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しおりを挟む村娘生活10日目ーーー。
この日、リーシャはイマルと2人で、山菜採りに出掛ける約束をしていた。
「今日はありがとうございます」
待ち合わせ場所の広場で、リーシャはイマルに頭を下げ、お礼を伝えた。
「えーで。俺もそろそろ山菜欲しかったところやし」
戦えるイマルは、基本、お肉も山菜も必要な時に村から出て、自分で取りに行く。
その際、食べ切れないお肉等を肉屋に卸したりして、お金を稼いでいた。
「少しは食べれる山菜とか覚えたんか?」
「いえ、まだ余り……。ゲンさん達に教わりながら、何とか頑張っています」
ゲンさんとは、村での山菜採りのエキスパート。
以前リーシャと一緒に山菜採りに行き、恋の駆け引きのワードを教えた相手でもある。
「ゲンさんまだまだ元気やからなぁ」
山菜採りは、村の外には出るが、あまり遠くには行かず、近場で行う。が、魔物のへの遭遇を危惧し、安全の為、戦える人を1人は必ず連れて行く事になっている。
「ゲンさんは昔、魔物を狩っていたと聞きました」
「もお歳やからな。そろそろ落ち着いて貰わな」
若い頃はバリバリに斧を振り、魔物を狩っていたらしいが、御歳60歳。
一線は若い者に任せ、山菜採りの方に移動した。が、戦いの勘はまだ鈍っておらず、魔物が出た際には、率先して前衛に向かうらしい。
幸運な事に、リーシャは山菜採りではまだ魔物に遭遇しておらず、平和にしているが、いつ、魔物が出るか分からないので、用心に越した事は無い。
「聖女さんのお陰で、大分魔物も落ち着いたさかいなー」
聖女は、王宮に仕える騎士や魔法使いと共に、魔王を倒し、世界に平和をもたらした。
「それは良かったです」
「ま、それでも魔物はまだいるし、油断したらあきまへんで。絶対!1人で外に出たらあかんで!」
「はい。分かりました」
リーシャは素直に頷いた。
「ちょっと!イマル!!」
2人で並んで歩き、そろそろ、村を出る出口に差し掛かったところで、後ろから声が聞こえ、2人は振り返った。
「カリン」
イマルは、振り返った先にいた人物と面識があるようで、彼女の名前を呼んだ。
緑の髪にカチューシャを着けた、オレンジの瞳。リーシャ、イマルと同年代に見える17歳の若い女性。
カリンは、ムスッとした表情のまま、ズケズケとこちらに歩み寄った。
「どこ行くのよ?!」
「どこって、山菜採りやんか」
「何でその女と2人っきりで行くのよ?!」
ぎゃんぎゃんと大きな声でイマルを責める。
「何言うてんねん。カリンとやって普通に行くやろ」
「!私は……!いいの!幼馴染なんだから!」
「何の理屈やねん、それ」
怒涛の口数を、イマルは呆れながら受け止めた。
キッと、矛先を変え、リーシャを睨み付けるカリン。
「何なのあんた…?!」
「えっ…と、初めまして。リーシャ=ルド=マルリレーナと申します。以後、お見知り置きを」
戸惑いながらも、丁寧に自己紹介する。
「ほら、カリンもちゃんと挨拶しぃ。村の子供でもちゃんとしてる事やで」
イマルは、睨み付けたままのカリンの頭を軽く叩くと、挨拶を促した。
「……カリン!」
「カリン……よろしくお願いしますね」
睨み付けながら、名前だけを告げる、不躾な態度を続けてられているが、リーシャは涼しい顔で、笑顔で、手を差し出した。
「カリン」
中々手を出さないカリンを諌めるようイマルが声をかけると、渋々だが、リーシャと握手を交わした。
「それで、もー邪魔やから帰ってくれへんか?」
「はぁ?!何でそんな事言うの?!カリンの事追い返すの?!酷い!ろくでなし!」
腕に引っ付いて離れないカリンに、イマルは鬱陶しそうにハッキリと告げるも、聞き入れる様子は無く、大きな声で非難の声を上げた。
「今日、パパにお肉を仕入れて来てってお願いされて、イマルと一緒に行くって言ってあるの!」
「はぁ?!肉?!ガッツリ魔物退治やんか!聞いてへんわ!」
「もおパパと約束しちゃってるの!」
「何でやねん!大体、魔物退治やのに何でカリン連れて行かなあかんねん!ハッキリ言うて足でまといや!!」
ギャギャーと言い争うを始める2人。
その隣で、1人、リーシャは違う事に衝撃を受けていた。
(もしかして……前、私が魔物退治について行ったのは、迷惑だったのですね!!)
確かに思い返せば、怪訝な表情を浮かべられていた気がする。
「兎に角!今日は行かへん!先約が優先や!」
「酷い!私が魔物に襲われてもいーの?!イマルが一緒に来てくれなかったら、カリン、1人でも行くから!」
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