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しおりを挟む「それはノルゼスさんが悪いよ。お姉ちゃん、可哀想…」
グサッ!!と、8歳の男の子の純粋な言葉がノルゼスに突き刺さる。
「大体、お姉ちゃんは過保護なのも望んで無いのに、やることなすことお姉ちゃんには何もさせないで、全部ノルゼスさんがしちゃって。挙句の果てに、過保護集団からやっと抜け出せたと思ったら、自分を連れ戻しに来たみたいに言われて……そんなの、気が気じゃ無いよ。しかも、好きな場所や人の悪口言われて、頑張って作った祭りのイヤリングをゴミか。で壊されてーー」
事細かにノルゼスから事情を聞いたサクヤは、問答無用で次から次へと言葉を投げかける。
「俺もイヤリング壊したんは知らんかったわ…」
引くわ。とばかりに1歩下がるイマル。
「本当にゴミかと思ったんだ!」
「ノルゼスさん?」
ノルゼスの発言に冷たい眼差しを受けるサクヤ。
「ち、違う!勿論、リーシャが作ったとなれば、話は別だ!それは国宝級の物にまで駆け上がる!」
「そーゆー問題やないけど……」
「誰が作ったにせよ、一生懸命作った物をゴミだ。なんて言って捨てるのは良くないんだよ」
「す、すまない…」
8歳児に真っ当な事を言われ、項垂れるノルゼス。
「だが、私は本当に、リーシャの幸せを願ってーー」
「お姉ちゃんの幸せはこの村にいる事なの。帰る気無いんだよ」
(サクヤはん、めっちゃストレートにいくな)
言いたい事をストレートにズバッと言うサクヤに、イマルは感心した。
「そんなっ!!リーシャの幸せは…ここでは、無いのに…」
だが、それでもノルゼスは納得行かないようで、また同じ様な事を言う、堂々巡り。
「ノルゼスはん。俺等今からリーシャはんとこ行くから、一緒に行きましょか」
「えーー?!やだよ兄ちゃん!お姉ちゃん絶対嫌がるよ!」
ノルゼスを誘うイマルに対し、サクヤは本気で止めた。
ストレートな物言いが、またもグサッと、ノルゼスの心に突き刺さった。
「流石にノルゼスはんもそんな頭悪くないやろ。また、傷付くような事言いませんよな?」
「勿論だ!」
「そうかな……また空気読まず、余計な事言い出して、お姉ちゃんを傷付けそうな気がするけど……」
最早、最初の冒険者への憧れはどこへやら、サクヤのノルゼスに対する信頼はゼロだった。
「今度、リーシャはんの傷付くような事言いそうやって思ったら、どついて止めてええか?」
「ああ!頼む!」
本人もリーシャを傷付けている自覚がある為、イマルに対し、すぐに了承した。
「よし。ええか?昔のリーシャはんがどーやったんかは知らんけど、きちんと、今のリーシャはんを見るんやで」
「今のーー?」
「ほんまにリーシャはんの事を思ってるなら、分かるはずやで」
イマルはノルゼスに対し、真剣に忠告した。
「……ほんと、イマル兄ちゃんってお人好しだよね」
そんなイマルに対し、サクヤは呆れたような、でも、彼らしいその姿勢に、笑顔を浮かべた。
***
リーシャ宅。
「わぁ!凄いお姉ちゃん!可愛いー!」
「松ぼっくりだ!」
「こっちにもあったー!」
家のあちこちに飾った木の実や木の葉で作ったキーホルダーやアクセサリーを、村の子供達は、宝物を見付ける感覚で探し、見付けると、笑顔を浮かべた。
(良かった……喜んでくれて)
そんな村の子供達の様子を見て、リーシャはホッと胸を撫で下ろした。
「良かったねぇリーシャちゃん。子供達喜んでくれて」
「マルシェ」
子供達の付き添いで、一緒に村を回っているマルシェは、リーシャの肩に触れながら、笑顔を見せた。
「マルシェが色々、私に教えて下さったからです」
作り方やら何まで、物覚えの悪い私に対して、時間を割いて、諦めずに最後まで面倒を見てくれた。
「何言ってんだい!ここまで頑張ったリーシャちゃん自身の功績だよ!村の子供達の為に、ありがとうね!」
「…!はい。嬉しいです」
褒めて貰えた事、一生懸命作った物を喜んで貰えた事が、とても嬉しくて、胸がいっぱいなる。
自分一人で、最後まで何かをやり切ったのは、リーシャにとって初めてだった。
当初、祭りの準備しか手に付かず、食べ物やお金の確保を忘れたり、睡眠を削り、フラフラになったり、普段の生活だけでも難しいのに、そこにプラスアルファで何をする事が、こんなに大変な事だとは思っていなかった。
自分の生活と並行して、何かを行う事がこんなに難しい事だったなんて……普段、やり遂げている人達は皆さん、天才ですね。
村の人達の支えあって、やり遂げる事が出来た。
「お姉ちゃん、ありがとー!」
「バイバイ姉ちゃん!」
「こちらこそ、ありがとうございました。さようなら」
玄関先、アクセサリーやキーホルダーを手にした子供達は、笑顔でリーシャにお礼を言うと、家を後にした。
リーシャもまた、手を振り、笑顔で見送る。
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