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妖鬼 黒 2
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座敷を出ると、ボクは2人を連れ冥府へ転移した。
「悪いな。屋敷の中に直接移動することもできたんだけど。それやると、三毛が凄く怒るんだよね。」
黒の身体を離し、ボクはどさくさ紛れに海神の腰に腕を回し強く抱きしめた。
海神は小さく微笑み、ボクの肩へ頭を少しだけもたれさせ、上衣を柔らかくつかむと、身体をわずかに重ねてきた。
ボクは胸の奥が愛おしさで震えるのを感じながら、海神の艶やかな髪に顔をうずめ、その甘い香りを含むように、ゆっくりと深く息を吸った。
・・・・海神と、1つに重なっていたい。
ボクは欲望を抑え込み、黒へついてくるよう目くばせすると、海神を抱えたまま上空に浮かぶ巨大な岩の大地へ向かい、地を蹴り駆け上がっていった。
「蒼様。お客人をお連れでしたら、お戻りの前に念話でご一報いただけると大変助かるのです・・・が・・・・。」
屋敷の中へ入るなり、小言を言いにさっそく駆けつけてくれた三毛だったが、黒の姿をみて、言葉を失ってしまった。
「ごめんごめん。許して。」
黒が面白がって、わずかな殺気を三毛にぶつけたりしたから、彼女はふっくらとした桃色の唇を恐怖に震わせ、あっという間に青ざめてしまった。
嫌な挨拶をするなよ・・・・・。
と思い、チラリと黒を見ると肩をすくめ、奴は涼しい顔をしている。
まぁ・・・・三毛は強い子だし、大丈夫だろう。
「彼は黒。・・・新しい友人だ。三毛・・・客間を1つ使う。ちょっと込み入った話になるかもしれないから、念のため人払いをよろしく。」
ボクは三毛に黒を紹介すると、海神を連れさっさと奥の客間へ入って行った。
ボクが言う「込み入った話」というのは、戦闘になる可能性があるという意味だ。
三毛や他の従者をわざわざ危険にさらすなんて馬鹿げているから、ボクは三毛に皆を近寄らせるなと伝えた。
扉を閉めて侵入者を防ぐための結界を張ると、黒が印を組み、上からもう一つの結界を張った。
時を止めるための結界だ。
「失礼・・・・・。時間が惜しい。僕はあの人と、離れていたくはないんだ。・・・・・要件を聞こう。」
「結界、どうもっ。・・・最初から気づかれちゃってたと思うけど、とりあえず自己紹介しておくよ。」
ボクは神妖の姿を解き妖鬼へと正体を現した。
身長がグッとのびると同時に、瞳が海色へと変わり、白銀の髪がなびく。
「ボクは蒼。君と共に、双凶だなんて呼ばれている妖鬼だ。」
「妖鬼・・・ね。」
黒はボクの言葉に口の端で笑みを見せた。
ボクよりも強力な力を持つ彼には、ボクの魂が完全な妖鬼の形を成していないことが見えている。
それをあえて妖鬼だと言い切ったボクの台詞に、彼は「どこが妖鬼なんだ」と呆れて笑ったのだ。
「僕の事は、黒でいい。・・・・・さっきは少し、驚いた。2年ほど前、海神の元に得体のしれない押しかけ従者が現れたという話は、聞いていたが・・・・・。」
「失礼だなぁ。一体誰がそんなことを言ってるんだ。」
ボクが口を尖らせてそう言うと、黒がフッと鼻で笑った。
「なかなか良い化身を作ったな。君の化身は女だと記憶していたが・・・・こっちも悪くない。それに、かなり高度な術だ。僕以外には見破れないだろう。・・・・君の正体と、海神の封印は。」
「・・・それは、褒め言葉として受け取っておくよ。・・・やっぱり君には全部ばれちゃってたね。連れてきてよかった。」
黒の言葉を耳にしたボクは、思わず彼に鋭い視線を送った。
ボクが女の化身を使っていたことを、海神は知らない。
海神を白妙に託して以来、ボクはあの姿を封じているのだ。
