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除け者

#19

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丹波は邪魔な椅子を蹴り飛ばし、ゆっくりとなづなに近付く。
「ついて……ど、どこに?」
「どこがいいかな。……トイレとか」
「トイレ? 丹波君、放課後のトイレは危険だって」
分かってるでしょ、と言おうとした。しかし口に出して言うことはできなかった。

「うるせえんだよ。いいから黙ってついてこい。その女みたいな顔グチャグチャにされてぇか?」
「んん……っ!!」
口は彼の手で塞がれている。そして首元には、銀色に光る何かが触れていた。氷のように冷たい感触────ナイフだ。
「うんざりなんだよ、男同士のそういう絡み。……なぁ、芦苅。男の欲求を満たす生贄なんて、お前が適任だろ。むしろ最初っから、お前しかいないじゃんか」
「……っ!」
胸倉を掴まれ、強引にトイレまで引き摺られる。抵抗したら、首元に当てられてるナイフが突き刺さってしまいそうで怖かった。

「ちょっと、離してって……」

三年のトイレに連れ込まれ、離してもらえたけど思いきり殴られた。バランスを崩して床に倒れる。
そして彼から告げられた言葉に絶句した。

「服、脱げよ」

あまりに冷えきった声に、背筋に悪寒が走る。何も言えない。顔を上げて、彼の目を見るのが精一杯だった。
「ここで裸になって、レイプ魔がやってくんのをずっと待ってろ。お前が犠牲になれば、五組の奴らは全員助かるんだよ」
「何を………」
「お前が役に立てることなんて他に何もないだろ。それにほら、お前が身代わりになれば、あの仲の良い転校生、……国崎。あいつも助かるじゃんか」
三尋の名前を出されてハッとする。何としても、彼にそんな辛い想いはしてほしくなかった。
「ほんと嫌んなるよなあ、芦苅。でもこれはお前にしかできねえよ。去年のこと思い出して、頑張ってメス豚になれって」
黒い影が視界を奪う。頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。視界の反転。足で腹部を踏みつけられ、呼吸すら困難になる。血で汚れた服を剥ぎ取られて、ひたすら蹴り飛ばされた。

「クソ、クソが! 何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ! お前みたいに気持ち悪い奴がいるから男に発情するバカが現れるんだろうが! あぁ!?」

そこにいるだけでムカつく。声が、顔が……。
真上から降り掛かってくるのに声はくぐもっている。絶え間ない暴言と暴力だけが与えられる……赤い世界だ。






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