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第一章 紡がれる日常

第96話

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 騎士様の屍と引き換えに新たなキャンプ場が誕生した。
 今はアー君の魅惑の肉球によるマッサージを受けている。そのうち蘇生するでしょう。

 刀国からどのぐらい離れているかは不明だけど、魔王領内なのは間違いない。
 だからでしょうか、当たり前のように魔王一家が高級バンガローを追加で建てて利用している。

 なんなら我が家の宴の参加メンバーは一家に一軒ぐらい持ってもいいよな、って感じで騎士様にバンガローを建ててもらったようだ。
 そりゃぁ騎士様も屍になるわけだ。

「かあちゃ、焚火消えない」
「そうなの?」

 訴えに一番最初に涼玉が作った焚火に視線を向けたら、楕円に積まれた石が炎を囲み、さらにその周りに椅子代わりだろう丸太や石が置かれていた。
 あれはファイヤーボウルと呼ばれる焚火台で、邪神一家にねだられた騎士様が設置したものらしい。

「涼玉の炎は火事にならないから大丈夫」

 気が向いた時にいつでも焼き料理食べたいらしい、イネスの炎も帝国の教会に常時燃え盛っているし、まぁ大丈夫だろう。

「涼ちゃんの炎を悪用させません!」

 てやーー!という掛け声とともにイネスが尻尾の炎を焚火投入、一瞬黄金に煌めいた後、通常の炎に戻った。
 わぁ、魚や肉を焼くための炎に裁きの機能が追加されちゃったよ。

「これで大丈夫です、涼ちゃんの炎を盗もうとしたらぼーって燃えます、ぼーって! 魂が!」
「イネスあんがとな!」
「はい!」

 うちの子にしか出来ない特殊付与っていうのだろうか、ちょっと火を借りて料理をするのは許されるけれど、盗んで放火など悪用しようとすると近付いた時点で魂が燃えて動けなくなるらしい、もちろん邪神一家の誰かが来て食われるまでがお約束。

「そそのかされて盗もうとした場合は?」
「精神がぼーってして、人間として生きていけなくなっちゃいますね」

 サラッと言っているけど効果が過激、救済処置というかワンクッションほしいところだな。

「騎士様、騎士様、蘇りましたか?」
「樹が膝枕してくれたら完全復活するかな」
「地面に直接座るとえっちゃんに怒られるんですごめんなさい、アー君、あの焚火を守る人欲しいのだけどどうにかならない?」
「帝国の皇子にスローライフ希望がいた気がする、ちょっと聞いてくるな。はい終わり!」
「ぎゃぁぁぁ!!」

 最後に足のツボを押して立ち上がったアー君、復活しかけた騎士様がピクリとも動かないのだけど大丈夫なのだろうか。

「えっちゃん、敷布を、そして樹、ひざ、膝枕を」

 あ、大丈夫だった。
 けれど要望に対するえっちゃんの返答はNO。

「なんでぇ!? ――もう日が落ちて風が冷たくなってきた、樹の体に障る。えっちゃん、いつの間にそんなに樹に対して過保護になったの?」

 闇を広げ、僕の足元を囲って騎士様にぺっぺっと払うそぶりをするえっちゃん、そんな長文を理解できるなんてさすが騎士様だなぁ。
 そのまま触手を伸ばしてエスコートされた先は本日家族でお泊りするテント、中には刀雲がいてシャムスと本日使う枕を選んでいた。

 騎士様、神様の上司なのに転がしたまま来ちゃったけどいいのだろうか。
 僕じゃ動かせないけれど、えっちゃんなら引きずってこれたよね?
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