こんな些細なことを海神が訝しむとは思えなかったが、それにしたって、海神の前で触れて欲しい話ではなかった。
「悪いな。屋敷の中に直接移動することもできたんだけど。それやると、三毛が凄く怒るんだよね。」
黒の身体を離し、ボクはどさくさ紛れに海神の腰に腕を回し強く抱きしめた。
海神は小さく微笑み、ボクの肩へ頭を少しだけもたれさせ、上衣を柔らかくつかむと、身体をわずかに重ねてきた。
ボクは胸の奥が愛おしさで震えるのを感じながら、海神の艶やかな髪に顔をうずめ、その甘い香りを含むように、ゆっくりと深く息を吸った。
・・・・海神と、1つに重なっていたい。
ボクは欲望を抑え込み、黒へついてくるよう目くばせすると、海神を抱えたまま上空に浮かぶ巨大な岩の大地へ向かい、地を蹴り駆け上がっていった。
「蒼様。お客人をお連れでしたら、お戻りの前に念話でご一報いただけると大変助かるのです・・・が・・・・。」
屋敷の中へ入るなり、小言を言いにさっそく駆けつけてくれた三毛だったが、黒の姿をみて、言葉を失ってしまった。
「ごめんごめん。許して。」
黒が面白がって、わずかな殺気を三毛にぶつけたりしたから、彼女はふっくらとした桃色の唇を恐怖に震わせ、あっという間に青ざめてしまった。
嫌な挨拶をするなよ・・・・・。
と思い、チラリと黒を見ると肩をすくめ、奴は涼しい顔をしている。
まぁ・・・・三毛は強い子だし、大丈夫だろう。
「彼は黒。・・・新しい友人だ。三毛・・・客間を1つ使う。ちょっと込み入った話になるかもしれないから、念のため人払いをよろしく。」
ボクは三毛に黒を紹介すると、海神を連れさっさと奥の客間へ入って行った。
ボクが言う「込み入った話」というのは、戦闘になる可能性があるという意味だ。
三毛や他の従者をわざわざ危険にさらすなんて馬鹿げているから、ボクは三毛に皆を近寄らせるなと伝えた。
扉を閉めて侵入者を防ぐための結界を張ると、黒が印を組み、上からもう一つの結界を張った。
時を止めるための結界だ。
「失礼・・・・・。時間が惜しい。僕はあの人と、離れていたくはないんだ。・・・・・要件を聞こう。」
「結界、どうもっ。・・・最初から気づかれちゃってたと思うけど、とりあえず自己紹介しておくよ。」
ボクは神妖の姿を解き妖鬼へと正体を現した。
身長がグッとのびると同時に、瞳が海色へと変わり、白銀の髪がなびく。
「ボクは蒼。君と共に、双凶だなんて呼ばれている妖鬼だ。」
「妖鬼・・・ね。」
黒はボクの言葉に口の端で笑みを見せた。
ボクよりも強力な力を持つ彼には、ボクの魂が完全な妖鬼の形を成していないことが見えている。
それをあえて妖鬼だと言い切ったボクの台詞に、彼は「どこが妖鬼なんだ」と呆れて笑ったのだ。
「僕の事は、黒でいい。・・・・・さっきは少し、驚いた。2年ほど前、海神の元に得体のしれない押しかけ従者が現れたという話は、聞いていたが・・・・・。」
「失礼だなぁ。一体誰がそんなことを言ってるんだ。」
ボクが口を尖らせてそう言うと、黒がフッと鼻で笑った。
「なかなか良い化身を作ったな。君の化身は女だと記憶していたが・・・・こっちも悪くない。それに、かなり高度な術だ。僕以外には見破れないだろう。・・・・君の正体と、海神の封印は。」
「・・・それは、褒め言葉として受け取っておくよ。・・・やっぱり君には全部ばれちゃってたね。連れてきてよかった。」
黒の言葉を耳にしたボクは、思わず彼に鋭い視線を送った。
ボクが女の化身を使っていたことを、海神は知らない。
海神を白妙に託して以来、ボクはあの姿を封じているのだ。
こんな些細なことを海神が訝しむとは思えなかったが、それにしたって、海神の前で触れて欲しい話ではなかった。
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