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86話 子供
しおりを挟む「絶対に約束ですよー!!!!!」
そう叫びながらロアンは病院に運ばれて行った。ハルミが病院送りにした男はこれで3人目である。
シュエルはまだ起きないので、ロアンが退院次第、シュエルに謝罪させる事と、これからシュエルの身の回りの世話をどうするかをアーノルドと話し合う事になった。
その結果、暫くは中年の使用人さんと、もう一人居る性別不明(リザードマンらしい。見た目では男女の判断がハルミには出来ない)の使用人さんとで交代でシュエルの世話をしてくれるらしい。
「アーノルドさん。……………ロアンさんも長く入院なんですか?」
そう尋ねるとアーノルドは首を横に振る。
「いや、ロアンも紅葉と同じで来週には戻れるだろうなぁ。……………ベルの…………場合は本人の魔力が多いのも関係して居る。………………人よりかなり多い筈の魔力が完全に空になって居たからなぁ………。………戻るのに時間が掛かるんだぁ」
少しだけ、ベルの名を言うのをアーノルドは躊躇した様に間が空いてそれから話し続けた。ハルミに配慮してくれているようだ。
(………………アーノルドさんって本当優しいなぁ……。……………早く気持ちに応えてあげたいな、……だけど)
流石に直ぐに答えが出る問題ではない。アーノルドからも急がなくて良いと言われている。
(………………うん。一旦保留…………ずるいなぁ
私)
そんな風にハルミが考えていると、アーノルドは少しだけ眉を寄せた。
「ハルミ?…………とりあえずは一度少し休むと良い。午後から出掛けるだろう?」
そう言ってアーノルドは頭を優しく撫でてくれた。
部屋に戻り、グレンと紅葉には事の顛末を簡単に説明した。二人共めちゃくちゃ嫌そうな顔をしていてハルミは苦笑した。
(…………まあ、ちょっと引くよね。やっぱり………)
二人の気持ちもわからなくは無い。
説明後はグレンは仕事に向かって行ったが、明後日休みを取ったのでハルミと共に出掛けたいとアーノルドに許可を貰っていた。
少しだけ嫌そうな顔をしたが、アーノルドはグレンに許可を出して、ついでだから精液摂取をグレンとする様にとハルミに言う。紅葉は毛を逆立てて反対していたが、精液を摂取しない訳にはいかないからとハルミが説得して渋々納得していた。
やはり紅葉とグレンとは相性が悪い様だ。
▷▷▷▷▷▷
「ハルミぃ…………明後日、本当にグレンと出掛けるのか?…………………絶対にグレンに毛づくろいしたら駄目だからなっ!!させても駄目だ!!!!ハルミは自分の雌なんだからなっ!!!!」
添い寝して紅葉はずっとプンプンしている。
「ふふふ、しないよー、…………うん。紅葉君の雌だもんね。わかってるよ。………紅葉君は私の雄だっけ?ふふ」
ハルミがクスクス笑うと、紅葉は後ろからぎゅうぎゅう抱きしめてくる。
その内にハルミはうとうとして来て、返事を返せなくなる。紅葉の温もりと寝不足でもう限界だ…………眠い。
すうすうと寝息を立てるハルミの後頭部に、紅葉はちゅっとキスをする。
「……………ハルミ♡申し訳ない……寝るの邪魔……して………、でも…グレンとは……いやだ………。ハルミは自分の雌だ……………」
そう呟いて紅葉はハルミの髪をざりざりと舐める。
「っ………♡ハルミの毛並みは最高だ♡…………はあ♡早くこの目で見たい♡…………こんなに綺麗で優しいハルミが自分の雌……。………夢みたいだ、………同じ色。…………子供もきっと素晴らしい毛並みになる♡黒い美しい髪……早く見たい……♡ハルミ……沢山自分の子供を産んでくれ………、ハルミ♡」
またハルミの髪をざりざりと舐めて、クンクンと匂いを嗅ぐ。
「………………幸せだ。ハルミ♡」
▷▷▷▷▷▷
「ああ、やっぱり使用人様が………………」
ハルミが仮眠から起きるとシュエルも目覚めていた。なので朝の事を説明すると、シュエルは頷いた。
「え?やっぱりって、シュエルさん心当たりあったんですか?」
そう尋ねるとシュエルはまた頷く。
「…………夜………声が……漏れ聞こえておりました。………その時の使用人様は耳をピクピク動かされて落ち着きが無く、………股間の辺りも膨らんでおりました。…………………ハルミ様はお気づきでは無かったようですが
、昼間に使用人様が時折、貴女様を見る目も雄の目で御座いました。……………………ですが、わたくしはぁお世話になっております身故……。お伝え出来ず申し訳ありません」
シュエルはしゅんとしている。
「ううん、それは仕方ないですよ。……………立場的に告げ口とか無理だろうし………。それにその、声すみません……、うるさかったですよね?」
そう告げるとシュエルは美しく笑う。
「いいえ、声は………とても良うございました♡わたくしではぁ、あれ程貴女様を鳴かせることは出来ませんので。ご主人様が羨ましい…………、紅葉様も……………貴女様をあれ程に乱れさせる事がお出来になる………」
(あ…………。…………シュエルさんとは、こっちが責めるほうが多いもんね?…………………だから紅葉君とのえっちも見たがったの?)
