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291.平凡って何なんでしょう。
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「‥それは誓約士としては喜ばしくないことですね」
コリンは、とっさにこころに浮かんだことをそのまま口にしてしまった。
だって、‥それほど驚いたから。
アン先輩が僕に話しかけて来るなんて‥
‥ホントに驚いた。
だって、ここでアン先輩と働いてもう三か月になろうとしてるのに‥これが初めての会話って‥なんだ?
コリンは苦笑いしてアン先輩を見た。
「‥それは‥そうだな」
アン先輩が笑った。
ははって。
朗らかな笑顔。
コリンははっとした。
ナナフルさんの上品な微笑や、フタバちゃんの艶やかな微笑‥そういう女性的な微笑とは全然違う。丁度僕の母さんみたいな朗らかな笑顔。
そんな顔で笑ってると‥ますます少年みたいに見えた。
‥母さんは、顔が「王子様」だから、少年っぽくはならないんだよな。「朗らかに笑う活発な王子」って教え子さんたちからは言われてたな‥。
コリンがそんなことを思ってたら、アン先輩はちょっと困った様な顔をして、
「だけど、‥それを言ったらオレの顔もよくない。誓約士どころか‥所見では女とも、‥それどころか大人と認識されたこともない」
って言った。
「おれ」アン先輩の一人称は「おれ」‥女を見せたら侮られる‥とかいう「のっぴきならない意味」があるのやもしれん。なんせ‥ソロの誓約士だから。
そんなことを思ってたらアン先輩が
「オレはこんな風な顔だろ? 身体つきだって女っぽくない。こんな顔で「私は女です」なんて言ったら‥変に相手の記憶に残っちゃうだろ? 「へ~あんな顔してて男の子供みたいなのに女なんだ~」って。‥そしたら良くないだろ? 」
って言ったんだ。
あ~。誓約士として、人の記憶に残るのは良くないから‥所見どおり「少年っぽい口調」で話してるって訳かあ‥。
アン先輩は続けて
「そもそも性別の問題はクリアしても、「子供みたいなのに誓約士なのか」って‥それも悪目立ちするよな」
って言って頭をかいた。
そういうのには‥コリンも覚えがある。
目立ちたくない。‥確かに僕もかってそう思って、ローブを目深にかぶっていたことはある。
そうすればただの子供に見えたから。
夜に動くには目立つけど、昼間だったら子供がうろうろしてるのを気にする人なんていない。
平民だったら、子供だって昼間は働いているから。
商家のお使い、店先の掃除。
子供だってできる仕事は沢山ある。
勿論ただ遊んでいる場合だってある。
この国は案外治安がいいんだ。
‥アン先輩の場合も(僕と同様)子供の振りをすることは簡単でも‥年相応な「大人の女性」に見える様にするのは難しいんだ。
女性であることは諦めても(※ 諦めているかどうかはわからない)アン先輩は(アン先輩の考える)「普通に」「誓約士として」働きたいってシンプルに考えてるんだ。
だけど、自分の容姿では自分が考える様な「普通の」「誓約士として」働くことが難しいって‥
「君も、不合格だな」
はあ‥とため息をついてアン先輩が言った。そして
「全然平凡じゃない」
もう一度コリンをしみじみ見たからそう付け足した。
言いたいことは伝わったけど‥カチーンだ。
確かに僕も標準的な男性としては低身長だよ? だけど、背の低い男性って‥いないわけじゃないよね?!
