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真実を見て選ぶべき道
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しおりを挟む「王宮に頼んだのかもしれないわ、あの子なら何とでも理由を作れたでしょうし」
「そうだろうな。だがこれでますます彼女が聖女ではない可能性が高くなったという事でもある」
そう言われてロッテは少しだけ悩んだ、このままアンネマリーが聖女であるかを追求するのが正解なのかと。彼女がそうまでして聖女であろうとしている理由が、何かあるのかもしれないのに。
だがそんなロッテの考えを見透かしたように、レーヴェは……
「ロッテ。君の妹にどんな理由があったとしても、あの国やそこで暮らす民を蔑ろにしていい理由にはならない。彼女が聖女アンネマリーとして名乗ったからには、その責任があるのだから」
「そうよ、ね……」
聖女という存在が軽々しく考えていいものではないことくらい、ロッテにも充分すぎるほど分かっている。力の無い者が聖女を名乗った後に待ち受ける未来も、だからこそ考えてしまうのだ。
ゼーフェリング国やそこで暮らす人々の事と同じように、自分の妹であるアンネマリーのことも。
「……すまない、君が悩んでいることは分かってても引き返そうとは言ってやれない」
「ええ、分かってる」
どうせここで引き返したとしても、再度アンネマリーが放つ刺客に命を狙われるだけ。それでは国も妹も救えないのだ。
例えどんな未来が待ち受けてるとしても、ロッテが選ぶべき道は一つしかない――
「行きましょう、どんな道を進むことになっても。アンネマリーのいる、王都へ!」
「頼もしいな、ロッテは。俺がどう君を説得しようかと迷っていたのは無駄だったみたいだ」
「そんなことないわ、レーヴェが一緒にいてくれるから私は迷わずにすんでいるの」
レーヴェはそう言うが、もし今もロッテが一人だったならば不安で前に進むことなどきっと出来なかったはずだ。それどころかアンネマリーが差し向けた刺客に、ただ殺されていただけだったかもしれない。
あの屋敷であの日にレーヴェと出会ったから、彼がロッテの事を必要としてくれたから。それがどれだけ彼女に自信を与え、その孤独を癒したのかレーヴェには多分分かっていないだろうけれど。
「私、レーヴェに出会えて本当に良かった。神様に凄く感謝しているの」
「大袈裟だな。でも……俺も神様に感謝してる、ロッテに出会えたことだけは」
少し含んだものの言い方が気になったが、何となくその笑顔の奥に見えない壁を感じてロッテはそれ以上詳しく聞くことはしなかった。
レーヴェが何かを話せないのにはきちんと理由があるはず、ロッテは彼が自ら全てを語ってくれるのをジッと待つつもりなのだろう。
「そういえばロッテは食事がまだだっただろう? 宿の女将が君の為に軽食を用意してくれたから食べるといい」
「え? でもレーヴェは……」
もし彼が食事をしてなければ、軽食とはいえ自分だけが食べるわけにはいかない。ロッテはそう思って、レーヴェが差し出したバスケットを受け取れずにいたのだけれど。
「俺は宿の食堂で済ませている、悪いとは思ったがぐっすり眠っているロッテを起こしたくなかったんだ」
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