思い上がりの勇者パーティーに女神の裁きを

はなまる

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第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました

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 アシュトンパーティーとリゼ率いる 親衛隊は、 最前線を突き進みます。
 マチルダパーティーと他の冒険者パーティーは、 遊撃隊としてそれぞれ得意を 活かした戦い方をしています。 火力が高いパーティーは 最前線へと赴き、 守備が得意なパーティーは町の近くで 防衛戦に準じていました。
 私とガルヴァスと ジェラートは、 最前線が見逃した魔物 各個撃破していきます。
 次々に葬られていく魔物たち。 それでも終わりが見えません。
 回復魔法で 体力や魔力を維持できても、 心身に疲労は蓄積していくものです。 空腹感や睡魔も 無視できません。
 昼間の勢いも、 日が沈み辺りが真っ暗になれば、 徐々に失われていくことになります。
 夜の闇は魔物の時間帯です。 動きが鈍くなっていく人族に対して、 魔物はますます活性化していきます。
 魔法で空腹や睡魔を紛らわせることはできますけど、 それは一時しのぎにすぎず、 長期戦を覚悟しなければいけない今の状況では悪手でしかありません。
 ローテーションで 一時的な休息をとることになりました。 でも精神的に昂っていて、仮眠を取るのがままなりません。
 精神を安定させる【 サニティ】の 魔法をかける必要が出てきました。 そうすると回復に手が回らなくなり、 徐々に手詰まりになってきます。
 
 私以外にも癒し手はいます。 だけど私がここで手を抜けば、 一気に瓦解してしまうのも事実なのです。

「っく・・・・・・!」

 目眩がしてきました。 無限の魔力とはいえ、 人間の身で魔法を発動させ続けるのは無理があるようです。

「 ルナマリア、いい加減に休め!」

 ガルヴァスは、 私を心配して声を荒げていました。

「 僕が回復して回ることにしました。 聖女さんは寝た方がいいと思いました」

 ジェラートが私に匹敵する回復魔法を使えるのは分かっていますよ。 でも、【神の眼】で 全ての状況を正確に把握することができるのは私だけなんですよ。 彼に私の代理を頼むにしても、 私が指示を出す必要があるのです。

 人間には限界があります。 一人で何もかもできるわけではありません。 私が身体強化の魔法で魔物と戦うよりも、 戦士の人に強化魔法をかけて戦ってもらった方が より効率がいいのです。
 私の体力は普通の町娘並みで、 聖女の制限により攻撃魔法が全く使えません。 それでも補助魔法と回復魔法が人の役に立つというのなら・・・・・・。

「 無理を押し通してみせます!」

 とはいえペース配分を考えないと、 エレファントデビルの時の アシュトン のように倒れてしまいますからね。 疲労回復を心がけます。
 甘いお菓子に舌鼓を打ちたいだけじゃないですよ。 本当ですよ?

 などと冗談を考えられるほどの余裕はありますよ。 心配しないでくださいね。




 アシュトン パーティーは未だに戦い続けていました。 いつもなら常に全力攻撃で今頃バタンキューのはずですけど、エイミアが 指示を出して うまくコントロールしているようです。

 リゼは 頃合いを見て、 休憩を取っていました。 食事は山盛りで、 こんな状況で爆睡できるとは、 図太い神経をしていらっしゃいますね。 さすが女王陛下といったところです。

 マチルダパーティーは最前線から 防護壁周辺へと、 休憩で手が回らなくなったところ に駆けつけていました。

 マチルダといえば、 ジェラートの転移魔法があるから、エイミアの 作戦を考慮に入れてもいいのですよね。 彼女達は今でも 駆け回っているから、 山の中で魔物と追いかけっこをするのも大して変わらないことでしょう。
 
 ・・・・・・いえ、 さすがに意味合いが違いますけどね。

 ただその作戦を実行する場合は、 ジェラートの転移魔法を誰かに見られないかが心配なんですよね。 それにおバカさんなアシュトンと違って、 マチルダを説得するのは骨が折れそうです。

 しかし、現状維持では何被害者が出てしまうことでしょう。 何か打開できる最善の手を打つ必要があるのです。



「 人の命とお主の下らない恥じらい、どっちが大事なのじゃ?」


 そうですよね。リゼの 言うとおりです。
 私は彼女の言葉を思い出して、 決意を固めました。
 なりふり構ってはいられませんよね。 私にはこの状況を打開する奥の手があるのだから、 今使わずにいつ使うというのですか!

