86 / 120
第3章 翡翠の剣姫
4.求める結果がそれだけだとは限らない!③
しおりを挟む顔が近づく。
自然に目が閉じ………
「やはり、我慢ならん!!聖下に私を誤解させたままなど、あってたまるか!!」
かけたが、バタンッと勢いよく開いた扉からシャイアが乱入し、近付いた俺とカイザーの顔が、同じく勢いよく離れた。
「シャイア様!だから、駄ァ目ですって!!」
必死に止めようとしてから、キリアンも慌てて入ってきた。
「キリアン………」
「いや!いやいやいや!!いやいやいやいやいや!!!隊長、俺、止めましたよ⁈止めたんスよ⁈」
地を這うようなカイザーの声に、キリアンが慌てふためいて言い訳する。
完全、八つ当たりだ。
言い繕うキリアンを押し退け、シャイアがズイと前に出た。
「カイザー!私も話させろ!!そもそもは、お前が聖下と恋仲であると、聖下の為に王権を復活させたと、きちんと説明するべきであったのだ!」
腰に手を当て、フン!と踏ん反り返り、シャイアがプンスコ怒りだす。
え~、っと……話が見えん。
「シャイア様。色々省き過ぎっスよ?それじゃ、分かんないですって!」
俺の?顔を見てとってか、キリアンが代弁してくれた。
「シャイア様。隊長にお任せいたしましょ?キリアン。部下である私たちが口を挟む立場にありませんわ。私も下がりますから、あなたも下がってくださいませ」
ジディが進み出て、シャイアを促す。
出来るお姉さんみたいですげぇ格好いい!
「悪いな、ジディ」
「いいえ。2人掛かりでお止め出来ず、申し訳ありません」
「シャイア。居るのはいいが少し黙れ!お前が今口を挟むとややこしい事になる!」
ジディが渋るシャイアを宥めて下がった。
一旦、甘くなりかけた空気ブチ壊されて、めちゃくちゃ気不味いけど…まぁ、それでも話さないわけにはいかない。
たとえ、どんなに嫌な話でも、受け止めないわけにはいかない。
ついつい、甘ったるい空気に、自分を誤魔化そうとしたけど、しっかりしなきゃな……
「覚悟は、、、できてる。シャイアと婚約すんのは……嫌だけど、しようがない。聖獣妃でも、俺、は、男だし。家を継ぐこと考え、たら……」
声が震える。
情けないが、毅然と答えるなんかできない。
世の中には、恋人や奥さんがたくさん居るのが当たり前な風習はある。この世界ではそうなんだろうし、俺のいた世界でも、、、
簡単に受け入れられるかって言われたら、無理だ。
でも、無理でも受け入れるしかない。
だって、俺がカイザーを………
「婚約はしない」
「そっか………そうだよな。婚約しない………………
は?????」
聞き間違いだろうか?
婚約しないって、、聞こえたんだが?
「え?だって、、でも、えぇ??」
「俺にはお前だけだ」
「そ………な、、、ぃ、、、ぅ」
ま、マズい。頭がパニック起こして、言葉らしい言葉が出てこん。
「そもそも。俺はお前と心が通った時点でそのつもりだ。だから、生涯、手にするつもりもなかったものを復権させた」
「な、にを?」
ああ、本当にヤバい。頭がグラグラぐるぐるする。
ソファに促され座った。カイザーも隣に座り、向かいの席にシャイアが座る。
「王権。王位継承権……王族になったんだ」
「……………………」
ピンとこないんですけど?
王権?王位継承権?王族?
それが俺との関係性になんの関わりが?
「元々、王権を持っていたのは、俺の祖父だ。だが、俺の家名ユグドラジェルは代々軍人家系で、王位になんの興味もなく、祖父は王権を捨てた。が、さすがに放棄はできても、完全に捨てさることはできんと大臣どもにこっぴどく叱られて、渋々凍結させたんだ。それを復権させた」
「何で、そんな事……」
「聖下を得る為だな」
「シャイア!黙ってろと、、、」
「必要以上には喋らん!私も関わり、聖下を誤解させてしまったのだ。それに、聖下に嫌われたくないからな。私は私のために話に参加する!」
フン!と鼻で吐き捨てるシャイアに、カイザーが苦虫を噛み潰したような渋面で唸り、やがて、諦めたように溜め息をついた。
まぁ、シャイアを黙らせんのは無理だろう。
「……聖獣妃を得ても文句を言われない強固足るモノを用意しなきゃならなかったんだ。近衛騎士隊長では立場が弱すぎる。貴族でもまだ足りない。だから…」
「朝早くからリステアに用があったのはそれで……」
リステアの言ってた『カイザーならいい』の意味が分かった。
「復権させ、王族にはなったが、継承権はかなり低い。聖獣妃を得るのにギリギリ文句を言われないくらいまで、皇太子殿下に低めて頂いた」
王族の面倒ごとまで得るのは真っ平だと、カイザーがなにやらブツブツ……
まぁ、カイザーが王族になったらしいってのは分かった。それが、俺の為だったってのは……
ヤバい。
嬉しいやら、恥ずかしいやらで顔が上げらんない。
あれ?でも、そうしたらシャイアは………
「聖下とカイザーがそうであったと教えてくれたなら、私とて、あんな態度には出なかったぞ?」
「見たら分かるだろうが!」
「大事にしているのは分かった!が、護衛の近衛騎士としては、聖下への距離が近過ぎる!馴れ馴れし過ぎると思ったのだ!」
ムスッとして言うシャイアに、カイザーが苛々と返す。
うん??
「え~、、、??ん~?ど、いう事だ?」
「私が話す!構わんな?カイザー」
「……………………勝手にしろ!どうせ、駄目だと言っても、お前は聞かん!!」
39
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)は、見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良ワーウルフの悪友(同級生)まで……なぜかイケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、異世界学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる