ただ、君のそばで

森の妖精

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不器用な提案

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 仕事から帰って、カップラーメンを啜ったていた。
 (ここ、出ていかなきゃかー)宛てなど1つも無かった。
逃げるようにこの地に来て、見つけたこのアパートの大家がとても優しい老夫婦で、初期費用も事情を話したら分割にしてくれたから何とかやって行けた。
 (住み込みの仕事でも探すか?でも今の仕事、やっと覚えてきたのに)麺を啜る手が止まる。味は何もしなかった。機械的に口に運んでいる。
……あと4日。
どうしろってんだよ!!
 ペラペラと求人誌を眺めていた。
 『スタッフ募集!接待業、部屋付き、共同住み込み、月20万!』
 ホストかい!女相手に金貰うなんて絶対無理だわー
『20~30歳男性、即採用可!住み込み可!月30万』
 如何わし過ぎる。しかし、手取り30万は魅力的だ。いざとなれば、俺やれるのか?
 
 その時、部屋のチャイムがなった。尋ねてくる奴なんてアイツしかいない。色々面倒かけてしまったので、部屋のドア開けて渋々招き入れた。部屋に入るなり
「病み上がりでカップラーメンですか」
 俺の狭い部屋に、ばっちりスーツのコイツは不釣り合いだった。
それもイラつく要素となり
「ほっとけよ!」
 と、そっぽを向いた。
「体調はいかがです?」
「あー、見ての通りですぅー。その節はお世話になりましたぁー!」
 つっけんどに返事した。
 何がおかしいのか小高はくくっと笑っている。
「大変言いづらいのですが」
「あー!もー!分かってるよ!出ていけってだろ?」
 亮介は机の雑誌に目を落とし、丸が付いてる箇所を眺めた。そして指を差し
「ここはダメです。表向きはホストですが、違法商売の噂があります」
そして、人差し指をその下の丸にスライドさせて
「あ、ここは一度入ると辞められませんよ」
 と独り言のように話した。
俺は、雑誌を隠しながら
「ほっとけ!」
 と怒鳴った。
「お前、俺の事笑ってんじゃねーよ。俺が泥まみれで働いている時、お前はすかしてどこかのババァとイチャコラしやがって。工事現場から見てたからな」
「いやあー、あはは、見られてましたか?これはお恥ずかしい」
 頭を掻いて照れたと思ったら、すぐに話を変えられた。
「ご実家に頼むとかできませんか?」
「むり!」
「友達とか?」
「むーーり!」
「友達いないのですか?」
「っうっせ!」
反抗期の中学生かと思うほど、子どもっぽく生意気な態度。
(あー、昔の勝也っぽい。……いやいや、俺は何を考えてんだ⁉︎)
亮介の頭に勝也が浮かんでかき消した。
「僕の名前知ってます?」
 いきなり質問してみた
「……りょう、何とか?」
「亮介です。お見知り置きを」
 にっこり笑った亮介を見て、快は無言になった。
「このままでは、如何わしいホストやら何やらに走ってしまいそうですね。それでも構わないというなら、いいのですが。その若さとその顔なら余裕でやって行けるでしょう」
 亮介は快の顔を覗き込み頷いている。
「俺は、土木でいい。」
「帰る家が無ければ働けませんよ」
そして、亮介は、今から自分が発するであろう言葉に、自分でもびっくりした。
「なら、僕の家に来ますか?ある事情で結構大きな家に1人で住んでます。部屋ならたくさんありますし、そこで住みながらお金を貯めて、新居を探せばいいのではないでしょうか?」
「は?何で俺が……お前の家に?」
「だって困っているのでしょう?それとも、ここの手取り30万の接客業へ行きますか?」
「もう、そこで働くって決めたんだよ!」
「あれ?土木業は?すぐに辞められるのですか?」
「だから、俺の事はほっとけって!お前はババァの相手でもしてろ!」
「お前じゃなく、亮介です。快君。」
 余裕の微笑みだった。
「まだ取り壊さないんだろ?あと2日で……ちゃんと決めるし」
 語尾が弱気だった。
「一応、僕の優しい提案も頭に入れておいてくださいね。では、また明日伺いますので。」
 そう言って亮介は帰って行った。

 「りょう……すけ」
 亮介が帰ったドアを見ながら、快は小さな声で呟いた。

 
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