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四章 地下迷宮

十一話 迷宮大冒険 Ⅱ side:六華

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「ここって、貴女のおうち……なんですよね?」
「家、と言うより……寝床のような気がしますが。ずっと意識が無かったので」
 そうでしたね。うっかりしていました。ですが、迷宮主家主なことに変わりはないでしょう?
「それはそうですが……」
 呑気に喋ってはいますが、一応戦闘中です。私は端で様子をただただ眺めているだけですが。初めは私もやろうとしたのですが、他でもない氷華に止められてしまい。することが無くなった私は雑談に興じているという訳です。
「この迷宮、どうして淫植物が多いんでしょう……」
 分かってはいるのです、一応。しかし、決めつけは良くないでしょう?本人の意思でなく、本能だと言うなら責めるのはお門違いですし。
「それは……私の所為、ですね……」
 それだけでは無いと思うのですが、私の思い違いでしょうか?私が思うに、元から居たもの・氷華が生み出したもの・引越してきたもの、と三種類に別れている気がします。特に根拠は無いのですが……全体的に青っぽいものは、モロに氷華が生み出した淫植物だと思うのです。水晶っぽいものは元来の住人。そして、緑色の明らかな植物に見える淫植物は外来種、の三つ。
「言われてみれば……そうかもしれません」
 ですよね?
 御兄様を食べたのは緑色、御姉様に絡みついていたのも緑色……そして、この迷宮で襲ってきたのも全て緑色。他の緑以外の淫植物や魔物は大人しい。
「ですが、やはり私にも一因はあるかと……。いくら意識が無かったと言えど、あなた方を貪った事実は変わらないでしょう。あのもの達が吸収した精は、私が無意識下で奪っていたのですから」
 それは、まあ。
 恐らく、私たちを閉じ込めた結界、あれも本能が求めたがゆえのものでしょうね。今更どうこうは言いません。
 微妙に御姉様が仰っていた事と事実がズレているような。まぁ、良いですけど。本人がこう言っているのですし。
 ……というかこの人、渋いといですねぇ。さっさと倒されるなり、精神折れるなりして欲しいんですが。早く御兄様と合流したいので。
 もうそろそろ、私も出ていいですよね?氷華は確かに強いのですが、性格が災いして、確実な一手を出せないでいるのです。だから、時間が掛かる。
「どいてください、もう待てません」
「ですが!」
「どいて、くだ、さい」
 強調して言うと、渋々と本当に渋々と後ろに下がった。
 ──水晶竜とはいえ鱗はまだ柔らかい。生まれたばかりなのでしょう。一思いに楽にしてあげましょう。
 清らかな聖なる魔物、それが水晶竜。しかし、我を失えば邪竜となる。未だ幼いというのに……。
「その命を貰うこと、許してくださいね」
 邪竜には光が有効……であれば、天之光あまのひかりを用いた刺突技が良いでしょう。魔力はだいぶ消費しますが。
「ボケっとしないでください!上です!」
 分かってますよ。
 グバァと大きな口を開け、私に向かって急降下してきた。ので、その口目掛けて、光を纏わせた刺突を繰り出す。
 硬質な感触とともに、けたたましい叫びが空洞内に響く。
 あまりにうるさいので刀を引っこ抜き、地面に向かって鼻から顎を串刺しにした。刺した刀はそのままに、もう一振の刀で首を切り落とす。
 ……ふぅ、静かになりました。
 この鱗、何かに使えそうですし、亜空間に仕舞っておきましょう。
 ところで、さっきずっと私たちを見ているモフモフは何なんですかね?特に害は無いのでほっといてますけど。迷子?遊んで欲しいとか?……さすがに偏見ですね。子どもだからと言って決めつけは良くないでしょう。
 ──じいぃ。
 視線が凄い。穴が開きそうです。
 試しに振り返って彼女?を凝視めると、恥ずかしかっのか、九本もあるふさふさのしっぽで体をすっぽり覆い隠した。
 え、あの。
 怖くないですよ~?
 ぷるぷる震えていて、どうにも話し掛けづらい。この場合はどうしたら良いのでしょう……。
 そろぉ~と顔を覗かせたと思えば、次の瞬間には隠れている。この繰り返しが何度が続いた。
 ちょっぴり感傷に耽っていたらモフモフが消えた。
 え"。
 しばし呆然となり、慌てて辺りを見回すと真後ろに居た。
 び、びっくりした……!!
 一瞬心臓が止まりましたよ、もう。おかげで転んで尻もちをついてしまった。
「追いかけっこ、するの」
「はい?え、待ってくださ─」
 またしても目の前から金色のモフモフ……九尾の狐が掻き消えた。速くないですか!?今からなんですか!?
 疑問符が真っ白な頭の中を占拠しているものの、とりあえず遥か彼方にいるモフモフを急いで追いかけた。
 途中、落とし穴に落っこちるなどと危険な罠ハプニングはありましたが、何とかお転婆狐を捕獲する事に成功しました。
 疲れた……どれだけ、体力が、あるんですか……まったく……。
 ぜぇはぁ、と荒い息を整えていると──。
「元気、そうだね……」
 唖然とした御兄様の声がした。
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