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二章 領域と支配
支配後 4
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「さて……早瀬。早速で悪いが、俺の命令を聞いてくれ」
俺の言葉に、早瀬 碧は目を伏せて唇を噛む様子を見せる。
「わ、わかりました……」
彼女はそう言うと……自身の長袖のTシャツの裾を掴み、それを捲り始め——。
その様子を見た俺は慌てて叫ぶ。
「お、おい!何してる!」
俺の声に早瀬は驚き、その手を止めて俺へ不思議そうな目を向ける。
……ま、まさかさっきの発言を勘違いしてるのか?あれは誤解だ!
「……あの時服を脱げと言ったのは例えだ。お前の覚悟がどれだけのものかを試したんだよ。それと念のため言っておくが、俺はそういった事を要求するつもりは無いからな!」
早瀬は慌てて裾を戻し、顔を真っ赤にする。
「い、言い方が悪いです!あんな風に言われたら、誰だって勘違いしますよ!」
「それは……まあ、俺のミスだ。だ、だがな!そのまま何も言わずに服を脱ごうとする方もどうかしてるぞ!もっと自分を大切にしろ!」
「あれだけ威圧しててよく言えますね!あの時、私がどれだけ怖かったと……っ! それでも、死ぬよりはましと覚悟はしました!でも経験の無い……あっ」
……どうやらこの子は突っ走りぎみな所が有るようだ。安心したせいか暴走して、言わなくていい情報を口走っている。
俺は額に手を当ててため息を吐く。横目に見ると爺さんは笑いを堪えていたのか両手で口を押さえて体を震わせていた。
「あ……あぅ……」
早瀬は顔を耳まで真っ赤にしながら口をパクパクしている。
見た目から大人しい性格かと思ったが、この状況で一ヶ月も生き抜く程だ。流石に精神的にも強くなるか。まあそっちの方はうぶなようだが。
「まあ……俺は灰間 暁門だ。早瀬、これから宜しく頼む」
「うぅ……恥ずかしくて死にたい」
ここまで生きといてこんなんで死ぬなよ……。
こうして支配領域に三人目となる 早瀬 碧が加わった。
♦︎
そして俺が早瀬に命令しようとしていた事へと話は戻る。
あの時頼もうと思った事、それは……料理。贅沢な話だが、流石に弁当生活にも飽きてきた。それに人が増えるのを考えれば、野菜を解除して作った方が魔石の消費が少ない。
俺と爺さんの料理の腕は精々チャーハンとは言えない、ただ食材を炒めた飯程度。そこで早瀬に頼もうとしたのだ。
「……意外と上手だな」
「……美味しそうじゃのう」
俺と爺さんはその料理を感心したように眺める。早瀬はそれを見て呆れながら話す。
「意外ってのは余計だと思いますよ?それに命令っていうから身構えたのに、それが料理って……」
「いや、今後を考えれば大事な事だ。飯が美味ければそれだけで全体的なモチベーションは上がる」
ガスコンロなどの解除で魔石は消費したが、必要な出費と割り切る。けれど、魔石の貯蓄は減ってきている。更にこのダンジョン化したスーパーが無くなったせいで、まとまった魔石を集めるのも難しくなった。
ダンジョン化したスーパーと、他のダンジョン化した施設が近い場所が拠点としては理想かもしれない。やはり、この場所は早めに見切りをつけて移動を考えるべきだろう。
そして早瀬の料理についての感想は、見た目の通りに美味かった。これだけで仲間に入れて正解だったかもしれないと思ってしまった。
「美味かった……」
食事を終えてだらけている俺を見て、早瀬は意外そうに俺を見てくる。
「俺の顔に何か付いてるのか?どうしたんだ?」
「いえ、灰間さんが思ったより普通の人なんだなって……。最初のイメージだと、ちょっと怖くて」
俺は沙生さんがいなくなってから口調が強めになるよう意識している。もし下に見られて相手が強気になれば、損するのは俺だ。なら、最初から強気で相手と接した方が早い。
勿論相手は不快に思うだろうが、そんな事はもう気にしないつもりだ。それでも爺さんへの態度は少し軟化しているが。
ただ会ったばかりの早瀬にそう思われるのは不味い。これからもっと気を遣わなければ。
「小僧の根本は普通の人と変わらんよ。芸能人のように性格を作っとるんじゃ無いかのう」
「何言ってるんだ?俺は元々こんな性格だ。俺の目的の為なら誰だろうが利用してやる」
「……そう言う事にしておきますね」
「そうじゃのう」
コイツら……!絶対にいつか後悔させてやるからな。笑い合って話す二人を横目に俺はそう心に誓った。
俺の言葉に、早瀬 碧は目を伏せて唇を噛む様子を見せる。
「わ、わかりました……」
彼女はそう言うと……自身の長袖のTシャツの裾を掴み、それを捲り始め——。
その様子を見た俺は慌てて叫ぶ。
「お、おい!何してる!」
俺の声に早瀬は驚き、その手を止めて俺へ不思議そうな目を向ける。
……ま、まさかさっきの発言を勘違いしてるのか?あれは誤解だ!
