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1話 真実の愛
私の名前は《カナリア=ミンティア》。
ミンティア子爵家長女で、ここ《ドレスファン国》の王太子の婚約者でございます。
ドレスファン国はとても小さな国でして、周りには大小多くの国が存在しております。貿易なども盛んでして、足りない部分は他国と助け合いながら、今日まで平和に過ごして参りました。
そんなドレスファン国の王太子は第一王子である《ヤロン》様で、私は、ヤロン様の婚約者でした。
まさか私が王太子の婚約者に選ばれるとは思っていませんでしたが、選ばれたからにはしっかり務めを果たさねばと今まで頑張ってきたのですが、まさか、ここまでヤロン様が愚かだとは思いませんでした。
「俺様は真実の愛を見つけた!」
お花畑満開の愛の言葉を吐かれるこのお方が、不服ではありますが私の婚約者であるヤロン様です。
「父に言われてお前みたいな根暗な女と婚約してしまったが、それは間違いだった! 俺様は、本当に愛する女性、《キラリリア》と結婚する!」
「ふふ、私達、愛し合ってるのよ。ごめんねぇカナリア。でも子爵令嬢の分際で王太子の婚約者なんて、そもそもが分不相応だったのよ」
この浮気女のキラリリア様は、《ダイアル公爵》令嬢でございます。
この国一番の権力者のご令嬢で、お顔も華やかでお綺麗で、その豊満な体を強調するようなお洋服を好んで着られるような女性です。キラリリア様は男性方に大変人気があり、ヤロン様も婚約者である私をそっちのけで、ずっと夢中だったと記憶しております。
「根暗なあんたが王太子の婚約者なんて、ひと時でも良い夢が見れて良かったわね」
どのような基準が根暗と呼ばれるのかは分かりませんが、ヤロン様とキラリリア様にとって私は根暗の分類に当たるようです。まぁ私はキラリリア様と違ってお洒落に気を使う人間でもございませんし、普段は楽で動きやすい服装を好んで着ております。キラリリア様と違って甘えた声を出せる人間でもございませんし、色気も皆無でございます。キラリリア様のようで無い方を根暗と分類されるのでしたら、私は根暗なのでしょう。
「キラリリアの言う通りだ、いずれ国を背負う俺様の隣にいる女が、お前のような華やかさの欠片もない女では、俺様の価値も下がってしまうというものだ!」
成程成程。根暗と呼ばれる私では、ヤロン様の隣に立つに不和しくないと。
それはそれは仕方ありませんね、もとよりこの婚約自体、私が望んだものではありません。勝手に陛下に命じられて決められたものですから、ヤロン様が婚約破棄を望まれるなら、それを拒む理由はありません。ヤロン様との婚約が良い夢を見れたと称されるのは甚だ疑問ではありますが、まぁ良しと致しましょう。
「だがな、俺様も鬼じゃない。お前にはこの先、俺様の手先となって働く権利をやろう! キラリリアに地味な事務作業は似合わないからな、お前が今まで通りにやれ! 言っておくが、王太子である俺様の命を断れば、ミンティア子爵家ごと国外追放にしてやるからな!」
「私達のためにしっかり働きなさいよね、カナリア」
――――はい? 婚約破棄を叩きつけた女に、このままここで、貴方とその浮気女の為に働けと仰っているのですか? 朝から晩まで休みなしのこの地獄の環境で? よくもまぁそのようなことを仰れるものです。私だけでなくミンティア子爵家ごと巻き込むなんて、家族を人質にしたら断らないと思っているんですね。まぁまぁ、その思考回路が恐ろしいですわ。
「どうした、さっさと返事をしろ! このノロマが!」
無礼な言い方。令嬢に対する口の利き方ではありませんし、少し返事が遅れたくらいで怒鳴るなんて、ヤロン様のなんて短気なこと。このような方がドレスファン国の王太子なんて、世も末です。あら、いけない。こうやって考え事をして返事が遅くなるから、ノロマなんて言われてしまうんですね。
「おい! 聞いてるのか!?」
「あ、婚約破棄は了承しましたぁ。でも、ヤロン様の手先になるのはお断りしますねー」
私としては当然のこととしてお断りしたのですが、ヤロン様もキラリリア様も大変驚いておられるようで、目を見開いて口を開けているお姿は滑稽でした。
「なっ! いいのか!? 一家ごと国外追放するぞ!?」
「はい、大丈夫ですよぉ。どうぞどうぞ、国外追放して下さいませ」
国外追放されることは予想外でしたが、どちらにせよ、婚約破棄された時点でこちらから国を出て行こうと思っていたので、痛くも痒くもありません。寧ろ、願ったり叶ったりです。
「お前の所為で家族全員巻き込まれるんだぞ!?」
「はいはい、そうですねぇ。これからどこに行くか、家に帰ったら緊急家族会議を開かなければいけませんねぇ」
手っ取り早く隣国にいくのが良いでしょうか? いっそ凄く遠くの国に行くのもいいかもしれませんねぇ。うーん、選択肢が多くて決めるのが大変ですわ。
「現実逃避でもしてる気か!? ドレスファン国を出て、お前ごときがどうやって生きていくつもりなんだ!? 折角この俺様が情けをかけてやったのに断るなど、何様のつもりだ!?」
「お情けなんて必要ありませんので、どうぞお気になさらずに。それとも、私がいなくなったらヤロン様がお困りになるのでしょうか? あれだけ啖呵を切っておきながら? お恥ずかしいですねぇ」
「ふざけるな! お前みたいな女がいなくなっても困るわけないだろう! さっさと消えろ! 二度とこの国に足を踏み入れることは許さん!」
売り言葉に買い言葉、すぐにのってこられるなんて、ヤロン様はまだまだですねぇ。
「かしこまりました。ではご用件はお済みのようですので、これで失礼致します。お世話になった覚えは微塵もありませんが、お世話になりました。ヤロン様、キラリリア様、お元気で幸せにお過ごし下さいませ」
皮肉を込めて満面の笑みで最後の挨拶を交わす。これくらいの皮肉、別に構わないでしょう?
さて、これで私は今日から自由の身です。どこにだって行きましょう。どこに行っても、為せば成る。なんとかなるでしょう。このまま、ここで奴隷のように過ごすよりはマシです。
さようならドレスファン国、願わくば、私がいなくなった後もこのまま平穏が続くことをお祈りしていますね。
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2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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