな太ももをさらした衣装のアルメンヌがいる。
それもまた、この若き騎士の心を高鳴らせていた。
「本当にね、あんな子達。
傭兵時代にも見たことなかったわ。
おまけに妾にするなんて。
今頃、どんなお楽しみをしているのかしら‥‥‥?」
「いえ、それは‥‥‥僕の口からはー」
ふうん?
その割には視線がいろいろと注がれているようだけど?
まあ、若いものね。
弟がもしいれば、こんな年齢なのかな?
アルメンヌはふと、妹たちのことを思い出した。
エイシャに助けを求め自分は救われたとはいえ、家族は無事なのか。
その辺りの事はエイシャではなく、ユニスがどうにかしてくれるとは言われたものの心の中では不安がある。
「家族、ね‥‥‥あの、獣人たちはどうなのかしらね?
シルド様は一人で兵士十人。
そう言っていたわ。
そんな手合いが、この都市のあの屋敷に二百人、ねえ?」
傍らのアルム卿は渋い顔をする。
現大公ではなく、帝国宰相にこの事実を報告すべきかどうか。
それを測りかねていた。
「ねえ、ギース。
あなたはどう思うの?
前線から離れたわたしでもあんな獣人の話はついぞ、耳に入らなかったわよ?
これでも高家の砦の一つを任されていたというのにね‥‥‥」
向かう席の赤毛の騎士は対面する彼女の衣装に視線のやり場に困りながら、考えていた。
それは帝国全体を踏まえたことであり――彼の本当の主人だのなんだのという感情はいまは控えていた。
「難しいな。
何より、こんな田舎の城塞都市アーハンルドだ。
ここがまだ先々代様辺りの内乱期ならばともかく、現皇帝の御代では王国・枢軸という強豪がいるとはいえ、戦場の要害の価値はない。
そこを逆に利用するのはまあ、いいとしてだ」
「良くはないがな、イルバン卿。
それでなくても、ここを拠点にする。
その視点が子爵などに生まれる者かな?」
アルム卿は問題はここからだと、そう言った。
「そうですな、アルム卿‥‥‥。
二百ものあの奴隷をどうやって運搬したか、そして繁殖能力が強いという話も出た。
一人で兵士十人、か。
二年もあれば立派な一軍が出来ましょうな。
反帝国・反大公家。
その際に責任を求められるのは――」
アルアドル卿はようやく理解したかのように呟いた。
「それなら、いま一番危ないのは――シルド様!?」
ガタっと席を立とうとして彼はしかし、アルメンヌとアルム卿、イルバン卿に止められる。
「御三方、なぜ!?」
若き騎士とは違い、三者は意外と余裕を持ってそこに座っていた。
「落ち着けよ、アルアドル卿。
あの大公閣下がなんの策もなしに一人で虎口に入るものかよ。
おまけに明日は?」
イルバン卿がもう夜を迎えようとしている窓の外をみて彼に問いかける。
「あ‥‥‥週末ー‥‥‥」
そういうことだ。
アルム卿とイルバン卿はまあ、無事に戻ればいいがな?
そんな顔をしていた。
しかし、アルメンヌはまた一人になるかと思うと‥‥‥はやり、殺されかけた記憶がよみがえる。
つい、そうと当人も知ってか知らずか。
彼女はアルアドル卿の腕をしっかりと両腕で握りしめていた。
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