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⑯カステラとコーヒー-6-
しおりを挟む初めて作ったカステラは甘くてしっとりとしていた。
「美味しい~」
プロが作るものとは違う、手作りでしか出せない素朴で優しい甘さと食感に紗雪は感動の色を含んだ声を上げる。
「素朴な甘さ、焼き上がったカステラのスポンジのきめ細かさ、柔らかいのにもちっとした食感。これなら母上だけではなく父上も喜ぶだろうな」
侯爵家に居た頃の自分が食べていた焼き菓子やケーキは砂糖と蜂蜜を多く使っていたものだから、甘過ぎて飲み込むのも辛かった。
喉が焼け付くような甘さになってしまう菓子を食べる行為は、レイモンドにとって苦行の一つだったと言ってもいい。
「俺の意見としては、カステラには砂糖が入っていないコーヒーが合うと思う」
「私は砂糖が入っていないカフェオレがいいわね」
「・・・・・・判断するのは母上だ」
「そうね」
一応、お茶会に出すお菓子が出来たのだから、侯爵夫人に会いに行きましょうか?
「・・・ああ」
(母上の事だから『異世界にはカステラを使った甘いお菓子があるのでしょ?それを食べてみたいわ♡』って言いそうだな)
レイモンドの予想は当たってしまうのだった。
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