「‥じゃあ、聞きますけど。平凡ってどんなですかね。
僕は僕の感覚からすれば普通に平凡ですよ? 母親にはあんまり似てないけど、父親そっくりでどう見ても二人の子供って疑いようが無い容姿で「トンビが鷹を産んだ‥! 」って感じじゃないですし! 」
昔近所に住んでいたマリーって女の子は両親のイイトコ取りで産まれたまさに「トンビが鷹を産んだ様な娘」(両親談)で、もう‥二人のマリーに対する思い入れは凄かった。
「この子は絶対将来金持ちのところに嫁に行く! (行かせる! )」
って礼儀作法を習わせたり、綺麗な着物を着せたり、女学院に通わせたり‥明らかに彼女の姉とは違う扱いを彼女にして来た。
結構無理して‥だ。
だけど、結局ちやほやされたことで妹は我が儘な子になってしまって、両親の期待した玉の輿に乗ることはなかった。で、彼女とは逆に一人で努力した姉は親元を離れて王都でそこそこ成功してるらしい。
これを聞いて、トンビは鷹を産んでも舞い上がっちゃダメだなって思ったもんだ。
そもそも、トンビの子は多少毛色が違ってもやっぱりトンビなんだ。鷹の様に育てようってのが無理な話なんだ。だから、「自分の子は所詮トンビの子だ」と、変な期待を抱かない方がいいってことなんだろう。
ああ脱線した。
‥とにかく。
僕にとって平凡ってのは「トンビがトンビを産み」「カエルの子はカエル」って話。
僕は父さんにそっくりな父さんの子だから、僕は平凡そのものなんだ。
そういうことを、コリンはアン先輩に力説した。
アン先輩は黙ってそれを聞き終えてから、
「‥そういう話をしてるんじゃないんだが‥確かに平凡とはなんとも曖昧な表現だな。親と似ているなら平凡。確かにそれは一つの「平凡の基準」やもしれん。
例えば‥「統計学におけるメディアンを平凡とする」っていっても、そんな統計(王国民全体の顔のデータ化)取られてないだろうから「こういうのがメディアン」と言えるものはない‥。
‥成程確かにそうだな」
苦笑いして、頷いた。
アン先輩はどこまでも真面目だった。
その後も二人で「平凡とは」って議論を真剣に交わした。
それは、結構有意義で、面白い時間だった。
平凡な顔。
昔っから僕も平凡って言葉には不満がいっぱいだったんだよね。
「シークさんって平凡な顔」
みたいなこと言った兄さんたちの言葉、今でも忘れてないぞ!
僕にとっては、シークさんは「めちゃ男前」なんだからな!!
そんなことをコリンは思った。
シークさんは‥
目の色がクール! 切れ長の目が色っぽい! 目が細いのも‥セクシー! 顎のラインがシャープ! さらっととは縁遠い硬くって太い髪もカッコイイ! 背が高いのも素敵!
筋肉も‥超‥いい。広い背中サイコー!
ごつごつした太い指も‥かっこいい。実はちょっと不器用なところも可愛い。
ちょっと低めな声もいいんだよね~。
多くを喋らないところとかもう‥超超‥いい!
もう‥ホント、全部いい。
‥なんかもう‥思い出しただけで、恋しくって愛しくって‥もう、泣きそう。
コリンがちょっと泣きそうになっている間に、アン先輩は一人、議論を展開させていた。
「‥案外、どういうのが平凡‥とかじゃなくて‥印象に残らないってのが平凡の平凡たる条件‥っていうか‥」
平均的な大人と比べて多少の誤差くらいなら印象に残らない。
だけど、明らかに低いとか明らかに高いと、印象に残る。
実は美人であるとか不美人であるとかはその人の趣味嗜好が基準になってるから「その人の基準で」「その人の好みに」近ければ、印象に残る。
だけど、それは‥多分そう重要視されない。
「金髪やら銀髪って平民にはそういないから目立つけど、貴族には珍しくないから‥貴族にとってはそう特記事項でもない。
同じく、宝石みたいな碧眼やら緑の目も貴族には珍しくないが、やっぱり平民には珍しい」
貴族だったり、貴族と取引する機会が多い商人だったら上記の様な特徴を持つ人間を見てもそう珍しいとは思わないだろう。だけど、貴族と普段接することのない平民なら‥
「めちゃ綺麗な人に会った‥」
ってその人の印象そのものって位に‥印象に残るだろう。
「それで言ったら、コリンは別に目立つ特徴は無いな。
身長も平均の誤差にとどまってるし、目はきれいだけど、色でいえばそう特徴があるものでもない。髪の色も然りだ。(麦藁の様な金茶は平民にも結構いる)
だけど‥パーツの配置が神過ぎる! そんな整った配置の人間、少なくともオレは今まで見たことない! 」
びしっとコリンを指さしたアン先輩に、コリンは目を見開き、とっさに
「いや、それは嘘だ。僕は少なくとも二人‥いや三人‥神の造形物かって人間を見た。(← ナナフルさん、フタバちゃん、アンバー)一人は、女神みたい(ナナフル)で、もう一人は氷の姫君(フタバ)みたいで、一人は魔王(アンバー)みたいだった! 」
(アン先輩の言葉に)かぶせるように反論した。
アン先輩は驚いて目を見開いた。
ここで、そういう反論が来るとは思ってなかったんだろう。(せいぜい「何言ってるんですか~。そんなことないですよ~」位の反論しか来ないと思ってた‥びっくりした‥)
にしても‥女神? 氷の姫君? ‥魔王?? コリンの周りは人外ばっかりか??