じっと眺めているとシュエルは少し困った様に笑う。
「………………申し訳ありません。ここに来てからわたくしは、とても我儘になった様で御座います……。今でも十分に恵まれて居ると言うのに…………」
(シュエルさん……………)
きっとシュエルは寂しいのだろう。体が動かない、自分では何も出来ない、それはとても辛いし悲しい。それに皆と違う疎外感もあるのかも知れない。
「シュエルさん、良いんですよ?もっと我儘になってください。私………貴方になんでもしてあげたいです。………あのっ……もし聖女召喚の噂が本当になったら、私……同じ異世界人として一度掛け合ってみます!!!!!治してもらえるかも知れないですし……。…………こんな希望を持たせて、何言ってるんだと思われるかも知れませんけど……、もし、無理だったとしても……。……………最後のその時……シュエルさんには私の所に来て本当に良かったって思って………貰えたらなって……思います…………」
言っているうちに声に元気が無くなっていく。
(………………お別れなんて嫌だ……)
しゅんと俯いてしまったハルミに、シュエルは優しく声をかけてくれる。
「ハルミ様既に思っております♡…………こんなにお優しい貴女様の所に来られてわたくしは、本当に幸運で御座います。
………普通に生きていたらこんなに幸せな気持ちを知る事は出来なかったでしょうね……………。ですが………もし本当に我儘を言っても良いと言うのなら…………、一つだけ…………。ハルミ様……わたくしはぁ……………」
▷▷▷▷▷▷
アーノルドと二人、手を繋いで街を歩く。楽しいのだが、ハルミは少しぼんやりとしていた。そしてすれ違う夫婦とその子供をじっと見つめてしまう。
(…………………子供)
シュエルからお願いされたのは、シュエルの子供を産んでほしいと言う物だった。何か生きた証を残したい。それにハルミとの子供がどうしても欲しい、とシュエルは言った。
「……………申し訳ありません。奴隷が………馬鹿な事を言ってしまいました。忘れてくださいませ………」
言ったあとにシュエルは顔色を悪くして俯いてしまった。確かに驚いた。だがそれも悪くないかなと一瞬思った。俯いてしまったシュエルを眺めていると余計にだ。
一旦返事は保留にしたが、部屋を出る時にシュエルが悲しげにしていたのを見てハルミは真剣に考える。
(…………………子供。………いいかも知れない。………ベルの子は無理だもんね。………………でも、子供が居ればこの世界で生きて行く良い切っ掛けになるかもしれない)
そんな風に考えてぼーっと眺めていると、アーノルドに肩を叩かれた。
「ハルミ………?何を見ている?……親子か………。…………。やはりハルミも子が欲しいのか?」
アーノルドは少し眉尻を下げてそう言う。
「っ…………いえ、…………………」
ハッとして視線をそらすとアーノルドは小さく笑った。
「良い。ハルミ………気にするなぁ。……………………昨日も言ったが、もしハルミが子を欲しいのなら他の男と作っても構わない………。………子を残したいと思うのは当たり前の事だ……。ハルミは拙者とは違って、生殖能力が有る。……子を産める。………それを非難したりはしないぞぉ」
アーノルドはそう言う。
(…………確かに昨日、そんな事……言われたっけ………。でも…………)
ハルミが暗い顔をしているとアーノルドはまたクスリと笑う。
「……………拙者の側に居てくれるのなら……それで良い。それ以上は求めんさ」
そう言うアーノルドにハルミは胸が苦しくなった。
(アーノルドさん…………、その気持ち私もわかるなぁ。ただ側に居たいって気持ち。本気で私を……愛してくれてるんだ?……………………アーノルドさん)
きゅうっと胸元を握りしめる。アーノルドのハルミに対しての気持ち、それはハルミもベルに一度感じた気持ちだ。愛していると言う想い。ハルミは流石に相思相愛の相手の居る、ベルにこれ以上付き纏うだとか
側に置いてほしいと言うつもりは無いが、アーノルドがハルミに抱いてくれている想いはきっと同じ物なのだと、そう思うと胸が甘く痛む。
(……………………私は相手がいる訳じゃないし。それなら………アーノルドさんとずっと一緒に居て……、シュエルさんの子を産むのも良いのかもしれないなぁ……………。……………そうしたらきっとベルの事も…………忘れられる?)
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