後宮にて、あなたを想う

じじ

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137 皇帝の胸のうち

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「陛下にそのようなお言葉を賜り…いえ、申し訳ございません」
「なぜ謝る」
「お二方とも…私にとっては娘の仇でしたが、陛下にとっては大切なお妃方に変わりありませんのに…そのようなお言葉を…申し訳ございません」

その言葉を聞いた皇帝は、なんとも言えない表情をした。

「そう…だな」

そう一言つぶやくと皇帝は黙り込んだ。
沈黙がその場を支配するのに耐えかねて、思わず黄怜は尋ねた。

「どうかされましたか、陛下」

その声を聞いた皇帝は、頭を軽く振ると侍医をまっすぐ見つめた。

「いや、そうだな。私はきっとその時にそなたを罰しなければいけなかったのだろうな」
「どのような意味でしょうか」
「本当はな…薄々気づいていたのだ」

突然の皇帝の言葉に侍医と州芳は訳がわからないと言った表情をする。その二人の視線を受けて皇帝は話し始めた。

「柳栄が後宮をまとめてくれていた時でこそ陳家の姉妹姫はまだ落ち着いていたが…彼女が亡くなったことに対して、律佳があまりに気が塞ぎ込んでいて食事も取れない、と女官から報告を受けてな。ある日、忍びで彼女の元を訪れたのだ。その時、亡くなった柳栄のことを口汚く罵って笑い合う陳家の姫君達を見かけたのだ。もちろん彼女達は私に気づいていなかったが。」
「それほど愚かな…」
「ああ。甘やかされて育てられた彼女達は正直目に余った。だが彼女達に周囲の人間に好かれるように教え諭すだけの愛情を私は持てなかった。柳栄は私の前妃達の中で特別な者だった。その死を嘲笑う彼女達が少々不審な死を遂げたところで、真相解明に躍起になれるはずなどなかった。
ましてや、真相を解明すれば私が信をおく侍医や侍医女官の首を刎ねなければならない可能性があったからな」
「…」
「子のこととて罪なき幼い者達には不憫であったが…彼女らの生んだ子を愛せる自信はなかった。」
「誠に申し訳ございませぬ。どのような罰でも甘んじてお受けします。ただ、どうか州芳だけは…彼女が紅霞の実妹だと気づいた私が無理やり手伝わせたのです。彼女の情に訴えかけて」

侍医の言葉に頷くと、皇帝は改めて問うた。

「一つ聞きたい。そなたはいつも職務に忠実だった。そんなそなたが当時、水月を害した後も私に嘘をついた理由はなんだ?」

それは黄怜も不思議に思っていたことだった。
湖月を害した後だけなら分かる。まだ水月が残っているのだから。だが二人を害した後、この侍医が嘘をついた理由が分からなかったのだ。
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