「‥なんだそりゃ‥想像がつかないな。
その三人は日常生活で浮きまくっていたのか? 」
アン先輩が苦笑いする。
コリンは首を振って否定して、
「いいえ。普通に暮らしてました。一人は僕の職場の先輩で、バリバリ働いてたし、もう一人は貴族のお嬢様なんだけど、僕に負けず劣らず魔法オタクでフリーの魔術士として働いてるし、もう一人は‥ナンパな遊び人でした。
でも、全然普通に暮らしてましたよ? 特にちやほやされてる‥とかもなかったし」
真面目な顔でそう言った。
それって‥普通かな。
順番からして、女神がキャリアウーマンで、氷の姫君が魔術オタクなフリーの魔術士で、ナンパな遊び人は‥魔王かな? 魔王だけど、ナンパな遊び人??
絶対浮きまわってるだろ。
「浮いてなかったですよ。この三人には周りに有無を言わせない‥周りを納得させる強さがありました。強さっていうか‥オーラ? そういうのは‥非凡じゃなかったです。
‥そういうところかも。もし、あの三人が自分の容姿に無頓着で全然周りに対してそういう‥警戒線をはってなかったら‥周りからしたら「付け入る隙がある」ってことになるわけじゃないですか。そしたらアプローチしたい‥って興味関心を示すわけでしょ? だけど、その人に付け入る隙すら無かったら‥「最初っから無駄」って分かってそれ以上の興味関心を持たない‥。
平凡じゃない人‥社会から浮いてる人っていうのは、そういう‥自分の周りに対して無頓着で無防備な人間のことを言うのかもしれませんね」
堂々として‥周りに媚びない、屈しない。そういう「自分を持っている人」を周りは、軽く扱いにくい。相手の容姿が非凡‥美人であればなおさら‥。
「堂々として‥周りに媚びない、屈しない‥」
自分はどうだっただろうか。
周りに予防線を張って、おどおどし‥周りにどう見えるだろうかと先回りして「周りにみえる自分を想定し」あらかじめ自分を偽る。
偽りの姿だから、きっと‥浮いていただろうし‥自分もモヤモヤした‥。
「‥自分の気の持ちよう‥かあ‥」
アン先輩はボソッと呟いて、深いため息をついた。
コリンは、とっさにこころに浮かんだことをそのまま口にしてしまった。
だって、‥それほど驚いたから。
アン先輩が僕に話しかけて来るなんて‥
‥ホントに驚いた。
だって、ここでアン先輩と働いてもう三か月になろうとしてるのに‥これが初めての会話って‥なんだ?
コリンは苦笑いしてアン先輩を見た。
「‥それは‥そうだな」
アン先輩が笑った。
ははって。
朗らかな笑顔。
コリンははっとした。
ナナフルさんの上品な微笑や、フタバちゃんの艶やかな微笑‥そういう女性的な微笑とは全然違う。丁度僕の母さんみたいな朗らかな笑顔。
そんな顔で笑ってると‥ますます少年みたいに見えた。
‥母さんは、顔が「王子様」だから、少年っぽくはならないんだよな。「朗らかに笑う活発な王子」って教え子さんたちからは言われてたな‥。
コリンがそんなことを思ってたら、アン先輩はちょっと困った様な顔をして、
「だけど、‥それを言ったらオレの顔もよくない。誓約士どころか‥所見では女とも、‥それどころか大人と認識されたこともない」
って言った。
「おれ」アン先輩の一人称は「おれ」‥女を見せたら侮られる‥とかいう「のっぴきならない意味」があるのやもしれん。なんせ‥ソロの誓約士だから。
そんなことを思ってたらアン先輩が
「オレはこんな風な顔だろ? 身体つきだって女っぽくない。こんな顔で「私は女です」なんて言ったら‥変に相手の記憶に残っちゃうだろ? 「へ~あんな顔してて男の子供みたいなのに女なんだ~」って。‥そしたら良くないだろ? 」
って言ったんだ。
あ~。誓約士として、人の記憶に残るのは良くないから‥所見どおり「少年っぽい口調」で話してるって訳かあ‥。
アン先輩は続けて
「そもそも性別の問題はクリアしても、「子供みたいなのに誓約士なのか」って‥それも悪目立ちするよな」
って言って頭をかいた。
そういうのには‥コリンも覚えがある。
目立ちたくない。‥確かに僕もかってそう思って、ローブを目深にかぶっていたことはある。
そうすればただの子供に見えたから。
夜に動くには目立つけど、昼間だったら子供がうろうろしてるのを気にする人なんていない。
平民だったら、子供だって昼間は働いているから。
商家のお使い、店先の掃除。
子供だってできる仕事は沢山ある。
勿論ただ遊んでいる場合だってある。
この国は案外治安がいいんだ。
‥アン先輩の場合も(僕と同様)子供の振りをすることは簡単でも‥年相応な「大人の女性」に見える様にするのは難しいんだ。
女性であることは諦めても(※ 諦めているかどうかはわからない)アン先輩は(アン先輩の考える)「普通に」「誓約士として」働きたいってシンプルに考えてるんだ。
だけど、自分の容姿では自分が考える様な「普通の」「誓約士として」働くことが難しいって‥
「君も、不合格だな」
はあ‥とため息をついてアン先輩が言った。そして
「全然平凡じゃない」
もう一度コリンをしみじみ見たからそう付け足した。
言いたいことは伝わったけど‥カチーンだ。
確かに僕も標準的な男性としては低身長だよ? だけど、背の低い男性って‥いないわけじゃないよね?!
