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第一章 神嫌いの最凶神
第八話 説明
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(さて、どう説明したものか……)
シグルドとともに、神牙の団本部へと戻ってきたデルロは、険しい表情のシグルドを前に頭を悩ませる。正直、あの闘いの神について判明したことなどほとんどない。そして、また、あの闘いの神が傭兵団本部を訪れるという情報を漏らせば、かなり高い確率で、シグルドはそこで待ち伏せする。
(あの破壊が行われた経緯のみの説明にするにしても……あの三馬鹿、死ぬな)
とはいえ、何も説明しないわけにはいかないし、デルロが説明せずとも、あれだけの騒動であったのだから、広まるのは時間の問題だ。デルロは、あの闘いの神に連れ去られた三馬鹿の冥福を短く、一秒ほどで祈り終えると、すぐに、その内容を説明した。
「俺の番へ突っかかった三人は、今、どこだ?」
明らかに怒りを湛えた目で、デルロに問いかけるシグルド。ここで、闘いの神に連れ去られたと告げようものなら、彼らは、シグルドの視界に入った瞬間、殺されるであろう未来が見えてしまう。
「彼らを殺さないと約束するなら、教えましょう」
「っ…………………分かった」
長い沈黙の末、どうにか言質を取ったデルロは、早速、彼らが闘いの神に連れ去られたことを告げる。すると……シグルドが、プルプルと震え出す。
「団長?」
「……しい」
「?」
「羨ましいっ! なぜだっ! なぜっ、俺はその場に居なかった!! その場に居れば、俺を連れ去ってくれとアピールできたのにっ!!」
そんなシグルドの言葉に、表情を変えることなくドン引きしたデルロ。
(情報漏洩防止対策がとられた部屋でよかった!)
現在は、団員にも慕われているシグルド。例え、全裸で簀巻き状態にされて運ばれてきたのを目撃していても、同情こそすれ、嫌われることはなかったシグルド。しかし、きっとこの言葉を聞けば、幻滅する連中の一人や二人は出てくるはずだ。
「それともう一つ。実際に確認して思ったことですが……かの神は、恐らく、神格障害を抱えているのではないかと思われます」
「……それは、彼の容姿を見ての判断か?」
「それもありますが、あの三馬鹿に『淫の神』と貶められた時の反応が尋常ではなかったように思いましたので」
「……やはり、三馬鹿は殺「ダメです」ぐぅっ」
神格障害。それは、その神がただ一つ持っている主神格に、何らかの欠けが存在する場合を示す言葉だ。具体的には、美の神なのに、肌が荒れるとか、毒の神なのに、毒の耐性がないだとかの分かりやすいものがほとんどで、本来は、その神格を持っていればあり得ない状態になってしまう。そして、それをかの闘いの神に当てはめれば、屈強な肉体を持つはずの闘いの神なのに、華奢で、可愛らしいとすら思える肉体を持っているということだ。もちろん、姿を偽る方法などいくらでもあるが、今日の闘いの神の反応からして、それはないだろうと思えた。
「デルロと同じ、か……」
「はい」
そして、神格障害は、デルロ自身も持つ障害だった。軍の神なのに、指導が苦手。本来、軍の神は、軍団を育て上げる力と、それを指揮する力に秀でている。と、いうより、軍の神であるならば、自身の軍団に、恩恵を与えることができるのだ。しかし、その恩恵は、デルロの場合、指揮のみでしか発揮できない。それでも、デルロは、その力のみで、神牙の団副団長の地位にまで上り詰めていた。
「だが、神格障害があろうとなかろうと、彼は愛しい番だ。早く、求婚したいところだが……目撃情報がないのは、相変わらずなんだな?」
「申し訳ありません」
「いや、良い。そもそも、これは俺自身が調べるべきことだしな。だが、もし情報が入れば、教えてほしい」
「分かりました」
真剣に告げるシグルドへ、デルロはそう答える。もちろん、あの闘いの神の性格や暮らしている環境などを見極めてから伝えたいと思っているため、しばらくは、出現情報に限って、秘匿することになるだろう。
「デルロが副団長で、俺は幸せだな」
