思い上がりの勇者パーティーに女神の裁きを

はなまる

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第1章 勇者を裁くだけの簡単なお仕事を始めました

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「 フレアリーゼ女王陛下、 例の約束の件ですけど・・・・・・」

 エイミアが 揉み手をして、リゼに 催促しました。
 確かスタンピードの対策で活躍することができたら、 改めて宮廷魔術師を名乗れるという話でしたよね。
 エイミアは 十分な働きをしましたよ。リゼも 認めてくれることでしょう。

「うむ。エイミアよ、 そなたが宮廷魔術師を名乗ることを 承認するのじゃ」
「 ありがたき幸せにございます」

 エイミアは よほど嬉しかったのか、 眩しいほどの満面の笑顔で喜びを表していました。
 随分と可愛らしい表情ができるじゃないですか。 いつもこうなら、可愛げがあっていいんですけどね。
 万歳三唱まで始めましたよ。
 ちなみにですね、 万歳は手のひらを 内側で向き合うようにしなければいけないんですよ。 両手を上に上げて 、手のひらを正面に向けるのは降参のポーズだそうですよ。
 エイミアの 手のひらはリゼの方に向いていました。 まるでこれから行われる、リゼの 悪魔のような囁きを予感させるようですね。

「 ではこれからも宮廷魔術師として、 勇者パーティーのサポートを頼むのじゃ」
「はい?」

 エイミアは 言葉の意味をすぐには飲み込めず、 ぽかんと口を開けて目を丸くしていました。
 エイミアは 周囲に宮廷魔術師と名乗ることを許されました。 しかし、王宮に勤めることはできず、 アシュトンのパーティーで 冒険者家業を続けなければならないのです。
 永久に。
 エイミアの 出世の道は絶たれました。

「そんなのないわ!!」

 エイミアは 床に手をついて崩れ落ちました。
 
 泣いてもいいんですよ?
 実際口に出すと 怒り狂うでしょうから、 慰めの言葉はかけませんけどね。


 リゼは、 シルフィーユの方に向き直りました。

「 シルフィーユよ」
「 何でしょうか」

 シルフィーユは凛々しい顔で対応しています。 随分余裕がありますね。
 彼女がアシュトンの言葉に追従する以外で 口を開くの を久しぶりに 見た気がします。
 アシュトンさえいればどんな拷問でも耐え切って見せることでしょう。

「 シルフィーユには この国の騎士団と一緒に訓練をしてもらうのじゃ」
「 謹んでお受けいたします」
「では 早速、お主一人で騎士団の宿舎に 向かうのじゃ」
「へ?」

 シルフィーユは 命じられた内容を理解できないのか、 きょとんとした表情で間抜けな声を漏らしました。

「 聞こえなかったのかの? シルフィーユのみ、 一か月間にわたって騎士団の訓練に参加してもらうのじゃ。 その間、外部との接触は許されんからの」

 リゼの 説明を聞いて、 シルフィーユは青ざめました。
 それはつまり、 シルフィーユは一か月の間、 アシュトンに一切 顔を合わせることができないということなのです。 彼女にとって一番の罰だと言えるでしょう。
 
「 アシュトンがいないなんて死んでしまう!?」

 人に会えないだけで命がなくなってしまうわけがないじゃないですか。
 私にはすでに仕返しをする気はないので、許してあげてもいいのですけどね。 狂気に満ち溢れた 表情を浮かべているリゼを、 どこにでもいる普通の聖女の私が止める術はありませんでした。
 


 アシュトン達3人がいなくなった後で、 私は旅支度を始めることにしました。
 洋服をたたんで 道具袋に仕舞い込みます。 もちろん、非常食の用意も忘れませんよ。 いつ使うのかわからない冒険者セットというものもあります。
 リゼのように 収納魔法が使えればいいんですけどね。 聖女といってもさすがに万能ではないのですよ。

