138 / 150
新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第五十六話 南方大陸の隠された秘密 1
しおりを挟む
「あんまりです、なんでこのようなことを‥‥‥。
殺すのならばなぜ妾など、なぜ!!??」
リムを見たリザは慟哭する。
テーブルの上に載せられた、皿の上にある妹の首。
戦いで負けたならまだ納得も良く。
リムが男で戦士なら、それも仕方がない。
奴隷として売られ、ここに逃げ場もなく連れて来られその上、氏族解放までうたっておきながら。
人間は信用してはならない。
あの教えは本当だった‥‥‥
リザは涙をこらえて立ち上がった。
「あなた様たちが我らの主と言われるならば、それには従います。
でもー‥‥‥不名誉な嘘で塗り固めた主従ならばーたとえ逆臣と言われようともこの血でその盟約を塗り替えてやる!!」
牙をむき、爪が遠慮なく相手を切り裂けるほどに伸びた時。
エイシャはかかってくるなら来なさいよ。
そう、剣を抜こうとしていたが‥‥‥場の流れを止めたのはコックのたった一言だった。
「やり過ぎですよ、奥様。
ほら、もういいぜ、お嬢ちゃん。
香辛料だのなんだのの臭いで、御仲間さんも生きてるかどうかわからんのだろうな。
起きれるかい?」
「‥‥‥は――???」
先程までの勢いはどこに消えたのやら。
勢いを削がれたリザは、移動式の台の下から引き出された部分に寝そべっていただけだった。
ただ、顔を上に空いた穴から出していただけ‥‥‥
「ちょっと、まだ見せたらだめでしょ!?
もっと恐怖を――」
「奥様!!
それは大公様への信頼を損ねますぜ?
だいたい、この時間に起こされてるこっちの身にもなってくださいよ。
本家から連れてこられてこんな役回り。
俺がどれだけ、このリザさんに謝り、手を着いてお願いしたと思っているんですか。
エイシャ!!」
このコックはエシャーナ伯時代からの親睦のある料理人を招いたものだ。
過去には多くの大陸を周り、傭兵として過ごした時期もあるという彼は、まだ獣人の扱いになれていた。
「そ、それはー‥‥‥だって、わたしだって多くの情報が――」
口ごもるエイシャは、このコックには弱かった。
幼い頃から、兄のように慕ってきた一面もあるからだ。
「情報が欲しいなら、素直に聞けばいいでしょう?
言えないなら言えるような何かを示さなきゃ。
獣人は人間とは違いますよ、奥様。
彼等は血縁もそうですが、戦士としての信頼、言葉よりも行動、愛情を大事にする。
奥様だってー‥‥‥シルド様にこんな真似させたくはないでしょ?」
「だから、旦那様が妾の席をと――」
シルドとそこに抱かれているダリアに視線をやり、ダリアの険悪な視線を受けてエイシャはコックに向き直る。
そこに抱き合ってないている姉妹を見て、罪悪感が沸かないはずがない。
ただ、嫉妬でしたのかと言われれば‥‥‥
「その席を壊したのも奥様ですねえ?
なあ、お前ら?
散々、勘違いでもなさそうだが剣で殴られたなんて言ってたもんな?」
コックは傍らの騎士を促した。
彼も、間違いない。
あの剣は大変、痛い物でした。
そういうものだから、エイシャは独り、悪者になった感覚を抱いてしまう。
「なによ、だいたい、シルドが!!
オーベ‥‥‥」
言い終わるまえに、どうやったのかその相手が彼女をひょいと抱き上げていた。
「ああ、そうだな。
妻よ、この愚かな夫を許しておくれ。
お前に悪役を演じさせて、こんな場を張ったのも僕だ。
ダリア、リザ、リム。
恨みは僕に向けてくれよ?
女同士、これから長い間、家族としてやっていくんだからな?」
ソファーのうえにちょこんと座らされているダリアは信じられない。
そんな拒否感をしていた。
それは他の二人も同様だ。
ここは僕らだけではどうしようもないのかな?
シルドが妾だのそういうもので釣ろうとしたのは間違った選択だったのか?
「どう思う?
もう無理か?」
「無理か、とはどういう御意思ですか‥‥‥?」
リムとリザは返答に困り、ダリアはどうにか理性を保って話ができるようだ。
「どういう御意思もなにも。
側室にはする。
あの城塞都市アーハンルドに氏族を招き、土地を移動することになるが住むがいい。
戦争を誘致する気はないがな‥‥‥。
それではだめか?」
「そんなお言葉、信じろ、と?」
ダリアはリムが寝かされていた台車を指差した。
あのような事をされて誰があなたを信じると思いますか?
そう、言いたいようだった。
「しかし、その心の内に秘めた策謀は僕には話してくれないしな?
なあ、ダリア?
どうすればいいのだ?」
話せることと出来ないことがある。
ここで話したことが漏れれば‥‥‥
「戻らなくてもいいがな。
だが、それでも招く手段はあるが。
お前たちの身の安全を保障すればいいのか?」
しかし、ダリアは無言でふいっと外を向いてしまう。
困ったな‥‥‥シルドとエイシャのやり取りに及ばずながら。
そう申し出てきたのはあのコックだった。
「旦那様、奥様。
どちらにせよ、もう出来上がったんですよこの料理。
冷めたあとでも美味しいとは思いますがね?
