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ともだち
#5
しおりを挟むそう遠くない……いつかの自分の声が頭に響く。
『襲った奴に同じ苦しみを与える。傷は癒えなくても、そこでやっと公平だ。自分が犯した罪の重さを認識させる。それも立派な償いだよ』
転校して間もない少年に、やたら壮大に告げた。彼は頷かなかった。可哀想な人を見る目で答えた。
『そんな汚いマネしないで、他のやり方を探そうぜ。俺達なら多分、もっと良い方法を見つけられるよ』
良い方法?
そんなものがあるなら今すぐ教えてほしい。
もっとずっと前に。俺がこんなゲームを始める前に、教えてほしかった。
でも間違ってるよ、三尋。
襲われたことがないからそんな優しい優しい台詞を吐けるんだ。
汚された俺は、汚ない台詞しか吐けない。汚れた思考……行き場のない憎しみをぶちまけることしかできない。
何があろうが同じ目に合わせてやる。俺を襲った奴を、俺と同じ目に。倫理観なんか知るか。
「あ、芦苅……俺、……俺は……」
遠くで拙い声が聞こえたけど、勿論無視した。
例え彼が罪悪感を覚えていたとしても、もうどうでもいい。やりたいことをやるだけだ。
ここまでされて泣き寝入りするなんて納得できない。力がない奴は何をされても従わなきゃいけないなんておかしな話じゃないか。数百年前の捕虜か、奴隷か。
因果応報。俺はあいつらを犯して犯して、殺してやる。綺麗事を吐く偽善者も、嘲笑うだけの傍観者も、みんな……!
このゲームの主犯はそういう奴だ。関係ない人間も大いに巻き込みたい、そういう卑劣な人間。
────だから、この行為もいつか跳ね返ってくる。
やりかえした、だけ、……だとしても。
もう彼らと同じ犯罪者だから。
目の前の彼に殴られた時も、心の底から抵抗する気になれなかった。自分は正しいと思ってるのに、常に暗い影がつきまとう。
一人一人犯していく様を楽しく見ているはずなのに、誰かに見られて、咎められているような錯覚に悩まされた。
本当に、何が正しかったんだろう。教えてほしい。
「三尋……」
教えてほしかった。こんなやり方でしか満足できない俺に。
高校で初めてできた友達をこんなことに巻き込んで……本当に……。
彼がいたからこんなゴミみたいな学校も楽しくて、笑っていられたのに。今は彼を苦しめ、あんな辛そうな顔をさせてしまっている。
俺は何をやってるんだろう。
「……ごめんね」
もっと早く、君に会いたかった。
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