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第2章 新天地編
第47話 大人のラブコメ
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俺は騎士団No.1の赤鎧ファイアを操作してマルクト王国東の六番街にある酒場に来ていた。正面の入り口は閉まっていたので裏にまわる。あらかじめ決めておいた回数ノックをすると扉が開き、中から踊り子トマティナが出てきた。
茶髪ロングに茶色の瞳、赤いドレスを身にまとっており、十八歳とは思えないほど大人びている。
彼女は巨獣ミノタウロス討伐の際にモンスター避けの香水を作ってくれた人物だ。初めて会った時はかなり揉めたが、今は赤鎧ファイアに心を開いてくれている。
「よう」
「来てくれて嬉しい。さ、座って」
誰も居ない酒場のカウンターに座る。
「何か飲む?」
「いや、後で何か持ち帰れるものをくれよ」
鎧兵さんは中身がないから飲み物を飲むと下半身から漏れます。
トマティナが隣に座る。かなり距離が近い。
「何か悩み事?」
さすがトマティナ。察する能力が高い。
「まぁな。聞いてると思うけど新天地のことでどうするか聖騎士団内で揉めててさ」
「ファイアはどうしたいの?」
「オレは……分からない。ただ言えるのは、迷いのある今の状況だとどの選択肢を取っても失敗に終わるってことだ」
トマティナが自身の手をファイアの手に重ねてきた。近頃の彼女は好きというアピールを一切隠さない。にぶい俺でも気付くほどの積極性だ。
「難しい問題さね。王国民として、聖騎士団として、個人として、いろんなしがらみがあるのよね」
考え込むトマティナ。その横顔は、長いまつげ、筋の通った高い鼻、口紅で彩られた唇と、高水準でバランスの取れた顔立ちをしており、魅惑的な映画女優を彷彿とさせる。
「ならそれを分解していって、その中で一番大切なものを考えてみて」
「大切なものか……」
名誉、体裁、評価、立場、自分の命、いや——
「民の命かな」
「うん、そう言うと思った。だったらその大切なものを守るためにやることは決まってるわよね?」
そうだよな。俺が出来ることなんて体を張ってみんなを守ることぐらいなんだ。
「ああ、やっぱりオレも新天地へついて行こうと思う。貧民であろうとも悪党じゃないし、同じマルクト王国民なんだ。守ってみせる。……って感じで団長に提案してみるよ」
答えは初めから決まっていたのかも知れない。誰かを死なせてしまう恐怖が覚悟を鈍らせていたけれど、トマティナのおかげで迷いは消えそうだ。
「ありがとうトマティナ。気持ちの整理がついたよ」
直後、彼女が体を寄せてきた。
「それならお礼して貰おうかな。ウチに来てよ。ベッド新しくしたの」
べべべベッドぉ!? ベッドでなにするのぉ? まぁ俺も二十三歳、何をするかは分かっているけどな。
そうそれは……トランポリンだよな! 二人で飛んだり跳ねたりして遊ぶんだ。時には大開脚したり、合体技を行ったりして楽しいらしいぜ!
クッ……さすが俺、完璧な考察だな。伊達に二十三年間彼女が居ないだけあるぜ。
とにかく断らないとな。一線を越えるのはまだ早い。
「悪いね、外泊は禁止されているんだ」
「あら、泊まらなくても火遊びは出来るわよ?」
「火は神樹様を怒らせるぞ」
「でも愛の炎ならお目こぼししてくれるかもね?」
助けてくれぇ、俺には彼女を論破できそうもない。
「こ、困らせるなよ」
「困らせたいの。私に構って欲しいから」
舌をチロリと出していたずらに笑うトマティナ。か、かわいい。
彼女が顔を近づけて来る。
「せめて口元を見せてくれたらキス出来るのに」
きききキスぅ!? さ、魚の鱚だよねぇぇ!?
「け、ケガしたら危ないだろ?」
「ケガは嫌だけど、汚されはしたいさね」
うぎぎ、アピールが凄い。ああ流されてしまいそうだ。だが俺は童貞を極めし男。この程度のアピールでは日和って手を出さないのだ。
ま、トマティナの胸が後数センチ大きかったら流されていただろう。ふー、危ない危ない。
「ねぇ、胸の大きい女は嫌い?」
「うん? 大きさなんてどうでもいいよ」
「よかった。実はダンスのためにサラシで抑えてるから見た目より大きいの」
か、隠れ巨乳だああああ!
「……見る?」
みみみ見たい! だけど!
「いや、辞めておくよ。後戻りできなくなるし」
今は問題を増やすわけにはいかない。ただやっぱり正体を明かすとしたらトマティナだと思う。頭が良いし、秘密を守れるだろうし、公私を分けられるし……美人だし巨乳だし。あー彼女欲しいなぁ!
