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第二章 聖杯にまつわるお話

第264話

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 夕食の賑やかさがひと段落し、至福の表情でアイスを食べている子供たち。

「パパは何味?」
「ほろ苦い大人の味」
「カフェオレだけど食べてみるか?」
「やっぱいい」

 騎士様、子供たちにアイスを奪われないよう、選んだ味が苦みの強い珈琲系でした。
 賢いのか大人げないのかどっちだろうか。
 刀雲も同じ味を食べているから、同じものを食べたかったという可能性もあるかな。

「それでアー君、本日の議題ってなんだったの?」
「……あ」

 クリームソーダ味を食べながら目を真ん丸にするアー君、どうやら本気で忘れていたらしい。
 あるある、よくある。
 そもそもなぜ食事と会議を同時にやろうとしたのか、我が家の夕食は戦場ですよ。

「俺もよく分かってないんだ」
「あい、りょーちゃんどうじょ」

 シャムスの舌足らずなお喋りが可愛いっ!!
 一人キュンキュンしていたら、膝の上にお座りしていたシャムスが僕を見上げてにへら~と笑った。尊い、気絶しそう。

 僕がシャムスにメロメロになっている間に、涼玉とイネスが昼間の出来事をえっちゃんの解説付きで説明。
 僕のお腹に突然何か「いる」という事も併せて知らされた。

「樹の中に? え、それ大丈夫なの?」
「正体がなんであろうとも、謎能力に勝てると思えない」
「ご都合主義の権現ですからね!」
『実体なくても問題ないの』
「ふわふわ状態のかあちゃは無敵だぜ!」

 涼玉がドヤァと言い切った。
 実際、僕が何かをしようとするよりも、無意識でいた方が効果が強いらしいですよ。

「正体不明なものが樹の中にいること自体が嫌だなぁ、召喚した相手の正体は?」
「えっちゃんが解析中」
「魂もぐもぐです」
『意外と人数多かったから、イグちゃんにも手伝ってもらってるの』
「なんかな、記憶を探るっていうより、魂の情報を解析してるって感じらしーぞ」

 同じじゃないのかと思ったけど、アー君の解説によると記憶の解析は本人の記憶が壊れていたりすると判読が曖昧になってしまったりするらしい、でも魂の解析なら本人が壊れていてもどうにでも出来るんだって。
 情報量が多いから時間はかかるみたいだけどね。

 そうか、あの謎の空間にいた人たち、全員えっちゃんに飲み込まれてたのかー。
 仕事早いなぁ。

「樹は体に異常はない?」
「ないですね」
「即答!?」
「シャムスをもふってご機嫌だからなぁ」
『うふふん』
「そろそろ子供たちは寝る時間だな、早く風呂に入ろう」
「でも刀雲、樹が」
「イツキなら大丈夫だろう、それよりもアー君が宿題をやっていない事の方が問題だ」
「おれぇ!?」

 刀雲からまさかの指摘にアー君がギクリと動きを止めた。
 そう言えばいつもと違ってやっている暇がなかったような気がする。

「も、もう寝る時間だし!」
「大丈夫だ、終わるまで付き合うから」
「そんな優しさいらないぃ」
「先に寝ていいぞ、俺が付き合う」
「パパも付き合おう! な!」
「ごめん、俺がいるとアー君を甘やかしちゃうから!!」

 シャムスとイネスを抱えて騎士様が逃亡した、賢い選択だと思う。

「にいちゃおやすみー」
「ではまた明日」

 涼玉とマールスも退室し、ワンコ兄弟やもふもふズもそれぞれの寝床へと下がっていく。
 僕も寝よう。
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