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宵闇との対峙 3
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宵闇の猛攻を受けているにもかかわらず、落ち着いた様子で、極めて正確な守りの壁を崩さない蒼。
彼の能力の高さと優雅で洗練された動きに、頭の芯を柔らかくしびれさせ、海神は目を細めた。
蒼にとって、繰り返される嵐のような攻撃はうるさいものではあったが、防ぐことが難しいものではない。
宵闇の攻撃は単調で、激情を思う存分にたたきつけてくるだけの、言うなれば幼稚なものだった。
彼を返り討ちにするのは容易なことであるが、海神が彼に対して一切の殺気どころか嫌な気配すら見せず、ただ哀し気に見つめるばかりだったものだから、蒼は当面防御に徹底することを決めていた。
言葉で確かめる必要などない。
蒼は手放しで海神の意志に従うことにしたのである。
だが・・・・・・。
まるで時間稼ぎでもしているかのような、律動的過ぎる宵闇のつまらない攻撃に、決して気が長い方とは言えない蒼は、すぐに飽きてしまった。
暇つぶしに一発くらい喰らわせてみても問題ないかな・・・などと考え、横目で海神の顔色を窺ってみる。
ちょうどそのころ合いで、何かを酷く言いよどんでいた様子の海神がようやく口を開いた。
「待っているのか・・・白妙を。」
「貴様が・・・その名を口にするな!」
海神の言葉に、宵闇はいら立ちを隠そうともしなかった。
怒りのまま、一層巨大な黒い霧の塊を、海神目掛け即座に放つ。
その行為は、海神の言葉が図星であるのだということを赤裸々にさらしてしまっていた。
だが、激昂している宵闇はあまりにも素直だ。
一層攻撃を激しくすることで応え、闇色の豪雨の中へと、真実を力任せに沈めようとする。
・・・・・・蒼と海神がここへ来た直後、宵闇は「また余計な客が増えた」と言っていた。
恐らく彼は、何かしらの理由をつけ、ここから去ることをじわじわと引き延ばしていたのだろう。
そうこうするうちに、これだけたくさんの客人を招いてしまったのだ。
海神の言葉どおり、この結果に宵闇なりの要因があるのだとすれば、思い当たることは一つしかなかった。
都古を含めた子供たちがここにいる。
ならば、彼女たちを救うために白妙が訪れたとして、何か不思議があるだろうか。
もし、邪な術を使わず、純粋に黒を痛めつけることだけに徹底し、今まさに白妙自身が動ける状態であるのならば、むしろ彼女がここへ助けに来ないことの方が不自然だろう。
「姉さんは?」
光弘が固い表情で少女を呼んだ。
蒼と海神はようやく少女の正体を知るに至った。
この少女にどことなく見覚えを感じたのは、光弘少年に似ていたからに他ならないようだ。
「なるほど・・・。これはますます、謎が深まったね。」
蒼は海神の耳を羽毛がなでるかのように、薄い唇でかすかに触れ、楽し気にささやいた。
彼の能力の高さと優雅で洗練された動きに、頭の芯を柔らかくしびれさせ、海神は目を細めた。
蒼にとって、繰り返される嵐のような攻撃はうるさいものではあったが、防ぐことが難しいものではない。
宵闇の攻撃は単調で、激情を思う存分にたたきつけてくるだけの、言うなれば幼稚なものだった。
彼を返り討ちにするのは容易なことであるが、海神が彼に対して一切の殺気どころか嫌な気配すら見せず、ただ哀し気に見つめるばかりだったものだから、蒼は当面防御に徹底することを決めていた。
言葉で確かめる必要などない。
蒼は手放しで海神の意志に従うことにしたのである。
だが・・・・・・。
まるで時間稼ぎでもしているかのような、律動的過ぎる宵闇のつまらない攻撃に、決して気が長い方とは言えない蒼は、すぐに飽きてしまった。
暇つぶしに一発くらい喰らわせてみても問題ないかな・・・などと考え、横目で海神の顔色を窺ってみる。
ちょうどそのころ合いで、何かを酷く言いよどんでいた様子の海神がようやく口を開いた。
「待っているのか・・・白妙を。」
「貴様が・・・その名を口にするな!」
海神の言葉に、宵闇はいら立ちを隠そうともしなかった。
怒りのまま、一層巨大な黒い霧の塊を、海神目掛け即座に放つ。
その行為は、海神の言葉が図星であるのだということを赤裸々にさらしてしまっていた。
だが、激昂している宵闇はあまりにも素直だ。
一層攻撃を激しくすることで応え、闇色の豪雨の中へと、真実を力任せに沈めようとする。
・・・・・・蒼と海神がここへ来た直後、宵闇は「また余計な客が増えた」と言っていた。
恐らく彼は、何かしらの理由をつけ、ここから去ることをじわじわと引き延ばしていたのだろう。
そうこうするうちに、これだけたくさんの客人を招いてしまったのだ。
海神の言葉どおり、この結果に宵闇なりの要因があるのだとすれば、思い当たることは一つしかなかった。
都古を含めた子供たちがここにいる。
ならば、彼女たちを救うために白妙が訪れたとして、何か不思議があるだろうか。
もし、邪な術を使わず、純粋に黒を痛めつけることだけに徹底し、今まさに白妙自身が動ける状態であるのならば、むしろ彼女がここへ助けに来ないことの方が不自然だろう。
「姉さんは?」
光弘が固い表情で少女を呼んだ。
蒼と海神はようやく少女の正体を知るに至った。
この少女にどことなく見覚えを感じたのは、光弘少年に似ていたからに他ならないようだ。
「なるほど・・・。これはますます、謎が深まったね。」
蒼は海神の耳を羽毛がなでるかのように、薄い唇でかすかに触れ、楽し気にささやいた。
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