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第二章 聖杯にまつわるお話

第160話

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 女神様に野菜を押し付けることが出来たので二人で庭を見渡せるテラスに出たら、広々とした庭園に前はなかった緑の壁が増えていました。

「女神様、あれは?」
「アルジュナ様の領地にあった迷路、ただし高さ1mないから小さい子供が迷子になった時に助けやすい。まぁうちの悪ガキどもにとってはちょっと高い障害物コースになってるけどな」

 ジャンプで壁を越えてしまうため、迷路の意味がないと苦笑いをもらす女神様、大丈夫ですよ、ジャンプでの移動もきっとそれなりに体力消費するはず。

 それにしても子供多いな。
 こんなに生んだっけかなぁ? と疑問に思っていたら、第四皇子の婚約者と兄弟が混ざっていました。
 あと第四皇子の友人兼側近候補も。

「今から?」
「おっとり系だからな、守りたいと思った奴が群がりやすいみたいなんだわ」

 今も婚約者の子と手を繋ぎながら、にこにこと周囲の子供たちと会話をしている。
 何せ見た目が将来美人系な上、面倒見が良い二人なので、やんちゃな子供がぽ~っとした表情で借りてきた猫のような状態になっています。
 あの顔知ってる、アカーシャ、カイちゃん、朱を初めて見た人と同じ表情だ。

 一方でイグちゃんは相変わらず子供たちにモテモテ、天使のような可愛い子をあやしながらお昼の用意を進めている。

「それにしてもなぜ女神様の離宮にこんなに子供たちがいるんですか?」
「ほら皇子の婚約者に相談役の子供がなったろ」
「はい」
「会いに来るのに弟が全員付いてきてな、そのままなし崩し的に面倒見てたら友達連れてきて入り浸るようになってた」

 連れ帰って勉強させろと親に苦情を入れたら、相談役さんが手配した家庭教師が派遣されて来たそうです。
 おかげで朝から晩まで子供が溢れ、勉強させたり遊ばせたりお昼食べさせたりと忙しく、自分が何を司る女神か分からなくなっているらしい。

「炎帝さんに手伝ってもらうのは?」
「最低でも炎耐性持ってないと火傷する」

 涼玉やイネスのように相手や対象を選べればいいけれど、炎帝さんはそんな気遣いをするタイプではなく、神特有の傲慢さで近くに侍りたければ相手が耐えればいいと思っているらしいです。
 今日は離宮の最奥にある空中温泉で薔薇の花びらを浮かべているとか、そのお湯は庭に流れる川に繋がっているので子供が飛び込むと風邪を引くどころか、ちょっといい感じに健康になるかもしれないそうです。

「パンが焼けたぞ」
「あ、こんにちは」
「来ていたか、ゆっくりしていくついでに手伝え」

 皇帝がマントではなくエプロン着ている姿ってここでしか見れないだろうな。
 生地はダンジョンボスで出現した飛竜の皮で作った耐熱効果のある手作りエプロン、鍋ダンジョンに引っ越した帝国皇子が相棒の龍二頭と高難易度ダンジョンに挑み、手に入れた素材をタイガに頼んで加工してもらったと言っていた。

「パンが足りない、何でもいいから出してくれ」
「はぁい」
「これぐらいなら私も出来るかな、手伝うわ」
「おやおや今日も美味しそうな昼食ですな」
「良い所に来ました」

 ほほほと穏やかに笑いながらおじいちゃん二人登場、誰だろうと女神様に視線で尋ねたら、相談役さんが手配した家庭教師の方だそうです。

「神子様、お初にお目にかかります」
「アルジュナ様は扱きがいのある生徒でしたな」

 なんとこちらのおじいちゃん、山小屋で教鞭を揮っていたのを是非にと頼み込んで引き抜いてきたらしいです。
 しかも一人はアー君の悪筆を矯正した実績の持ち主、もう一人の方はネヴォラに大人しく座って勉強をするという概念を教え込んだ実績の持ち主だった。

 どっちも凄いですね!
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