2 / 9
2.
しおりを挟む
宴会は出会いの場。
それが結婚の宴ならなおさら。
お酒もたくさん用意されているし、新郎新婦の姿で会場の空気が幸せに酔っているようなものだから。
男女の距離も縮まりやすいというのはわかる。
それでも、まだ名乗りあっていないのに腰に手を回してくるこの男は。
ちょっと、さすがに近すぎる。
しかも、そんなに酔っている様子でもないのに自然に体を寄せてくる。
こういうのに慣れている、っぽい。
それだけで、「あの人」じゃないと突き放せたらまだ良かったのに。
「で?おたくの望みは何?クリーム?呪符?」
「望みって程じゃないけど、もう一度会いたかったから。お礼を言えてなかったし、それに名前も」
「名前……ねえ。
で、どこまで許してくれるの」
「どこまでって」
「何をしても、いつになってもやらせてくれないんなら、これ以上知り合う必要ないと思って。
他の子を探しに行きたいんだけど」
あれ、これ
クズじゃないか?
よく考えなくても、腰に手を回したまま言う事じゃないような。
手をつねって振り払った。
「ごめんなさい、人違いだったみたい。さよなら」
「変わってないな。それくらい気が強い方があんたらしい。さっきだったらホイホイ男に押しきられそうだったもんな」
ヒラヒラと手を振って、男は離れた。
全く残念そうにされないのも、癪にさわるけど。
顔見知りの副団長のセルジオが通りがかったので
聞いてみた。
「ねえ、あれ誰?」
「あー、ジオスだな。来てたんだ」
「あの男、すごく失礼なんだけど」
「ジオが?ここにいたときはむしろ、消極的すぎるくらい内気な奴だったんだけどな」
「全然!女の子を探しに来たって言ってたわよ。」
「城下で働いてるって聞いたけど。そんな冗談も言えるくらい、まあ人と関わって暮らせているなら良かった」
セルジオが笑みを浮かべているので不思議だった。
「冗談も言わない人だったの?」
「まあ、魔術師を辞めるにはそれなりの理由があるからね。カインみたいな天才のそばにいると、自分の力のなさを感じるよ。私も魔術師としては弱いから、辞める奴のことは気になる。」
「図々しいくらい、ふてぶてしい態度でしたけど」
「苦労して揉まれたのかもね。それに、女の子を探してたのは本当かも。辞める前に何か女性用に作っていたよ。」
ハンドクリームとか、私以外にも渡してたってこと?
あいつ、許さない。
「セルジオさん、これ戻しといてください」
グラスを押し付ける。
「カトリーヌさん?怖い顔してるけど、まさか」
「ちょっとアイツに、文句言ってきます!」
「待って!
えっとね、もしかしたら役に立つかもしれない。誤解されてるのならジオは、すぐ顔が赤くなるから耳とか首とか見て。あと、嘘をつくときに視線がよく動く。それからわざと拗ねたみたいな口調になるけど、八割は
照れ隠しだから」
そんな、可愛いわけない。
余計に腹がたってくる。
「カトリーヌさん指ポキポキ止めて!それ格闘家のやるやつだから!」
「ふふふ、大丈夫ですよ。民間人相手ですからね、殴りはしません」
それが結婚の宴ならなおさら。
お酒もたくさん用意されているし、新郎新婦の姿で会場の空気が幸せに酔っているようなものだから。
男女の距離も縮まりやすいというのはわかる。
それでも、まだ名乗りあっていないのに腰に手を回してくるこの男は。
ちょっと、さすがに近すぎる。
しかも、そんなに酔っている様子でもないのに自然に体を寄せてくる。
こういうのに慣れている、っぽい。
それだけで、「あの人」じゃないと突き放せたらまだ良かったのに。
「で?おたくの望みは何?クリーム?呪符?」
「望みって程じゃないけど、もう一度会いたかったから。お礼を言えてなかったし、それに名前も」
「名前……ねえ。
で、どこまで許してくれるの」
「どこまでって」
「何をしても、いつになってもやらせてくれないんなら、これ以上知り合う必要ないと思って。
他の子を探しに行きたいんだけど」
あれ、これ
クズじゃないか?
よく考えなくても、腰に手を回したまま言う事じゃないような。
手をつねって振り払った。
「ごめんなさい、人違いだったみたい。さよなら」
「変わってないな。それくらい気が強い方があんたらしい。さっきだったらホイホイ男に押しきられそうだったもんな」
ヒラヒラと手を振って、男は離れた。
全く残念そうにされないのも、癪にさわるけど。
顔見知りの副団長のセルジオが通りがかったので
聞いてみた。
「ねえ、あれ誰?」
「あー、ジオスだな。来てたんだ」
「あの男、すごく失礼なんだけど」
「ジオが?ここにいたときはむしろ、消極的すぎるくらい内気な奴だったんだけどな」
「全然!女の子を探しに来たって言ってたわよ。」
「城下で働いてるって聞いたけど。そんな冗談も言えるくらい、まあ人と関わって暮らせているなら良かった」
セルジオが笑みを浮かべているので不思議だった。
「冗談も言わない人だったの?」
「まあ、魔術師を辞めるにはそれなりの理由があるからね。カインみたいな天才のそばにいると、自分の力のなさを感じるよ。私も魔術師としては弱いから、辞める奴のことは気になる。」
「図々しいくらい、ふてぶてしい態度でしたけど」
「苦労して揉まれたのかもね。それに、女の子を探してたのは本当かも。辞める前に何か女性用に作っていたよ。」
ハンドクリームとか、私以外にも渡してたってこと?
あいつ、許さない。
「セルジオさん、これ戻しといてください」
グラスを押し付ける。
「カトリーヌさん?怖い顔してるけど、まさか」
「ちょっとアイツに、文句言ってきます!」
「待って!
えっとね、もしかしたら役に立つかもしれない。誤解されてるのならジオは、すぐ顔が赤くなるから耳とか首とか見て。あと、嘘をつくときに視線がよく動く。それからわざと拗ねたみたいな口調になるけど、八割は
照れ隠しだから」
そんな、可愛いわけない。
余計に腹がたってくる。
「カトリーヌさん指ポキポキ止めて!それ格闘家のやるやつだから!」
「ふふふ、大丈夫ですよ。民間人相手ですからね、殴りはしません」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
57
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる