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本当にモブよね?
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白獅子はチュランヴェルンド、魔狼はカルジャルディアンと言うらしいが、わたくしは早々に呼ぶのを諦めて、ヴェルとルジャというあだ名をつけた。
二体の話では、愛し子というのは、聖獣や魔獣に愛され慈しまれる存在なのだそうだ。
わたくし、ただのモブで、まだまだ未熟な子供なのに、いいのだろうか?
そう言うと、二体は愛し子への見返りは何も求めていない。好きに生きて、健やかであればそれでいいのだと言ってきたので、愛し子について難しく考えるのを放棄した。
あれから、お父様は王都に居る陛下への報告の対応に追われている。
あの時の事は、あの場に居た者に口外禁止令が出されている。
兄達はもちろんのこと、忠義に厚い騎士達も口外することはないだろう。
ヴェルとルジャがあまりにも大きいため、普段は三十センチほどの大きさに縮んでもらっている。
使用人達には、魔の森でわたくしが見つけてきた聖獣と魔獣の子供という事にしているらしい。
わたくしの体に異常があるかもしれないと言うので、淑女教育もいったんお休みになっており、わたくしはのんびりと魔王や聖王の出てくる御伽噺や、魔法についての本を読み漁っている。
『デッド・オブ・ラブ』にも、確かに魔王や聖王という単語は出て来たけれども、会話文の一つでしかなく、本編には全く関係なかった。
どの御伽噺にも、魔王は二百年ほど前に、勇者と、そして聖女によって封印されたと記載されているし、聖王はそんな魔王の対の存在であり、人知れぬ地で世界を見守っていると記載されている。
本当に、なんでそんな大物がわたくしに加護を与えたんだろう。
庭で日向ぼっこをしながら読書をしているわたくしの方に、お父様がやってくるのが見える。
令嬢らしからぬこういった行動に、日焼けが気になるところだけれども、陽に当たらなすぎるのもよくないと自分に言い訳をしている。
「ツェツィ」
「おとうさま、お帰りなさい」
笑顔でそう言うと、お父様は笑顔を浮かべてわたくしを抱き上げて、腕に乗せる。
「ただいま、ツェツィ。お前に大切な話があるんだ」
「なぁに?」
「王都に行って、陛下に今回の事を全てご報告することになったんだよ」
「おうと? へいかに?」
コテリと首を傾げたが、まあ、そうなるだろうなとは思っていた。
ただでさえ聖獣や魔獣と契約、もしくは加護を受けた者は申告しなければ罪に問われるのだから、聖王と魔王の加護を受けたわたくしの報告をしないわけにはいかないのだ。
娘可愛さに報告を怠ったとなれば、国に反する意志ありと捉えられて、最悪お家とりつぶしになってしまう。
「えっと、大丈夫よおとうさま」
「もし何かあれば、私が命を懸けてお前を守るから」
「おおげさよ?」
「いや、最悪の場合、お前の力を危ぶんだ陛下に、王宮に閉じ込められる可能性がある」
「そうなの?」
「その場合、なにをしてでもお前を救い出す。そうなったら、お前はロブとハンと一緒に、魔の森を抜けて国を出るんだよ」
真剣な表情で言われて、なにもそこまで、と思ってしまう。
「でも、今のへいかは、とてもゆうしゅうなのでしょう?」
「だからだ」
お父様がそう言って深くため息を吐き出す。
確か、今の国王は、先代の国王が病で亡くなったために、十二歳で戴冠した若き国王で、『デッド・オブ・ラブ』では全ルート攻略後に解放される隠しキャラだ。
それまで、出ても一言二言話すのみ、立ち絵もなかったけれど、スチルでは大人の魅力にあふれたキャラだった。
実際に攻略してみれば、立ち絵が付いて、その声で孕まされると思えるほどのイケボは腰にクるし、常に優し気な微笑を浮かべているのに、実は腹黒で、スマホアプリ版では攻略するとその溺愛ぶりから後宮から出さないと言う程度だが、パソコン版では、溺愛が過ぎて、朝から晩まで傍から離さず、所かまわず抱きつぶし、どろっどろのぐちゃっぐちゃにしてくる絶倫設定だ。
隠しキャラと言うだけあって、攻略難易度は他の攻略対象とは比べ物にならないほど高く、ステータスが少しでも低かったり、選択肢を一つでも間違うと攻略できない、もしくはバッドエンドになるというキャラだ。
ちなみに、スマホアプリ版のバッドエンドは、ヒロインが泣く姿が見たいと言うだけでひどい言葉を浴びせられたり、傷つけられたりするぐらいなのだが、パソコン版では、他の人間にヒロインを強姦させてそれを眺めて愉悦に浸ると言う、とんでもないものだったりする。
隠しキャラルート以外にはバッドエンドは存在しないので、悪役令嬢がいない代わりの措置なのだろうと言われていた。
そう考えると、確かに陛下に会うのは緊張してしまうかも。お父様の考えている身の危険とは別方向の意味で!
