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契約結婚でも変わる努力を

契約結婚でも変わる努力を6

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 私は匡介きょうすけさんの妻であって、彼の子供なわけじゃない。自分の考えはしっかり持っているし、意見だってハッキリと言える。
 この時の私は匡介さんにどんな事情があるかも考えず、ただ理不尽さを感じて彼の言葉に反抗してしまった。

「今の状態で君に話せることは無いんだ、少しの間でいいから大人しく俺の言う事を聞いてほしい」

「嫌って言ったら嫌なんです、自分の事なのにそれを知る事も出来ない。そんなのおかしいと思いませんか!?」

 この日に限って私は彼に対して妙に意固地になってしまっていた。
 最近は匡介さんとの距離が少しだけ近づいていた気がしたのに、こうやって壁を作られたことに大きな不満を感じたのかもしれない。

「いいか杏凛あんり、君の気持ちは分かるがそう感情的にならずに、これからの事を……」

 私の感情の昂りに気付いても冷静なまま話をつづける匡介さんに、我慢しきれなくなった苛立ちをぶつけてしまう。

「そうね、どうせ私なんて黙っていう事を聞いていればいいだけの契約妻ですから! もう、放っておいて!」

「杏凛!!」

 これ以上とんでもないことを彼に言ってしまわない様に、慌てて自分の部屋に戻り鍵をかける。匡介さんが私を呼び止める声に気付いていたが、今はもう顔を見る事も出来そうになかった。




 自室にこもってベッドに腰掛けると、さっきの匡介きょうすけさんへの酷い態度ばかりが頭の中で回る。どうしてあんな言葉を投げつけてしまったんだろう、匡介さんがそんな風に私に言った事なんて一度もないのに……

 もしかしたら彼が私の部屋をノックするかもしれない、そんな事あるわけないと言いに来てくれるかもしれない。そんな期待もしたけれど、彼の足音はこの部屋には近づくことなく寝室の方へと向かっていった。

「どう考えても私が悪いものね、匡介さんだってきっと怒っているはずよ」

 彼が私を甘やかしてばかりだったから、気付かないうちに我儘になっていたのかもしれない。匡介さんに妻として寄り添う努力をしたいと思っていたのに、そんな気持ちとは逆に現実は上手くいかない。

 匡介さんが私から取り上げた封筒と天然石、あれが何を意味するのかは分からないがきっと良い事ではないはず。
 何も分からない事への不安と、これから先への恐怖……考え始めると寒気がした気がしてふるりと身体を震わせる。

「せめてこんな日は傍にいて欲しいことくらい分かって……」

 ベッド横の壁に両手をついて、コツンと頭をぶつける。この壁の向こうは寝室、きっと匡介さんも今頃後悔してるのかもしれない。
 二人で暮らし始めてから、こんなに匡介さんとの距離が切なく感じたのは初めてだった————


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