後宮にて、あなたを想う

じじ

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150 皇帝の言葉

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「それはどのような…」

訳がわからないという表情で訝しげな顔をした二人に皇帝は再度告げた。

「怜はあなたあなた方の娘ではないと申し上げた」
「な…」
「先程から怜のことを娘のように話しておられたからな。訂正させていただいたまでだ」
「どういうことなの!?」

淡々と話す皇帝に、母親が狼狽したように喚いた。先ほどまでの淑女然とした受け答えが嘘のようだ。だが一方でそれは黄怜が見慣れた母親の姿でもあった。

「怜は私が産んだ子よ。この子に何か功績があるというならその全ては私たちのおかげなのよ。それなのに私達の娘じゃないなんて、どういうつもりで仰ってるの!?」

皇帝に対する目に余る無礼に黄怜が青ざめて母親を嗜めようとした瞬間、皇帝が黄怜の背中に手を当てた。驚いて皇帝を見上げると目だけで黙っているように、と伝えられる。

「怜も何か言いなさいよ!あなたは私達のおかげでここまで育ったのよ。その恩も忘れて黙り込むなんてどういうつもりなの?この親不孝者」

ぐっと唇を噛み締めた黄怜を気遣うように見つめながら皇帝は低い声で答えた。

「話しているのは私だ。言いたいことがあるなら私に言え。勝手に私の妃に話しかけないでくれるか」

微かに怒気を孕んだ物言いに、母親が青ざめる。

「で、では陛下。怜が私達の娘でないというのは…」

父親がとりなすような笑みをうかべながらも声を震わせて尋ねると、皇帝はにやりと不敵な笑みを浮かべて答えた。

「とある事情で黄家の養女となった。それに伴って蔡家とは縁が切れている。今は本人も黄怜と名乗っている」
「そんな勝手な…私達に知らせの一つも寄越さずこの親不孝者が」

先ほどまでは辛うじて皇帝に媚びへつらうような笑みを浮かべていた父親も、今は頬を引き攣らせながら黄怜を詰った。その様子を見て再び皇帝は淡々と告げる。

「私が話していると奥方にも言ったはずだ。言いたいことがあるなら私に言え」
「で、では陛下。蔡家から嫁がせた私達の娘を勝手に他家の養女となさったご理由をお聞かせいただけませんか」
「なんだ、黄家の娘では不満か」

揶揄するような物言いに父親は慌てて頭を振った。

「まさか。黄家と縁戚関係になれるのであればこれ以上の幸せはございません。ですが先ほど怜は蔡家との縁を切ったと仰いましたので…どのような経緯があったのか知りたいのです。通常であれば他家の養女になるとしても実家と縁までは切らないはず…」

畳み掛けるような父親の言葉に皇帝はさも愉快そうに答えた。

「よく分かっておられるじゃないか。そうだ、通常ならば実家と縁を切らせることなどしない」
「あの…どのような意味でしょうか」

震えるように呟いた父親に皇帝は酷薄な笑みを浮かべて答えた。

「蔡家の領地は直轄地に戻す、そういえば分かるか」


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