突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第四十七話 真紅の魔女ミレイアの微笑 4

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「獣人‥‥‥」
 湯浴みに案内しなさいと、エイシャは侍女たちに指示をだし、シルドがその前に彼女たちから外した鎖だの、首輪だの手枷足枷だの。
 そんな物を、片手で掴んでエイシャはため息をついていた。
「ねえ、シルド。
 なぜ、あなたはこんなにもトラブルを引き寄せて来るの?
 それとも、自分から招いているの?」
 ぶらんと首輪をつまみ上げ、こんなのをつけさせたいのかしら、殿方は?
 そんなことまで考えてしまう始末だ。
「いきなり、シルドになるのは、なんでだプロム‥‥‥」
「だって、もうじきあの子達が戻ってくるんでしょ?
 そんな時に親しい呼び名なんか聞かせたくないわ。
 いいえ、聞かれたくないの。
 首輪ねえ‥‥‥」
 つけたら彼の態度も変わるかしら?
 エイシャは自分の首回りには大きいな。
 そう思い、シルドの喉元をじっと見つめてみた。
「何かな、奥様?
 その、獲物を見つけたような視線は‥‥‥!?」
 シルドは嫌な予感を感じ取っていた。
「いえ、これをつければ少しは――わたしだけのものになるかなと思いまして。
 どこかの大公閣下が‥‥‥ね?」
「既に誰かの物だけになっていると思うのだが‥‥‥」
 そうですかー。
 誰かの物にねえ‥‥‥
 エイシャはなら、自分につけたら少しは、いや、もっと彼の気が向くかしら?
 そんなことを思い、
「なら、わたしがこれをつければ、もっと興奮する?
 それとも、支配欲が出る?
 ねえ、シルド。
 あの一人が妾になりましたなんて言ってたのだけど?
 それにー‥‥‥」
 その胸元のポケットからは、シルドが危惧していたアルメンヌからの報告書が‥‥‥
「魔導って便利なものですわねえ、旦那様?
 俺だけのアルメンヌ?
 ばかを演じるために胸を触られた、あの衣装の裾を大きく広げられた。
 大好きだ、大事な女だと言われた。
 迫ったら抱いてくれた‥‥‥」
 つらつらとそれを読み上げるエイシャは、そういえばとシルドが思い返してみれば。
 あの剣はどこに行った?
 確か、騎士たちに戻したはずだが、再度、鞘ごと手にしていたような――
「なんとなく、命の危険を感じるのは‥‥‥」
「ええ、そうですわね。
 抱いたのですか?」
 シルドは違うっ、と首を振る。
「抱きしめただけだ、膝上に乗せて演技で俺だけのアルメンヌになれ、と――」
 ああ、まずい。
 なぜ、こうも失言ばかりが先に立つ!?
 焦る夫はまあ、浮気をしたかったわけではないらしい。
 エイシャは胸の内では、それを感じていた。
 しかし、
「まあ、いいんですよ、シルド様?
 僕が俺になり、遊び人になったところで。
 そうですね、側室も必要ですし。
 アルメンヌに、あの獣人三匹?
 三人?
 見た目も綺麗ですものね?
 あーあ‥‥‥、あの夜のあなたはどこまでも愚か者を演じていたけど。
 そのあとのあの、馬小屋の日々は幸せだったのに。
 殿方はちょっと、目を放し自由が手に入ると‥‥‥はあ」
 プロムは悲しいです。
 あなただけに愛を捧げているのに。
 そう、エイシャは演技のようにして部屋を出て行こうとする。
「おい、まて!?
 どこに行く気だ!!??」
 だって、とエイシャは振り返った。
「ここは夫婦の寝室ですけど。
 抱けない正妻なんて、無用の長物。
 妾を三人相手にするにはちょうどいい広さでしょう、シルド?
 わたしは、使用人の部屋で寝ますわ――」
 愛を語ってくれる、大公家の騎士団の誰かと浮気でもしようかしら。
 心の中ではさっさと抱きしめに来なさいよ、バカシルド!!
 そう叫んでいるのに彼は一向に動く気配がない。
 おかしいな?
 そう思いふりかえると、いつにもなく真剣に悩んでいるシルドがいた。
「旦那様‥‥‥?」
 やりすぎた?
 そう思った時だ。
「わかった。
 では、出て行くがいい。
 あの旅も、アルメンヌの件も。
 三人の側室だのという話も。
 お前なら全部、何が本当で嘘かを理解してくれると信じていた。
 悲しいよ‥‥‥」
 え、ちょっと!?
 筋書きと違うじゃない!!
 エイシャは焦って、シルドに――
「な?
 こう言うと、お前はすぐにぼろを出す。
 僕を遊ぶならもう少しうまくやれよ、愛しているぞ。
 僕だけのプロム」
 そして待っていたのは熱い抱擁と――キスだ。
「オーベルジュのばか‥‥‥」
 はたからもし誰かが見ていたら、いい加減にしろ。
 そう文句を言いたくなるような夫婦の甘い会話と週末はこうして始まったのだった。
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