「……あの時服を脱げと言ったのは例えだ。お前の覚悟がどれだけのものかを試したんだよ。それと念のため言っておくが、俺はそういった事を要求するつもりは無いからな!」
早瀬は慌てて裾を戻し、顔を真っ赤にする。
「い、言い方が悪いです!あんな風に言われたら、誰だって勘違いしますよ!」
「それは……まあ、俺のミスだ。だ、だがな!そのまま何も言わずに服を脱ごうとする方もどうかしてるぞ!もっと自分を大切にしろ!」
「あれだけ威圧しててよく言えますね!あの時、私がどれだけ怖かったと……っ! それでも、死ぬよりはましと覚悟はしました!でも経験の無い……あっ」
……どうやらこの子は突っ走りぎみな所が有るようだ。安心したせいか暴走して、言わなくていい情報を口走っている。
俺は額に手を当ててため息を吐く。横目に見ると爺さんは笑いを堪えていたのか両手で口を押さえて体を震わせていた。
「あ……あぅ……」
早瀬は顔を耳まで真っ赤にしながら口をパクパクしている。
見た目から大人しい性格かと思ったが、この状況で一ヶ月も生き抜く程だ。流石に精神的にも強くなるか。まあそっちの方はうぶなようだが。
「まあ……俺は灰間 暁門だ。早瀬、これから宜しく頼む」
「うぅ……恥ずかしくて死にたい」
ここまで生きといてこんなんで死ぬなよ……。
こうして支配領域に三人目となる 早瀬 碧が加わった。
♦︎
そして俺が早瀬に命令しようとしていた事へと話は戻る。
あの時頼もうと思った事、それは……料理。贅沢な話だが、流石に弁当生活にも飽きてきた。それに人が増えるのを考えれば、野菜を解除して作った方が魔石の消費が少ない。
俺と爺さんの料理の腕は精々チャーハンとは言えない、ただ食材を炒めた飯程度。そこで早瀬に頼もうとしたのだ。
「……意外と上手だな」
「……美味しそうじゃのう」
俺と爺さんはその料理を感心したように眺める。早瀬はそれを見て呆れながら話す。
「意外ってのは余計だと思いますよ?それに命令っていうから身構えたのに、それが料理って……」
「いや、今後を考えれば大事な事だ。飯が美味ければそれだけで全体的なモチベーションは上がる」
ガスコンロなどの解除で魔石は消費したが、必要な出費と割り切る。けれど、魔石の貯蓄は減ってきている。更にこのダンジョン化したスーパーが無くなったせいで、まとまった魔石を集めるのも難しくなった。
ダンジョン化したスーパーと、他のダンジョン化した施設が近い場所が拠点としては理想かもしれない。やはり、この場所は早めに見切りをつけて移動を考えるべきだろう。
そして早瀬の料理についての感想は、見た目の通りに美味かった。これだけで仲間に入れて正解だったかもしれないと思ってしまった。
「美味かった……」
食事を終えてだらけている俺を見て、早瀬は意外そうに俺を見てくる。
「俺の顔に何か付いてるのか?どうしたんだ?」
「いえ、灰間さんが思ったより普通の人なんだなって……。最初のイメージだと、ちょっと怖くて」
俺は沙生さんがいなくなってから口調が強めになるよう意識している。もし下に見られて相手が強気になれば、損するのは俺だ。なら、最初から強気で相手と接した方が早い。
勿論相手は不快に思うだろうが、そんな事はもう気にしないつもりだ。それでも爺さんへの態度は少し軟化しているが。
ただ会ったばかりの早瀬にそう思われるのは不味い。これからもっと気を遣わなければ。
「小僧の根本は普通の人と変わらんよ。芸能人のように性格を作っとるんじゃ無いかのう」
「何言ってるんだ?俺は元々こんな性格だ。俺の目的の為なら誰だろうが利用してやる」
「……そう言う事にしておきますね」
「そうじゃのう」
コイツら……!絶対にいつか後悔させてやるからな。笑い合って話す二人を横目に俺はそう心に誓った。
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