そうやって考えると、パソコン版の『デッド・オブ・ラブ』は、乙女ゲームにしてはかなりディープでハードだったな。
ヒロインが女の子じゃなかったら、監禁ヤンデレ洗脳強姦の揃ったギャルゲーだよね?
攻略対象がくそイケボでイケメンだから許されるけど、現実だったらただの犯罪なんだよなぁ。
ちなみに、そんな陛下の十歳年下の弟、第二王子が攻略対象だったりするのだけれども、優秀な兄と比べられて卑屈になり、勉強も何もかも放棄するような生活を送り、乙女ゲームが始まるころには、堕落しきって女遊びが激しいキャラとして登場する。
ヒロインと出会い、周囲の冷たい目や劣等感に負けず努力する姿に、自分の行動を恥じて最初は八つ当たりのように接してしまうけど、ある一言をきっかけに泣いてしまったヒロインに自責の念が湧き、徐々に態度を軟化させていく。
他の攻略対象は、宰相の息子が、ひたすらにプライドが高く、自分が無能な第二王子の側近候補であることが気に入らない上に、婚約者である第三王女と結婚したら、妻の方が自分よりも立場が上になるのではと危険視している。
インテリ系キャラなのだが、ひたすらに高いプライドに、持ち上げて従順になると言う選択肢を選ばなければいけない。
あとは、脳筋の騎士団長の息子。宰相の息子と同じように、第二王子の無能さと女遊びにうんざりしている。
また、婚約者が不貞をしているのではないかと疑っていて、なにかにつけては自分が居なければ駄目だと告げてくるキャラだ。
それでも基本は脳筋なので、褒める系の選択肢を選べば簡単に好感度が上がってくれると言う、攻略対象の中では一番ちょろいと言われているキャラ。
……そういえば、わたくしは辺境侯爵の娘なわけで、王立学院に通い始めたら、身分的には攻略対象や悪役令嬢と嫌でも交流を持つようになるのでは?
繰り返すけど、わたくしはモブよね?
でも、やっぱり身分的に、攻略対象や悪役令嬢を無視するとか、無理そう。
運営(神様)! 設定考えるならもっとしっかりしろ!
モブに重要な身分を与えるんじゃない! シナリオが崩れるだろうが!
二体の話では、愛し子というのは、聖獣や魔獣に愛され慈しまれる存在なのだそうだ。
わたくし、ただのモブで、まだまだ未熟な子供なのに、いいのだろうか?
そう言うと、二体は愛し子への見返りは何も求めていない。好きに生きて、健やかであればそれでいいのだと言ってきたので、愛し子について難しく考えるのを放棄した。
あれから、お父様は王都に居る陛下への報告の対応に追われている。
あの時の事は、あの場に居た者に口外禁止令が出されている。
兄達はもちろんのこと、忠義に厚い騎士達も口外することはないだろう。
ヴェルとルジャがあまりにも大きいため、普段は三十センチほどの大きさに縮んでもらっている。
使用人達には、魔の森でわたくしが見つけてきた聖獣と魔獣の子供という事にしているらしい。
わたくしの体に異常があるかもしれないと言うので、淑女教育もいったんお休みになっており、わたくしはのんびりと魔王や聖王の出てくる御伽噺や、魔法についての本を読み漁っている。
『デッド・オブ・ラブ』にも、確かに魔王や聖王という単語は出て来たけれども、会話文の一つでしかなく、本編には全く関係なかった。
どの御伽噺にも、魔王は二百年ほど前に、勇者と、そして聖女によって封印されたと記載されているし、聖王はそんな魔王の対の存在であり、人知れぬ地で世界を見守っていると記載されている。
本当に、なんでそんな大物がわたくしに加護を与えたんだろう。
庭で日向ぼっこをしながら読書をしているわたくしの方に、お父様がやってくるのが見える。
令嬢らしからぬこういった行動に、日焼けが気になるところだけれども、陽に当たらなすぎるのもよくないと自分に言い訳をしている。
「ツェツィ」
「おとうさま、お帰りなさい」
笑顔でそう言うと、お父様は笑顔を浮かべてわたくしを抱き上げて、腕に乗せる。
「ただいま、ツェツィ。お前に大切な話があるんだ」
「なぁに?」
「王都に行って、陛下に今回の事を全てご報告することになったんだよ」
「おうと? へいかに?」
コテリと首を傾げたが、まあ、そうなるだろうなとは思っていた。
ただでさえ聖獣や魔獣と契約、もしくは加護を受けた者は申告しなければ罪に問われるのだから、聖王と魔王の加護を受けたわたくしの報告をしないわけにはいかないのだ。