「ガルヴァス、 ジェラート。 私は最前線に行かなければならないので、 道を切り開いてください」

 私がそうお願いすると、ガルヴァスは 迷うような表情になりながらも最終的には頷いてくれました。

「ああ、 分かった」
「 僕もお手伝いすることにしました」

 ジェラートも協力してくれるようです。 彼はアシュトンを圧倒するほどの実力者だから心強いですね。
 私は 私のやるべきことに専念できそうです。




 ジェラートの転移魔法を人に見られるわけにはいかないから、【 テレポート】を 発動してもらうわけにはいきません。
 やはり私が【ホーリーディメンション】を発動して、 最前線にいる アシュトン の所に転移するしかなさそうですね。

 聖女の魔法を知らない人がいて、 私が魔族扱いされるという厄介な展開はありませんよね。 そのネタはすでにやっているから受けませんよ。 皆さん、信じていますからね。

 でも同じことを繰り返すテンドン・・・・・・いえ、 なんでもないったらないのです。



 その前に、 マチルダにも用があります。 私は彼女のもとに転移しました。

「 マチルダさん、【 魅了】スキルを私にください」
「 どういうことよ?」

 私は 女神の裁きにより、勇者のスキルを奪い取ることができるのです。 そして、 本来術者中心でしか発動することができないスキルも、 聖女の力で遠隔操作することが可能なのです。

「 スタンピードを収束させるために必要なことなのです」
「 分かったわ。持って行きなさい」
「 マチルダさん、すみません」
「 いいのよ。 むしろ、私の尻拭いをさせてごめんね」

 マチルダは根は悪い人ではないのでしょう。 ただチヤホヤされたいという承認欲求が強かっただけなのです。
 この選択は、余計に申し訳なくなってしまいますね。
 でも彼女がまいた種なのですから、 自業自得だと思ってもらうしかありません。

「彼の者の 悪しき力を奪いされ! 【 ホーリースティール】!!」

 私はマチルダの【魅了】スキルを、魔法で 奪い取りました。 このスキルを 山に向かって発動すれば、 徐々に魔物が山に向かって移動するはずです。
 しかし、それだけでは足りません。 既に乱戦となっている魔物の群れは、 死ぬまで攻撃を止めないことでしょう。


 
 私は握りしめているヘビーメイスを見つめました。
 こんな時でも恥ずかしいと思ってしまうものなんですね。
 パブリックイメージというのは言い訳に過ぎません。 やはり女の子ですから、 男性の目というのは気になるものです。
 それでもリゼの言うように、 人の命には変えられませんよね。



 私はガルヴァスと ジェラートを 引き連れて、 アシュトンたちがいる場所に 転移しました。 そして、すぐに指示を出します。

「 この魔法は詠唱時間が長くて無防備になるので、 その間私のことを守ってくださいね」
「? よくわからんけどわかった。 要するにルナマリアに近づいてくる魔物を倒せばいいんだろ」
「 アシュトンが言うなら間違いない」

 アシュトンとシルフィーユは相変わらずですね。 おかげで緊張がほぐれましたよ。

「【 パーフェクトバリアフィールド】!」

 ジェラートの防御魔法のおかげで私が攻撃されることは ありません。 でも気が散らないように、なるべく魔物は近づけないでくださいね。

 ガルヴァスは マチルダの扱いのせいで自信がなさそうだったけど、リゼに 負けない膂力と 歴戦の戦士と言った戦闘技術は 誇ってもいいと思いますよ。 純粋な剣だけの勝負なら、 ひょっとしたらアシュトンにも勝てるかもしれません。
 エイミアは 最大火力の攻撃魔法だけでなく、 小賢しい足止め魔法も得意だったのですね。

「 小賢しいって言うな!」

 おや、 思わず口に出してしまっていましたか。

 いい意味でリラックスできましたね。 これなら、奥の手を成功させることができそうです。

 私は魔物の一体にヘビーメイスで殴りかかりました。

「 退却せよ! 【 バニッシュ】!!」

 魔物の一体に ダメージを与えることで、 恐怖心を増幅させ、 魔物を複数単位で撤退させることができる、神聖 魔法です。

 果たして、魔法は成功したのでしょうか。
 魔物たちの攻撃が止まり、 山に向かって敵前逃亡を始めました。
 【 バニッシュ】だけでは 魔物の群れが逃亡するスペースがありません。 山に 向かって【魅了】スキルを発動させることで、 後方にいた魔物たちが 山へと向かい、 僅かながらに移動できるだけの空間が生まれたのです。

「 まだ終わりではないぞ!」

 リゼが 油断しないように注意しました。

「 他国に流れようとする魔物を殲滅するのじゃ」

 魔物たちが国境近くに流れ出したら、国際問題になってしまうかもしれませんからね。リゼは あらゆる場面を想定して対応しています。

「 ルナマリア、よくやったの」
「はい・・・・・・」

 私がリゼの 褒め言葉に答えると、 何故か彼女の姿が傾き出しました。 周囲の景色も斜めになって・・・・・・。

 私はどうやら限界だったらしく、 意識を手放しました。




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