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巡り合い

第579話

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 串焼きを見て魔が差した。

「ん、んーーー!!!」

 ほっかほかの白いご飯に鰻をのせ、さらにタレをかけてネヴォラに食べさせたら言葉にならないほど感動してくれた。
 迷いなく高級品選んでよかった。

『僕も』
「うん、俺も俺も」
「かあちゃ」
「今用意するね」

 幼児の催促にせっせと作り、ついでに串焼きを分けてくれたゴブリンにも丼を一つ渡したら目を輝かせてぺろっと食べ、大量に鰻を焼いてくれた。
 もっと作れってことらしい。

 ちょっと待ってほしい、ドリちゃんがいないのでそこまで早く作業出来ないよ。

 寄ってきたゴブリンに囲まれながらうな丼を作っていたら、見かねたアー君が少年姿に変化して手伝ってくれた。
 ごめんなさい、ちょっと考えなしだった。

 タレをボトルで出しておいたら、最終的に焼いている鰻に塗る工夫までするようになった。
 学習能力高いな、さすがゴブリン。

「イツキ」
「うんどうしたの? おかわり?」
「ううん、穴の反対側、人間いっぱい、むさい」
「ちょっと待ってて」

 ネヴォラの言葉を聞いて騎士様が転移してすぐ戻ってきた。
 様子を見てきてくれたらしい。

「うんなんかね、外まで鰻の匂いが漏れているみたい」
「これだけ大量に焼けばそりゃ匂いも漏れますよねー」

 洞窟内だけどある程度風は吹いているし油断していた。

「煙を外に誘導したせいだね、煙くてつい」

 騎士様のせいだった。
 僕のせいじゃないならいっか。

「金なら払うから食べさせてくれって懇願された。むさいから逃げてきた」
「うーん、アー君」
「無限仕様だからゴブリンさえ良ければへーき」
『釣っても釣ってもすぐりぽっぷなの』
「あれ、邪神一家養える? マールスここ住む?」
「涼玉様と一緒ならばどこでも!!」

 鰻を両手に捕まえたマールスが川から吠える。
 人型だと二匹ずつだけど、蛇になれば最大七匹いけるんじゃない?

 そういう訳でゴブリンに了承を取ってうな丼を冒険者に有料で提供することになりました。
 価格はアー君にしては良心的な設定、高いとブーイングは飛んだけど、一口食べたら静かになりましたよ。

『鰻で荒稼ぎなの』
「下層は暇してそうだなー」
「我々の一日もここで終わりそうですな」

 薬草採取に来たはずなのにどうしてこうなった。
 体に鰻の匂いが染みついていそう。

「ぎゃぎゃっ!」
「明日からは外で売りたい? じゃあ屋台の店主に話通しておくよ」
「逞しいなぁ」
「騎士様まだ焼いているんですか?」
「これ、わんこと神薙へのお土産」

 騎士様の一言で脳裏にルドの恨めしそうな表情が浮かんだ。
 うな丼作るのに忙しくて忘れてた。ごめん。
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