娘可愛さに報告を怠ったとなれば、国に反する意志ありと捉えられて、最悪お家とりつぶしになってしまう。
「えっと、大丈夫よおとうさま」
「もし何かあれば、私が命を懸けてお前を守るから」
「おおげさよ?」
「いや、最悪の場合、お前の力を危ぶんだ陛下に、王宮に閉じ込められる可能性がある」
「そうなの?」
「その場合、なにをしてでもお前を救い出す。そうなったら、お前はロブとハンと一緒に、魔の森を抜けて国を出るんだよ」
真剣な表情で言われて、なにもそこまで、と思ってしまう。
「でも、今のへいかは、とてもゆうしゅうなのでしょう?」
「だからだ」
お父様がそう言って深くため息を吐き出す。
確か、今の国王は、先代の国王が病で亡くなったために、十二歳で戴冠した若き国王で、『デッド・オブ・ラブ』では全ルート攻略後に解放される隠しキャラだ。
それまで、出ても一言二言話すのみ、立ち絵もなかったけれど、スチルでは大人の魅力にあふれたキャラだった。
実際に攻略してみれば、立ち絵が付いて、その声で孕まされると思えるほどのイケボは腰にクるし、常に優し気な微笑を浮かべているのに、実は腹黒で、スマホアプリ版では攻略するとその溺愛ぶりから後宮から出さないと言う程度だが、パソコン版では、溺愛が過ぎて、朝から晩まで傍から離さず、所かまわず抱きつぶし、どろっどろのぐちゃっぐちゃにしてくる絶倫設定だ。
隠しキャラと言うだけあって、攻略難易度は他の攻略対象とは比べ物にならないほど高く、ステータスが少しでも低かったり、選択肢を一つでも間違うと攻略できない、もしくはバッドエンドになるというキャラだ。
ちなみに、スマホアプリ版のバッドエンドは、ヒロインが泣く姿が見たいと言うだけでひどい言葉を浴びせられたり、傷つけられたりするぐらいなのだが、パソコン版では、他の人間にヒロインを強姦させてそれを眺めて愉悦に浸ると言う、とんでもないものだったりする。
隠しキャラルート以外にはバッドエンドは存在しないので、悪役令嬢がいない代わりの措置なのだろうと言われていた。
そう考えると、確かに陛下に会うのは緊張してしまうかも。お父様の考えている身の危険とは別方向の意味で!
そうやって考えると、パソコン版の『デッド・オブ・ラブ』は、乙女ゲームにしてはかなりディープでハードだったな。
ヒロインが女の子じゃなかったら、監禁ヤンデレ洗脳強姦の揃ったギャルゲーだよね?
攻略対象がくそイケボでイケメンだから許されるけど、現実だったらただの犯罪なんだよなぁ。
ちなみに、そんな陛下の十歳年下の弟、第二王子が攻略対象だったりするのだけれども、優秀な兄と比べられて卑屈になり、勉強も何もかも放棄するような生活を送り、乙女ゲームが始まるころには、堕落しきって女遊びが激しいキャラとして登場する。
ヒロインと出会い、周囲の冷たい目や劣等感に負けず努力する姿に、自分の行動を恥じて最初は八つ当たりのように接してしまうけど、ある一言をきっかけに泣いてしまったヒロインに自責の念が湧き、徐々に態度を軟化させていく。
他の攻略対象は、宰相の息子が、ひたすらにプライドが高く、自分が無能な第二王子の側近候補であることが気に入らない上に、婚約者である第三王女と結婚したら、妻の方が自分よりも立場が上になるのではと危険視している。
インテリ系キャラなのだが、ひたすらに高いプライドに、持ち上げて従順になると言う選択肢を選ばなければいけない。
あとは、脳筋の騎士団長の息子。宰相の息子と同じように、第二王子の無能さと女遊びにうんざりしている。
また、婚約者が不貞をしているのではないかと疑っていて、なにかにつけては自分が居なければ駄目だと告げてくるキャラだ。
それでも基本は脳筋なので、褒める系の選択肢を選べば簡単に好感度が上がってくれると言う、攻略対象の中では一番ちょろいと言われているキャラ。
……そういえば、わたくしは辺境侯爵の娘なわけで、王立学院に通い始めたら、身分的には攻略対象や悪役令嬢と嫌でも交流を持つようになるのでは?
繰り返すけど、わたくしはモブよね?
でも、やっぱり身分的に、攻略対象や悪役令嬢を無視するとか、無理そう。
運営(神様)! 設定考えるならもっとしっかりしろ!
モブに重要な身分を与えるんじゃない! シナリオが崩れるだろうが!
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