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Lv.11-3
しおりを挟む俺んちの晩飯を食いにくる人間が増えた。
和葉と、圭人さんだ。
2人とも俺ではなく麻央に会いに来ていて、麻央の作ったご飯を食べるだけの俺にはとやかく言う資格はなかった。
「圭人さんって結構熱烈なタイプなんですね」
「はは。そうかな、照れるなぁ」
「でも素敵だなーそんな告白憧れる」
「私も嬉しかったよぉ」
3人で話し込んでいるのは圭人さんが麻央に告白した時の話らしい。
圭人さんもなかなかノリが良くて、和葉からの質問攻撃にも余裕で耐えている。
こういうスキルは見習うべきだな、俺も。
「和葉ちゃんも好きな人からロマンティックな告白とかされる日が来るわよ」
「あ……そ、そうかな」
麻央ー! 今はそれは若干デリケートだから辞めとこう。
とことん恋愛話をしておきながら、和葉は麻央に俺の話だとか告白したとかは話してなかったんだな。
さすが俺と麻央が好き合ってると思ってただけのことはある。
あの日以来どう接するのが正解か判断がつかなかったが、和葉が普通に話しかけてくれるようになって元に戻った。
和葉なりのケジメなのか気遣いなのかは分からないが、俺に他の対策などあるはずもない。
あるがままで居ようと思っただけだ。
晩飯を食ったら和葉は帰るのだが、圭人さんは違う。それももう慣れた。
一度聞いたことあるのだが、圭人さんの家ではなくうちに泊まる理由に「俺」があるらしい。
「だってたっちゃん、放っておいたらちゃんとしたご飯食べないじゃない」
「それはダメだよ。ご飯はちゃんと食べないと」
お姉ちゃんとお兄ちゃんが、いい大人の俺を心配してくれるのだ。
三度の飯よりゲームが好き。
そんな俺の健康を考えてくれる家族が居るのはありがたいが、2人きりの時間を邪魔しているようで気が引ける。
今度大会で優勝したら、その賞金でプチ旅行でもプレゼントしてあげよう。
コンコン
そろそろ夜が更け世の中が寝る準備を始めようかという時、自室のドアがノックされた。
「どぞー」
ガチャリと開いたドアから顔を覗かせたのは、圭人さんだった。
「珍しいすね、アニキ」
「今いいかな?」
「大丈夫!」
珍しくパソコンをスリープモードのまま、ベッドに横たわって読んでいたのは事務所からもらったゲーム雑誌だった。
俺が下した評価と全く違う方向性で書かれてある内容に、憤りを感じることはなく。ただやっぱりかと、呆れの気持ちで見ていたところだ。
「ちょっと聞きにくいんだけど」
「うん? 麻央以外の女性に惹かれてしまったとかだったら俺、相談に乗れないすよ」
「そうじゃないんだけど」
言いにくそうだが、圭人さんは部屋の中に入ってドアを閉めた。
どうやら麻央には聞かれたくない話らしい。
「えっと、達也くんは、麻央と、その」
「はい?」
「本当にごめん。疑うつもりはないんだけど、もしかしてって思ったらちょっと聞かずには居られなくて」
いつも言いたいことは遠慮しないのに、これだけ吃ると俺も察する。
もしかして言いにくいことって……。
「達也くん、麻央とその、いけないことしたりは、してないよね?」
「はい?」
ドクンと心臓が跳ねたことを勘付かれてはないだろうか。人は図星を突かれると一瞬、息が止まるらしい。
今からでも遅くない。平常心に見えるように、ちょっと笑ってみよう。
「なんすか、それ。いけないことって?」
「いや……ごめん、気を悪くしないで欲しいんだけど。麻央から、達也くんと血が繋がってないって聞いて。兄弟になったのも数年前って聞いて」
前にも半年の間に何かあったかと気にしていたし、圭人さんは心配性なのかもしれない。
「兄弟なのにごめん。でも俺は2人のような経験ないから、年頃の男女が急に一つ屋根の下になったら、男女の関係にならないとも限らないのかなって思ってしまって……」
前回も今回も何か確信があって聞いてるようでもないし、それなら安心させてあげる方が正しい。
本当のことを知って納得するわけもないし、ただ戦いの火種を生むだけだ。
「何か心配してるみたいすけど、ヤバいことはしてないすよ」
目が合うと心の中で、バレませんようにと願う。
「あり得ないです。俺は女を抱くのが好きだけど、さすが姉は無理。抱けないです」
その言葉が真実であるかどうかを審議するように、俺の目を覗き込んだ。
逸らしてはいけない場面だ。
男に興味はないが、真っ直ぐ圭人さんを見つめた。
「ふふ。そうか。ごめん、ありがとう」
「いいえ。麻央のことほんとに好きなんすね」
「そうだね。はは」
何とかその場を凌いだ。
麻央の部屋に入って行った廊下の音に聞き耳を立て、「はあ」とため息を吐いた。
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