腹が減るのは、人種関係ないんじゃないですか?」
そう言い、彼が見せた台車上の料理の多さにその香り‥‥‥
三人の少女たちのお腹は、本人の意に反して鳴ったのだった。
殺すのならばなぜ妾など、なぜ!!??」
リムを見たリザは慟哭する。
テーブルの上に載せられた、皿の上にある妹の首。
戦いで負けたならまだ納得も良く。
リムが男で戦士なら、それも仕方がない。
奴隷として売られ、ここに逃げ場もなく連れて来られその上、氏族解放までうたっておきながら。
人間は信用してはならない。
あの教えは本当だった‥‥‥
リザは涙をこらえて立ち上がった。
「あなた様たちが我らの主と言われるならば、それには従います。
でもー‥‥‥不名誉な嘘で塗り固めた主従ならばーたとえ逆臣と言われようともこの血でその盟約を塗り替えてやる!!」
牙をむき、爪が遠慮なく相手を切り裂けるほどに伸びた時。
エイシャはかかってくるなら来なさいよ。
そう、剣を抜こうとしていたが‥‥‥場の流れを止めたのはコックのたった一言だった。
「やり過ぎですよ、奥様。
ほら、もういいぜ、お嬢ちゃん。
香辛料だのなんだのの臭いで、御仲間さんも生きてるかどうかわからんのだろうな。
起きれるかい?」
「‥‥‥は――???」
先程までの勢いはどこに消えたのやら。
勢いを削がれたリザは、移動式の台の下から引き出された部分に寝そべっていただけだった。
ただ、顔を上に空いた穴から出していただけ‥‥‥
「ちょっと、まだ見せたらだめでしょ!?
もっと恐怖を――」
「奥様!!
それは大公様への信頼を損ねますぜ?
だいたい、この時間に起こされてるこっちの身にもなってくださいよ。
本家から連れてこられてこんな役回り。
俺がどれだけ、このリザさんに謝り、手を着いてお願いしたと思っているんですか。
エイシャ!!」
このコックはエシャーナ伯時代からの親睦のある料理人を招いたものだ。
過去には多くの大陸を周り、傭兵として過ごした時期もあるという彼は、まだ獣人の扱いになれていた。
「そ、それはー‥‥‥だって、わたしだって多くの情報が――」
口ごもるエイシャは、このコックには弱かった。
幼い頃から、兄のように慕ってきた一面もあるからだ。
「情報が欲しいなら、素直に聞けばいいでしょう?
言えないなら言えるような何かを示さなきゃ。
獣人は人間とは違いますよ、奥様。
彼等は血縁もそうですが、戦士としての信頼、言葉よりも行動、愛情を大事にする。
奥様だってー‥‥‥シルド様にこんな真似させたくはないでしょ?」
「だから、旦那様が妾の席をと――」
シルドとそこに抱かれているダリアに視線をやり、ダリアの険悪な視線を受けてエイシャはコックに向き直る。
そこに抱き合ってないている姉妹を見て、罪悪感が沸かないはずがない。
ただ、嫉妬でしたのかと言われれば‥‥‥
「その席を壊したのも奥様ですねえ?
なあ、お前ら?
散々、勘違いでもなさそうだが剣で殴られたなんて言ってたもんな?」
コックは傍らの騎士を促した。
彼も、間違いない。
あの剣は大変、痛い物でした。
そういうものだから、エイシャは独り、悪者になった感覚を抱いてしまう。
「なによ、だいたい、シルドが!!
オーベ‥‥‥」
言い終わるまえに、どうやったのかその相手が彼女をひょいと抱き上げていた。
「ああ、そうだな。
妻よ、この愚かな夫を許しておくれ。
お前に悪役を演じさせて、こんな場を張ったのも僕だ。
ダリア、リザ、リム。
恨みは僕に向けてくれよ?
女同士、これから長い間、家族としてやっていくんだからな?」
ソファーのうえにちょこんと座らされているダリアは信じられない。
そんな拒否感をしていた。
それは他の二人も同様だ。
ここは僕らだけではどうしようもないのかな?
シルドが妾だのそういうもので釣ろうとしたのは間違った選択だったのか?
「どう思う?
もう無理か?」
「無理か、とはどういう御意思ですか‥‥‥?」
リムとリザは返答に困り、ダリアはどうにか理性を保って話ができるようだ。
「どういう御意思もなにも。
側室にはする。
あの城塞都市アーハンルドに氏族を招き、土地を移動することになるが住むがいい。
戦争を誘致する気はないがな‥‥‥。
それではだめか?」
「そんなお言葉、信じろ、と?」
ダリアはリムが寝かされていた台車を指差した。
あのような事をされて誰があなたを信じると思いますか?
そう、言いたいようだった。
「しかし、その心の内に秘めた策謀は僕には話してくれないしな?
なあ、ダリア?
どうすればいいのだ?」
話せることと出来ないことがある。
ここで話したことが漏れれば‥‥‥
「戻らなくてもいいがな。
だが、それでも招く手段はあるが。
お前たちの身の安全を保障すればいいのか?」
しかし、ダリアは無言でふいっと外を向いてしまう。
困ったな‥‥‥シルドとエイシャのやり取りに及ばずながら。
そう申し出てきたのはあのコックだった。
「旦那様、奥様。
どちらにせよ、もう出来上がったんですよこの料理。
冷めたあとでも美味しいとは思いますがね?
腹が減るのは、人種関係ないんじゃないですか?」
そう言い、彼が見せた台車上の料理の多さにその香り‥‥‥
三人の少女たちのお腹は、本人の意に反して鳴ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました
冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。
一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。
もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。
ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。
しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。
エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。
そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。
「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。
エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。
ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。
※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる