突然ですが、侯爵令息から婚約破棄された私は、皇太子殿下の求婚を受けることにしました!

星ふくろう

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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~

第五十六話 南方大陸の隠された秘密 1

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「あんまりです、なんでこのようなことを‥‥‥。
 殺すのならばなぜ妾など、なぜ!!??」
 リムを見たリザは慟哭する。
 テーブルの上に載せられた、皿の上にある妹の首。
 戦いで負けたならまだ納得も良く。
 リムが男で戦士なら、それも仕方がない。
 奴隷として売られ、ここに逃げ場もなく連れて来られその上、氏族解放までうたっておきながら。
 人間は信用してはならない。
 あの教えは本当だった‥‥‥
 リザは涙をこらえて立ち上がった。
「あなた様たちが我らの主と言われるならば、それには従います。
 でもー‥‥‥不名誉な嘘で塗り固めた主従ならばーたとえ逆臣と言われようともこの血でその盟約を塗り替えてやる!!」
 牙をむき、爪が遠慮なく相手を切り裂けるほどに伸びた時。
 エイシャはかかってくるなら来なさいよ。
 そう、剣を抜こうとしていたが‥‥‥場の流れを止めたのはコックのたった一言だった。
「やり過ぎですよ、奥様。
 ほら、もういいぜ、お嬢ちゃん。
 香辛料だのなんだのの臭いで、御仲間さんも生きてるかどうかわからんのだろうな。
 起きれるかい?」
「‥‥‥は――???」
 先程までの勢いはどこに消えたのやら。
 勢いを削がれたリザは、移動式の台の下から引き出された部分に寝そべっていただけだった。
 ただ、顔を上に空いた穴から出していただけ‥‥‥
「ちょっと、まだ見せたらだめでしょ!?
 もっと恐怖を――」
「奥様!!
 それは大公様への信頼を損ねますぜ?
 だいたい、この時間に起こされてるこっちの身にもなってくださいよ。
 本家から連れてこられてこんな役回り。
 俺がどれだけ、このリザさんに謝り、手を着いてお願いしたと思っているんですか。
 エイシャ!!」
 このコックはエシャーナ伯時代からの親睦のある料理人を招いたものだ。
 過去には多くの大陸を周り、傭兵として過ごした時期もあるという彼は、まだ獣人の扱いになれていた。
「そ、それはー‥‥‥だって、わたしだって多くの情報が――」
 口ごもるエイシャは、このコックには弱かった。
 幼い頃から、兄のように慕ってきた一面もあるからだ。
「情報が欲しいなら、素直に聞けばいいでしょう?
 言えないなら言えるような何かを示さなきゃ。
 獣人は人間とは違いますよ、奥様。
 彼等は血縁もそうですが、戦士としての信頼、言葉よりも行動、愛情を大事にする。
 奥様だってー‥‥‥シルド様にこんな真似させたくはないでしょ?」 
「だから、旦那様が妾の席をと――」
 シルドとそこに抱かれているダリアに視線をやり、ダリアの険悪な視線を受けてエイシャはコックに向き直る。
 そこに抱き合ってないている姉妹を見て、罪悪感が沸かないはずがない。
 ただ、嫉妬でしたのかと言われれば‥‥‥
「その席を壊したのも奥様ですねえ?
 なあ、お前ら?
 散々、勘違いでもなさそうだが剣で殴られたなんて言ってたもんな?」
 コックは傍らの騎士を促した。
 彼も、間違いない。
 あの剣は大変、痛い物でした。
 そういうものだから、エイシャは独り、悪者になった感覚を抱いてしまう。
「なによ、だいたい、シルドが!!
 オーベ‥‥‥」
 言い終わるまえに、どうやったのかその相手が彼女をひょいと抱き上げていた。
「ああ、そうだな。
 妻よ、この愚かな夫を許しておくれ。
 お前に悪役を演じさせて、こんな場を張ったのも僕だ。
 ダリア、リザ、リム。
 恨みは僕に向けてくれよ?
 女同士、これから長い間、家族としてやっていくんだからな?」
 ソファーのうえにちょこんと座らされているダリアは信じられない。
 そんな拒否感をしていた。
 それは他の二人も同様だ。
 ここは僕らだけではどうしようもないのかな?
 シルドが妾だのそういうもので釣ろうとしたのは間違った選択だったのか?
「どう思う?
 もう無理か?」
「無理か、とはどういう御意思ですか‥‥‥?」
 リムとリザは返答に困り、ダリアはどうにか理性を保って話ができるようだ。
「どういう御意思もなにも。
 側室にはする。
 あの城塞都市アーハンルドに氏族を招き、土地を移動することになるが住むがいい。
 戦争を誘致する気はないがな‥‥‥。
 それではだめか?」
「そんなお言葉、信じろ、と?」
 ダリアはリムが寝かされていた台車を指差した。
 あのような事をされて誰があなたを信じると思いますか?
 そう、言いたいようだった。
「しかし、その心の内に秘めた策謀は僕には話してくれないしな?
 なあ、ダリア?
 どうすればいいのだ?」
 話せることと出来ないことがある。
 ここで話したことが漏れれば‥‥‥
「戻らなくてもいいがな。
 だが、それでも招く手段はあるが。
 お前たちの身の安全を保障すればいいのか?」
 しかし、ダリアは無言でふいっと外を向いてしまう。
 困ったな‥‥‥シルドとエイシャのやり取りに及ばずながら。
 そう申し出てきたのはあのコックだった。
「旦那様、奥様。
 どちらにせよ、もう出来上がったんですよこの料理。
 冷めたあとでも美味しいとは思いますがね?
 腹が減るのは、人種関係ないんじゃないですか?」
 そう言い、彼が見せた台車上の料理の多さにその香り‥‥‥
 三人の少女たちのお腹は、本人の意に反して鳴ったのだった。
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