「そう、これ以上は嫌われそうだから辞めておくさね」
「嫌わないよ。むしろオレが嫌われないか心配だ」
「あんまり邪険にされるとあり得るかもね?」
ひぇぇ、寝取られるぅ。……冗談は置いといて、近いうちになんらかの答えを出したいと思う。ここまでアピールさせておいて生殺しも悪いし。
それより今は目先の問題をどうするかだ。トマティナの言う通り民の命を優先して新天地組に同行するのは決まった。
ただ、それでもほんの少しだけ心にわだかまりが残る。そう簡単に切り替えられるほど俺はできていない。
ハァ……なにかちょうどいい動機でも降ってこねぇかな。
ふと、窓を見ると無数の白い何かがチラチラと降ってきた。
「……雪?」
窓を開けて手に取ってみる。
それは雪ではなく、“灰”だった。
茶髪ロングに茶色の瞳、赤いドレスを身にまとっており、十八歳とは思えないほど大人びている。
彼女は巨獣ミノタウロス討伐の際にモンスター避けの香水を作ってくれた人物だ。初めて会った時はかなり揉めたが、今は赤鎧ファイアに心を開いてくれている。
「よう」
「来てくれて嬉しい。さ、座って」
誰も居ない酒場のカウンターに座る。
「何か飲む?」
「いや、後で何か持ち帰れるものをくれよ」
鎧兵さんは中身がないから飲み物を飲むと下半身から漏れます。
トマティナが隣に座る。かなり距離が近い。
「何か悩み事?」
さすがトマティナ。察する能力が高い。
「まぁな。聞いてると思うけど新天地のことでどうするか聖騎士団内で揉めててさ」
「ファイアはどうしたいの?」
「オレは……分からない。ただ言えるのは、迷いのある今の状況だとどの選択肢を取っても失敗に終わるってことだ」
トマティナが自身の手をファイアの手に重ねてきた。近頃の彼女は好きというアピールを一切隠さない。にぶい俺でも気付くほどの積極性だ。
「難しい問題さね。王国民として、聖騎士団として、個人として、いろんなしがらみがあるのよね」
考え込むトマティナ。その横顔は、長いまつげ、筋の通った高い鼻、口紅で彩られた唇と、高水準でバランスの取れた顔立ちをしており、魅惑的な映画女優を彷彿とさせる。
「ならそれを分解していって、その中で一番大切なものを考えてみて」
「大切なものか……」
名誉、体裁、評価、立場、自分の命、いや——
「民の命かな」
「うん、そう言うと思った。だったらその大切なものを守るためにやることは決まってるわよね?」
そうだよな。俺が出来ることなんて体を張ってみんなを守ることぐらいなんだ。
「ああ、やっぱりオレも新天地へついて行こうと思う。貧民であろうとも悪党じゃないし、同じマルクト王国民なんだ。守ってみせる。……って感じで団長に提案してみるよ」
答えは初めから決まっていたのかも知れない。誰かを死なせてしまう恐怖が覚悟を鈍らせていたけれど、トマティナのおかげで迷いは消えそうだ。
「ありがとうトマティナ。気持ちの整理がついたよ」
直後、彼女が体を寄せてきた。
「それならお礼して貰おうかな。ウチに来てよ。ベッド新しくしたの」
べべべベッドぉ!? ベッドでなにするのぉ? まぁ俺も二十三歳、何をするかは分かっているけどな。
そうそれは……トランポリンだよな! 二人で飛んだり跳ねたりして遊ぶんだ。時には大開脚したり、合体技を行ったりして楽しいらしいぜ!
クッ……さすが俺、完璧な考察だな。伊達に二十三年間彼女が居ないだけあるぜ。
とにかく断らないとな。一線を越えるのはまだ早い。
「悪いね、外泊は禁止されているんだ」
「あら、泊まらなくても火遊びは出来るわよ?」
「火は神樹様を怒らせるぞ」
「でも愛の炎ならお目こぼししてくれるかもね?」
助けてくれぇ、俺には彼女を論破できそうもない。
「こ、困らせるなよ」
「困らせたいの。私に構って欲しいから」
舌をチロリと出していたずらに笑うトマティナ。か、かわいい。
彼女が顔を近づけて来る。
「せめて口元を見せてくれたらキス出来るのに」
きききキスぅ!? さ、魚の鱚だよねぇぇ!?
「け、ケガしたら危ないだろ?」
「ケガは嫌だけど、汚されはしたいさね」
うぎぎ、アピールが凄い。ああ流されてしまいそうだ。だが俺は童貞を極めし男。この程度のアピールでは日和って手を出さないのだ。
ま、トマティナの胸が後数センチ大きかったら流されていただろう。ふー、危ない危ない。
「ねぇ、胸の大きい女は嫌い?」
「うん? 大きさなんてどうでもいいよ」
「よかった。実はダンスのためにサラシで抑えてるから見た目より大きいの」
か、隠れ巨乳だああああ!
「……見る?」
みみみ見たい! だけど!
「いや、辞めておくよ。後戻りできなくなるし」
今は問題を増やすわけにはいかない。ただやっぱり正体を明かすとしたらトマティナだと思う。頭が良いし、秘密を守れるだろうし、公私を分けられるし……美人だし巨乳だし。あー彼女欲しいなぁ!
「そう、これ以上は嫌われそうだから辞めておくさね」
「嫌わないよ。むしろオレが嫌われないか心配だ」
「あんまり邪険にされるとあり得るかもね?」
ひぇぇ、寝取られるぅ。……冗談は置いといて、近いうちになんらかの答えを出したいと思う。ここまでアピールさせておいて生殺しも悪いし。
それより今は目先の問題をどうするかだ。トマティナの言う通り民の命を優先して新天地組に同行するのは決まった。
ただ、それでもほんの少しだけ心にわだかまりが残る。そう簡単に切り替えられるほど俺はできていない。
ハァ……なにかちょうどいい動機でも降ってこねぇかな。
ふと、窓を見ると無数の白い何かがチラチラと降ってきた。
「……雪?」
窓を開けて手に取ってみる。
それは雪ではなく、“灰”だった。
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