「‥じゃあ、聞きますけど。平凡ってどんなですかね。
僕は僕の感覚からすれば普通に平凡ですよ? 母親にはあんまり似てないけど、父親そっくりでどう見ても二人の子供って疑いようが無い容姿で「トンビが鷹を産んだ‥! 」って感じじゃないですし! 」
昔近所に住んでいたマリーって女の子は両親のイイトコ取りで産まれたまさに「トンビが鷹を産んだ様な娘」(両親談)で、もう‥二人のマリーに対する思い入れは凄かった。
「この子は絶対将来金持ちのところに嫁に行く! (行かせる! )」
って礼儀作法を習わせたり、綺麗な着物を着せたり、女学院に通わせたり‥明らかに彼女の姉とは違う扱いを彼女にして来た。
結構無理して‥だ。
だけど、結局ちやほやされたことで妹は我が儘な子になってしまって、両親の期待した玉の輿に乗ることはなかった。で、彼女とは逆に一人で努力した姉は親元を離れて王都でそこそこ成功してるらしい。
これを聞いて、トンビは鷹を産んでも舞い上がっちゃダメだなって思ったもんだ。
そもそも、トンビの子は多少毛色が違ってもやっぱりトンビなんだ。鷹の様に育てようってのが無理な話なんだ。だから、「自分の子は所詮トンビの子だ」と、変な期待を抱かない方がいいってことなんだろう。
ああ脱線した。
‥とにかく。
僕にとって平凡ってのは「トンビがトンビを産み」「カエルの子はカエル」って話。
僕は父さんにそっくりな父さんの子だから、僕は平凡そのものなんだ。
そういうことを、コリンはアン先輩に力説した。
アン先輩は黙ってそれを聞き終えてから、
「‥そういう話をしてるんじゃないんだが‥確かに平凡とはなんとも曖昧な表現だな。親と似ているなら平凡。確かにそれは一つの「平凡の基準」やもしれん。
例えば‥「統計学におけるメディアンを平凡とする」っていっても、そんな統計(王国民全体の顔のデータ化)取られてないだろうから「こういうのがメディアン」と言えるものはない‥。
‥成程確かにそうだな」
苦笑いして、頷いた。
アン先輩はどこまでも真面目だった。
その後も二人で「平凡とは」って議論を真剣に交わした。
それは、結構有意義で、面白い時間だった。
平凡な顔。
昔っから僕も平凡って言葉には不満がいっぱいだったんだよね。
「シークさんって平凡な顔」
みたいなこと言った兄さんたちの言葉、今でも忘れてないぞ!
僕にとっては、シークさんは「めちゃ男前」なんだからな!!
そんなことをコリンは思った。
シークさんは‥
目の色がクール! 切れ長の目が色っぽい! 目が細いのも‥セクシー! 顎のラインがシャープ! さらっととは縁遠い硬くって太い髪もカッコイイ! 背が高いのも素敵!
筋肉も‥超‥いい。広い背中サイコー!
ごつごつした太い指も‥かっこいい。実はちょっと不器用なところも可愛い。
ちょっと低めな声もいいんだよね~。
多くを喋らないところとかもう‥超超‥いい!