微笑みながら放たれたそんな言葉に、デルロは小さな罪悪感を抱きながらも、心を鬼にして、シグルドのために動こうと決心するのだった。
シグルドとともに、神牙の団本部へと戻ってきたデルロは、険しい表情のシグルドを前に頭を悩ませる。正直、あの闘いの神について判明したことなどほとんどない。そして、また、あの闘いの神が傭兵団本部を訪れるという情報を漏らせば、かなり高い確率で、シグルドはそこで待ち伏せする。
(あの破壊が行われた経緯のみの説明にするにしても……あの三馬鹿、死ぬな)
とはいえ、何も説明しないわけにはいかないし、デルロが説明せずとも、あれだけの騒動であったのだから、広まるのは時間の問題だ。デルロは、あの闘いの神に連れ去られた三馬鹿の冥福を短く、一秒ほどで祈り終えると、すぐに、その内容を説明した。
「俺の番へ突っかかった三人は、今、どこだ?」
明らかに怒りを湛えた目で、デルロに問いかけるシグルド。ここで、闘いの神に連れ去られたと告げようものなら、彼らは、シグルドの視界に入った瞬間、殺されるであろう未来が見えてしまう。
「彼らを殺さないと約束するなら、教えましょう」
「っ…………………分かった」
長い沈黙の末、どうにか言質を取ったデルロは、早速、彼らが闘いの神に連れ去られたことを告げる。すると……シグルドが、プルプルと震え出す。
「団長?」
「……しい」
「?」
「羨ましいっ! なぜだっ! なぜっ、俺はその場に居なかった!! その場に居れば、俺を連れ去ってくれとアピールできたのにっ!!」
そんなシグルドの言葉に、表情を変えることなくドン引きしたデルロ。
(情報漏洩防止対策がとられた部屋でよかった!)
現在は、団員にも慕われているシグルド。例え、全裸で簀巻き状態にされて運ばれてきたのを目撃していても、同情こそすれ、嫌われることはなかったシグルド。しかし、きっとこの言葉を聞けば、幻滅する連中の一人や二人は出てくるはずだ。
「それともう一つ。実際に確認して思ったことですが……かの神は、恐らく、神格障害を抱えているのではないかと思われます」
「……それは、彼の容姿を見ての判断か?」
「それもありますが、あの三馬鹿に『淫の神』と貶められた時の反応が尋常ではなかったように思いましたので」
「……やはり、三馬鹿は殺「ダメです」ぐぅっ」
神格障害。それは、その神がただ一つ持っている主神格に、何らかの欠けが存在する場合を示す言葉だ。具体的には、美の神なのに、肌が荒れるとか、毒の神なのに、毒の耐性がないだとかの分かりやすいものがほとんどで、本来は、その神格を持っていればあり得ない状態になってしまう。そして、それをかの闘いの神に当てはめれば、屈強な肉体を持つはずの闘いの神なのに、華奢で、可愛らしいとすら思える肉体を持っているということだ。もちろん、姿を偽る方法などいくらでもあるが、今日の闘いの神の反応からして、それはないだろうと思えた。
「デルロと同じ、か……」
「はい」
そして、神格障害は、デルロ自身も持つ障害だった。軍の神なのに、指導が苦手。本来、軍の神は、軍団を育て上げる力と、それを指揮する力に秀でている。と、いうより、軍の神であるならば、自身の軍団に、恩恵を与えることができるのだ。しかし、その恩恵は、デルロの場合、指揮のみでしか発揮できない。それでも、デルロは、その力のみで、神牙の団副団長の地位にまで上り詰めていた。
「だが、神格障害があろうとなかろうと、彼は愛しい番だ。早く、求婚したいところだが……目撃情報がないのは、相変わらずなんだな?」
「申し訳ありません」
「いや、良い。そもそも、これは俺自身が調べるべきことだしな。だが、もし情報が入れば、教えてほしい」
「分かりました」
真剣に告げるシグルドへ、デルロはそう答える。もちろん、あの闘いの神の性格や暮らしている環境などを見極めてから伝えたいと思っているため、しばらくは、出現情報に限って、秘匿することになるだろう。
「デルロが副団長で、俺は幸せだな」
微笑みながら放たれたそんな言葉に、デルロは小さな罪悪感を抱きながらも、心を鬼にして、シグルドのために動こうと決心するのだった。
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