「 収納魔法が使えれば旅の途中でも、毎日美味しいお菓子が食べられるんですけどね」
「 ルナマリア、願望が声に出ているぞ」

 おっと、 これは失礼しました。
 笑ってごまかせませんか。そうですか。

 リゼは 収納魔法で新しい道具袋を取り出して、 私に手渡してきました。

「 物を腐らせずにある程度は収納できる魔法の道具袋じゃ。 餞別として持って行くが良い」
「 ありがとうございます」

 私は舞い上がって 、喜びのダンスを踊ってしまうところでしたよ。・・・・・・ 黒歴史を増やすような真似はしませんけどね。
 甘いお菓子は心の栄養源なのです。 女の子に必須なものなのです。
 リゼは 歳の割にはわかっていますね。

「ほう? いらないようじゃの」
「 いりますよ! ごめんなさい」

 私が深々と頭を下げると、リゼは なぜか私の頭を撫でました。

「 達者でな」
「はい。リゼも お元気で」

 こんなに仲良くなったのだから、 本当はずっと一緒にいたいです。 でも、お互いに立場というものがありますからね。 ここでお別れしなければなりません。
 リゼは ずるいです。 不覚にも涙が出そうになったじゃないですか。



 ガルヴァスとは 冒険者ギルドの前で待ち合わせしています。 受付嬢の オーラナに 挨拶を済ませて、 出発するのです。

「 ルナマリアさん、もう旅立たれてしまうのですね。 寂しくなります」
「 私もです」

 とうとうダムが決壊してしまいます。 私とオーラナは、 涙で顔がぐしゃぐしゃになってしまいました。
 本当はずっとここにいたいです。 でも私がいつまでも近くにいたら、 アシュトンの成長を妨げてしまいます。 どうしても甘やかしてしまいますからね。

「オーラナさん、 この後仕事どうするんですか?」
「 ルナマリアさんこそ、 多くの民衆から見守られる中旅立てるのですか?」

 他の受付嬢や冒険者の方々は、私たち二人をそっとしていてくれました。
 ・・・・・・ 後でギルドマスターに怒られなければいいのですけど、 後の祭りですよね。

 落ち着いたところで涙を拭い、オーラナは 優しい笑顔で私を送り出してくれました。

「 いってらっしゃい」
「 行ってきます」
 


 ガルヴァスは、 私の涙が止まるのをずっと待っていてくれました。

「 もう大丈夫だな?」
「はい」
「 準備は済んでいると思うが、一応確認するぞ。 着替えや非常食はちゃんと用意してるな?」
「 もちろんです」

 聞かれるまでもありませんよ。 私は胸を張って答えました。

「では 次だ。所持している ポーション類の種類と本数を答えてくれ」
「ほえっ?」

 ガルヴァスの 質問に、 私は思わず首をかしげてしまいました。
 ポーションは今まで一度も使用したことがないんですよね。

「 持ってません」
「 今まで、どうやって冒険してきたんだ!?」
「 聖女には女神による無限の魔力があるので、 今まで何とかなってきました」
「この バカ! 女神の力に頼りきったことで、 お前はスタンピードの時に倒れたんだろ! 体力や魔力だけじゃなく、 気力の温存も考慮しなければいけないんだからな」

 ガルヴァスの 言うとおりです。 反省しなければいけません。

「 アシュトンのことは言えません。 私も常識知らずだったんですね・・・・・・」
「 これからゆっくりと覚えていけばいいだろ。 俺がちゃんと教えてやるからな」

 やっぱり、ガルヴァスはお父さんみたいですね。 怒らせることはわかっているから、 言葉にするような 真似はしませんけどね。
 私は笑顔でお願いすることにしました。

「はい! これからも、優しく教えてくださいね」
「 そのセリフは色々と誤解を招くから、 他の野郎の前で絶対に言うなよ」
「ガルヴァスさんに だったらいいんですね?」
「 俺の前でも駄目だ! ・・・・・・ほら、 いいから行くぞ」

 ガルヴァスは焦るような表情をして、歩き出してしまいました。 私は歩幅が違うから小走りじゃないと追いつけません。

 待ってくださいよ。 何をそんなに怒っているんですか。
 男の人って謎です。

 




「 ルナマリアの冒険は、もうちっとだけ続くのじゃよ」

 リゼは、 誰に向かって報告しているのでしょうか。


 私の本当の冒険は、訳が分からないまま始まるのでしたーー。



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