もう‥ホント、全部いい。
‥なんかもう‥思い出しただけで、恋しくって愛しくって‥もう、泣きそう。
コリンがちょっと泣きそうになっている間に、アン先輩は一人、議論を展開させていた。
「‥案外、どういうのが平凡‥とかじゃなくて‥印象に残らないってのが平凡の平凡たる条件‥っていうか‥」
平均的な大人と比べて多少の誤差くらいなら印象に残らない。
だけど、明らかに低いとか明らかに高いと、印象に残る。
実は美人であるとか不美人であるとかはその人の趣味嗜好が基準になってるから「その人の基準で」「その人の好みに」近ければ、印象に残る。
だけど、それは‥多分そう重要視されない。
「金髪やら銀髪って平民にはそういないから目立つけど、貴族には珍しくないから‥貴族にとってはそう特記事項でもない。
同じく、宝石みたいな碧眼やら緑の目も貴族には珍しくないが、やっぱり平民には珍しい」
貴族だったり、貴族と取引する機会が多い商人だったら上記の様な特徴を持つ人間を見てもそう珍しいとは思わないだろう。だけど、貴族と普段接することのない平民なら‥
「めちゃ綺麗な人に会った‥」
ってその人の印象そのものって位に‥印象に残るだろう。
「それで言ったら、コリンは別に目立つ特徴は無いな。
身長も平均の誤差にとどまってるし、目はきれいだけど、色でいえばそう特徴があるものでもない。髪の色も然りだ。(麦藁の様な金茶は平民にも結構いる)
だけど‥パーツの配置が神過ぎる! そんな整った配置の人間、少なくともオレは今まで見たことない! 」
びしっとコリンを指さしたアン先輩に、コリンは目を見開き、とっさに
「いや、それは嘘だ。僕は少なくとも二人‥いや三人‥神の造形物かって人間を見た。(← ナナフルさん、フタバちゃん、アンバー)一人は、女神みたい(ナナフル)で、もう一人は氷の姫君(フタバ)みたいで、一人は魔王(アンバー)みたいだった! 」
(アン先輩の言葉に)かぶせるように反論した。
アン先輩は驚いて目を見開いた。
ここで、そういう反論が来るとは思ってなかったんだろう。(せいぜい「何言ってるんですか~。そんなことないですよ~」位の反論しか来ないと思ってた‥びっくりした‥)
にしても‥女神? 氷の姫君? ‥魔王?? コリンの周りは人外ばっかりか??
「‥なんだそりゃ‥想像がつかないな。
その三人は日常生活で浮きまくっていたのか? 」
アン先輩が苦笑いする。
コリンは首を振って否定して、
「いいえ。普通に暮らしてました。一人は僕の職場の先輩で、バリバリ働いてたし、もう一人は貴族のお嬢様なんだけど、僕に負けず劣らず魔法オタクでフリーの魔術士として働いてるし、もう一人は‥ナンパな遊び人でした。
でも、全然普通に暮らしてましたよ? 特にちやほやされてる‥とかもなかったし」
真面目な顔でそう言った。
それって‥普通かな。
順番からして、女神がキャリアウーマンで、氷の姫君が魔術オタクなフリーの魔術士で、ナンパな遊び人は‥魔王かな? 魔王だけど、ナンパな遊び人??
絶対浮きまわってるだろ。
「浮いてなかったですよ。この三人には周りに有無を言わせない‥周りを納得させる強さがありました。強さっていうか‥オーラ? そういうのは‥非凡じゃなかったです。
‥そういうところかも。もし、あの三人が自分の容姿に無頓着で全然周りに対してそういう‥警戒線をはってなかったら‥周りからしたら「付け入る隙がある」ってことになるわけじゃないですか。そしたらアプローチしたい‥って興味関心を示すわけでしょ? だけど、その人に付け入る隙すら無かったら‥「最初っから無駄」って分かってそれ以上の興味関心を持たない‥。
平凡じゃない人‥社会から浮いてる人っていうのは、そういう‥自分の周りに対して無頓着で無防備な人間のことを言うのかもしれませんね」
堂々として‥周りに媚びない、屈しない。そういう「自分を持っている人」を周りは、軽く扱いにくい。相手の容姿が非凡‥美人であればなおさら‥。
「堂々として‥周りに媚びない、屈しない‥」
自分はどうだっただろうか。
周りに予防線を張って、おどおどし‥周りにどう見えるだろうかと先回りして「周りにみえる自分を想定し」あらかじめ自分を偽る。
偽りの姿だから、きっと‥浮いていただろうし‥自分もモヤモヤした‥。
「‥自分の気の持ちよう‥かあ‥」
アン先輩はボソッと呟いて、深いため息をついた。
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